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突然された提案に硬直する私。
まさか下着泥を問い詰めていただけのはずなのに
何故こんな状況に陥った?
軽い気持ちで掃除をしていた時に
いつ借りたのか思い出せないレンタルDVDを見つけた
そんな胃にストンとくる問題にたじろぐ。
そんな状況を処理しきれていない私に
普段一切しゃべらないレガさんが畳みかける。
「・・・カニ太郎はリサちゃんの従魔で終わるような
存在じゃないよ?
ここで踏み出せばもっと広い世界を見られるよ?」
え?何?
ヘッドハンティングでもされてるの?
普段一切しゃべらないレガさんから
珍しく能動的にセリフが出てくる。
「・・・リサちゃんが心配なら
また危なくなった時に助けてあげるよ?」
目をつぶって考える。
「・・・いろんな場所に行って美味しい物を食べて、
綺麗なものを見て遊んで暮らせるよ?」
並べられるメリット。
精霊という点を考えるならば嘘ではないかもしれないが
この前の約束のように裏があるかもしれない。
「・・・カニ太郎がしたいなら人助けだって
危険な冒険だって出来るよ?」
一先ず珍しくしゃべるレガさんの言葉が
出終わるのを確認する。
「レガさんの主張はわかったよ」
私の一言に対して次の言葉を待つレガさん。
それを確認した私は、混乱しつつも
自分の気持ちと理由を確認するように話し始める。
「まず、お嬢についていくと決めたのは
お爺さんと約束したからだよ?
約束の大事さはレガさんもわかるよね?」
「・・・でもカニ太郎は破れるでしょ?」
こいつ。
本当に私の清廉潔白なファンタジーの精霊像を
ぶち壊してくる。
「約束ってのは自分の都合を優先してほしい時に
かわすだけのものじゃないんだよ?
お爺さんに安心してほしい。
そう思ったからこそ、お爺さんと約束したんだ。」
「・・・だったら私がカニ太郎の代わりに」
勘違いしていそうなレガさんに対して首を振る。
「お爺さんが私に頼んだのはお嬢を『守ってくれ』
なんて身の丈に合わない約束じゃない。
お嬢の『側にいてくれ』っていう約束なんだ」
そういうと不思議そうに首が傾くレガさん。
「お爺さんは弱くても、お嬢の側に
いてあげられる存在でいて欲しいって言っていた。
そして私もそうしてあげたいと思ったから
お爺さんに、そして何より自分に対して
お嬢の傍にいるって心に決めたんだ」
私の気持ちが届いたのか、
レガさんの傾いていた首がもとに戻る。
「レガさんが私のために良かれと思って
言ってくれたのかもしれないけど、
今私が一番したいことは、
何よりもお嬢の傍にいることなんだ」
多少押しが弱いかもしれないけど、
自分なりの意見をアピールできてほっとする私。
「・・・それ、スラ子じゃダメなの?」
「んむ!?」
安心しきっていた私の死角からレガさんの指摘が
襲い掛かる。
今まで考えないようにしてきた
思い当たる節々が脳裏をよぎる。
塔に居た時はスラ子とじゃれる
お嬢を見て微笑むお爺さん。
普段のスラ子と私の扱いの差。
そして何より現在のこの構図。
「そんなこと・・・そんなことない!」
震えだす手、にじみ出る涙、早まる鼓動。
どれをとってもすれすれな私。
「・・・なんかごめん」
そして何故か謝られる。
え?何?
なんで謝られてるの?
わけわかんないんですけどー!
イミフなんですけどーーー!!!
心を落ち着けるのにしばし時間のかかる私であった。
結局レガさんの提案に対して明確な返答もなく
この話題は流れてお嬢とどうやって合流するかに
話の焦点がシフトする。
現状レガさんの力でお嬢の場所は把握できるらしく、
待ち伏せも不可能ではないらしい。
だが、その場合フーシェが私を運んでゆく場面を
誰かに目撃されたりする可能性が高くなり
お嬢へのごまかしがしずらくなる可能性がある。
そうであるならばまだ目撃されている可能性が低い
この王都でお嬢が来るのに合わせて合流した方が
下手に動き回るより理にかなっているように思える。
「・・・大丈夫?」
何に対してなのだかわからないが、
この状況を作り出したのに事に一枚かんでいるであろう
下着泥から心配される。
「え?何のこと?全然、全然平気だし!」
まずは自分を信じるところから
始める必要のある私であった。




