11話
次の日、ルスとラヴィの二人は冒険者ギルドへと向かった。
「こんにちは、クラメさん」
「こんにちは!お待ちしておりました!」
にこやかに挨拶をしてくれる受付嬢。
やはり冒険者の人気は高そうだ、とルスは改めて思った。
「コイアさんから確認が取れましたので、冒険者ギルドへの登録の準備をさせていただきます。こちらに必要事項を記入してください」
用紙とペンを渡される。
名前など必要な項目をラヴィに確認しながら記入していく。
「ありがとうございます。それではこちらのバッジをお渡しします。このバッジは冒険者ギルドへの所属と持っている冒険者のランクを表すものとなっています。大事なものですので無くさないでくださいね」
クラメはバッジを渡し、説明を続ける。
「このギルド内での評価が示されます。ここではパーティ、冒険者をF、E、D、C、B、A、Sという7つのランクによって格付けしております。Sが最上位のランクとなっており、それぞれの技量によってランクは変動します。クエストというギルドに来た依頼もランクによって格付けしておりますので、クエストを選ぶ際の参考にしていただければと思います」
「分かりました」
「続いてお二人のパーティを登録させていただきます。リーダーはどちらになさいますか?」
「ルスでお願いします」
ラヴィが即答した。
「かしこまりました。その内容で登録させていただきます。リーダーの方にはパーティのリーダーである証のバッジをお渡しします。こちらもランクによって見た目が変わります。是非上位ランクに向けて頑張ってください」
ルスはまた小さめのバッジを受け取った。
一つ目と同じ目立たない色をしている。
「そうだ!コイアさんのドロップをお返ししますね。ルス様が獲得したものですから」
「ありがとうございます」
「あちらの掲示板にクエスト内容が書かれた用紙を張り出しています。その用紙を持ってこちらにいらっしゃれば、正式にクエストを受けたという事になります。期限内に依頼をこなしていただきます。出来ないと判断した場合は受付にてクエストの受託を取り消してください。期限内に依頼が終わらなかった場合はケースバイケースです。何かしらマイナスがあると思っておいてください」
「わかりました。じゃあ選ぼうか」
説明が終わったのを確認し、二人で掲示板に向かう。
掲示板には様々なクエストが所狭しと張り出されていた。
「最初は低級魔物討伐とか良いんじゃないかしら。これとか」
ラヴィは一つのクエストを指す。
そこには王国近くの道に表れる小型の魔物を5体以上討伐する事、と書いてある。
期限は決まっておらず、報酬は出来高制のようだ。
「良さそうだね。それにしよう」
二人はその用紙を一枚受付に持っていきクエストを開始した。
道案内を任されたラヴィはいつもより足早に街を歩いていく。
ラヴィはこのパーティで初めてのクエストに気合が入っていた。
「私たちの討伐する魔物はあまり大きくなくて、攻撃も強くはないの。ただ、数が多くてすばしっこい。その上食いしん坊だから通る人たちの持ち物を漁ったりするわ。だからこのクエストは常設しているみたいなの」
「なるほど」
確かにこのクエストの用紙は他より多くあった。
話を聞きながらもよそ見をしていたルスは一度立ち止まる。
「あ、あれ美味しそう。ちょっと買っていい?」
ルスはパンらしきものを発見し、ラヴィに尋ねる。
「今?まあいいけれど」
意気込んでいたラヴィは出鼻を挫かれ、渋々ながらついていく。
(確かに美味しそう…)
ラヴィの知っている店ではあったが、暫く食べていなかった。
改めて見るとどれも美味しそうに見える。
「私も買う」
小さめの声でラヴィは言う。
ルスは少し嬉しそうな顔をした。
ルスはフランスパンに似たものを、ラヴィは甘そうな丸いものを買った。
「この国は食べ物が美味しくていいところだよね」
王国を出て、買ったものを食べながらルスは言った。
「ええ、いい事だと思うわ」
包みをしまいながらラヴィは答える。
(同じくらいに食べ始めたはずなんだけど、一瞬でなくなってる…)
買った物の大きさは違えど、いつの間にか片づけに入ってるラヴィに驚きが隠せない。
「な、なに?」
「いや、食べるの早いなって」
「そ、そんなことないわよ?これくらい普通…あ、見て」
ラヴィの視線の先には大きめのネズミのような魔物が数匹いた。
「あれを五匹以上ね」
「おっけー」
ルスはパンを持ちながら杖を手にする。
ラヴィは一足先に杖を出し、魔法をかけていた。
以前と同じように素早さを下げる魔法を使っているようで2匹の動きが遅くなる。
しかし他の魔物には当たらなかったようだ。
「ファイア!」
ラヴィはデバフをかけた魔物たちに向け火の玉を放つ。
1体には直撃し、倒れこんだが、1体はぎりぎりで躱した。
(聞いていた通り動きが素早い)
ルスはパンを食べつつその姿を見ていた。
倒れていた1体にもう一度火の玉が当たり、ドロップが出る。
「こんな感じなのだけれど、意外と大変なのよね」
「なるほどね」
不意打ちのように背後からとびかかってきた魔物を躱しながらルスは答える。
そして残っていたパンをちぎり、狭い範囲にばらまいた。
すると何匹もの魔物が一斉に群がる。
はじめに見えていた数を優に超え、どこからともなく次々と現れる魔物たち。
あまりの多さに二人とも内心ぎょっとしていた。
「デバフかけられる?」
「え、あ、うん!」
ラヴィは言われた通り魔物たちの群れにデバフをかける。
「ありがとう」
直後、ルスから杖から炎をだす。
広範囲のそれは全ての魔物に直撃した。
二人は散らばったドロップを回収する。
小さいため上に数十個ものドロップが散らばったため、ルスは戦闘よりも手間に感じていた。
逃げる体力も残っていなかった魔物たちを踏まないように気を配る。
「上手くいったね」
「そうね。と言っても、やったのはほとんどルスじゃない。私はデバフって言われて打っただけ」
(広範囲とはいえ短時間の火属性魔法で全て一撃…と、いうか作戦があったのも私は知らなかったし、何も考えずに食べ切った私はただの食いしん坊みたいじゃない…!)
恥ずかしさや恨めしさが混じった視線をルスに送るが、当の本人は気づかない。
「いやいや、ラヴィのデバフあってこそだよ。じゃないとこんなには上手くいかなかった」
「そんなことは…」
一頻り回収し終わった時だった。
「きゃあああああ!!」
近くで少女の悲鳴が聞こえた。
「ラヴィ!」
「ええ!行きましょう!」
二人は悲鳴の方へ駆け出した。
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