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10話

「大変だったわね」


「吃驚したよ本当に」


二人は街を歩きながら話していた。

ルスにとってイラギの話は、ジョブによる格差や偏見を感じた一幕であった。


「とりあえず何か食べましょうか」


取ってきた果実を売った後、ラヴィは言った。

ルスはもちろん賛成する。

実際何も食べていなかったので空腹になっていた。


ラヴィの知っている店に入り、席に着く。

注文は彼女に任せた。


(結構色々頼んでいたような気がするけど大丈夫だろうか)


何もわからないルスは少し不安になっていた。


「それにしても試験の時の魔法は凄かったわね…本当に初めてなの?」


「うん。我武者羅にやっただけなんだけどね」


「そう。本当に驚いたわ。魔力量もだけれど精度もね」


ラヴィは心からそう思っていた。

同じ魔法使いだからこそ感じた技術の高さがあった。

常人の成長スピードをはるかに超えている。


「ところで、色々聞きたいことがあるんだけど」


「何かしら。私にわかる事なら何でも答えるわ」


「コイアさんから出た宝石みたいなものをドロップって呼んでいたよね?あれは何?」


「ドロップは経験値というかパワーアップできるアイテムみたいな物ね。人間でも魔物でも瀕死になると出てくるの。出ない場合もあるようだけど基本はああいう実体をもって飛び出してくるわ」


水を飲みながらラヴィは続ける。


「ドロップは瀕死になった生き物の種類や強さによって色や形、大きさが異なるわ。だから討伐クエストなどでは魔物のドロップを持って帰って見せることで依頼達成の証明となるの。ドロップは売ることも出来るし、経験値だから自分で使うことも出来るわ」


「なるほど」


料理が幾つも運ばれてくる。

肉や野菜、米のようなものもあり、どれも非常に美味しそうだ。

だが、やはり二人にしては量が多くないだろうか。

ラヴィはお腹が空いていたのか直ぐにパクパクと食べ始めた。


「ちなみに、実技試験で巨大火球を試験官に直撃させていたら、あの人は消滅していたと思うわ」


「消滅?」


ルスも食べながら訪ねる。

肉のようなものは食べ応えがあり、野菜もスープも味がしっかり付いていて美味しい。


「瀕死以降もダメージを食らい続けると、体が消えるの。何も残らないわ」


ルスは驚いた。

瀕死という状態を説明されていたが、ここでの死は消滅を意味するらしい。


「じゃあこの肉のようなものは?」


「肉?ああこれは豆の一種ね。美味しくて私も好きだわ」


本当に美味しそうにパクパク食べる彼女。

彼女の食べるスピードは変わらない。


(食事もあまり変わらないと思っていたけど、元いた世界とだいぶ倫理観が異なる世界に来たな)


ルスはそう感じていた。


「そういえば寝る場所なんだけど、宿屋みたいなところがあるのかな?安く泊まれるといいけど」


「寝るところ?もちろん宿屋もあるけれど、教会に頼めば空いている部屋を貸してくれると思うわ。貴方の境遇は特殊だし。私も基本的にはあそこに住まわせてもらっているの」


「そうか。部屋は空いているかな」


「きっと大丈夫よ。無ければ私の部屋にくればいいし」


「え?」


「二人部屋だけど、今私だけなの」


「そ、そう。まあラヴィがいいなら」


警戒心の薄い人間だと思ってはいなかったが、少し不安になる。

やはり倫理観が異なるのかもしれない、ルスは再びそう思った。


結局全て食べ切ったが、ラヴィの方が食べていたという事実にルスは動揺した。



食事を終え教会へ向かう。

祭司のアスを見つけたラヴィは直ぐに声をかけた。


「祭司様、ルスが寝る場所を探しているみたいなの。私の部屋が丁度一人分空いているから、そこを使ってもらってもいいでしょう?」


「ああ勿論だとも。ルス、何かあれば私やラヴィに遠慮なく言いなさい」


「ありがとうございます」


「ありがとう祭司様、それじゃあ私は少し片づけてくるわね」


そう言うとラヴィは駆け足でどこかへ行ってしまった。


「ふふっ、随分と好かれているようだね」


アスは笑った。


「あの子がこんなに早く誰かに心を開くなんて珍しい。君の事をとても信頼しているようだ。彼女は心優しく知識も豊富だが、心配な面もある。これからもラヴィの事をよろしく頼むよ」


アスは穏やかな口調で言った。


「はい」


どうしてそこまで信頼されているかは分からないが、ラヴィにはとても助けられている。

彼女の役にも立てるよう頑張るつもりは、既にルスにもあった。


「ところで、お聞きしたいことがあります」


「何かね」


「僕も祭司様のようになれるでしょうか?」


真っ直ぐな目でアスを見る。


「…」


アスは彼の意図を汲み取ろうとした。


「…だから冒険者としての最初のジョブに魔法使いを選んだのかな?」


「はい」


「…ははは、なるほど。ああ、なれるとも。このジョブの待遇はそれほど良くないがね」


アスは笑いながらそう告げる。


「ちょっと待っていなさい」


そう言うとアスはどこかへ行き、一冊の本を持って戻ってきた。


「これを君に。きっと役に立つはずだ」


「ありがとうございます」


ルスはお礼をいい受け取る。


「ああ、使ったら返しておくれよ?私もたまには見たいからね」


穏やかな笑顔でアスは言う。


「もちろんです」


「やはり君は特別なようだ。名前付けの際にも思ったよ」


そう言う彼はどこか遠くを見るような目をしていた。


「そうなんですね」


「ルス。お待たせ」


ラヴィが駆けて戻ってきた。


「じゃあ行きましょう。祭司様、おやすみなさい」


「ああお休み、二人とも」


挨拶をかわし、ルスとラヴィは教会の横の建物へと向かう。


「それは?」


「祭司様から借りたんだ。まだ中身は見ていないけど」


「そうなのね。あ、ここよ」


建物の一室を開けルスを促す。

少し暗い部屋にルスが入ると、そこはビジネスホテルの一室の様だった。

机やベッド等、必要最低限のものが二つずつある。

部屋は清潔にされており、若い女性独特のいい匂いがする。


「…変な匂いする?」


少し不安そうな顔でラヴィが尋ねる。

なんでそのことについて考えていたのがバレたのだろうか。


「いや、いい匂いだなって」


「そう、ならいいけど」


ラヴィは答えたあと少し笑う。


「でもその言い方、なんか変態っぽいね」


「えぇ…」


感想を述べただけなのに変態扱いを受け、少し理不尽に感じてしまうルス。


(いや、若い女の子にそんな発言をするという状況は確かにあまりよろしくないのかもしれないが、しかし…)


悶々としているとラヴィが笑った。


「フフッ、冗談よ。そんなに気にしないで。それより明日から冒険者として働く予定なんだし、早く寝ましょ?」


楽しそうな彼女に笑顔でそう告げられ、ルスは素直に横になり眠りについた。


次回更新:1/28 12:00以降


「筆が遅い」と天狗の面の人に叩かれています

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