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5-4

辺りに飛び散った麦茶をふき取り、

狭い室内にほんのりと麦の香りが漂う中、

レガさんとフーシェを正座させる。



「さぁ、コソドロ1号と2号くん。

後ろのあれについて弁明はありますか?」



そういって後ろに積み上げられた洗濯物の塊を

指さす私。



「フーシェはフーシェだよ?」


「そだね、でも悪いことをした人は自覚を持って

もらうために反省するまでこの名前です!」


「面白そうだよ!わかったよ!」



反省の色が全く見えないフーシェに対して

そっと手をあげるレガさん。



「・・・私は一号が良い」


「あ!ダメだよ!フーシェが一号だよ!」



こいつら・・・。



ひそかに握りしめた秘密兵器を使うか迷ったが、

場があれる可能性もあるのでそっと握りしめるに

とどめて話を進める。



「コソドロ一号はなんで洗濯物持ってくるの?」


「えー。だってフーシェがびゅーって通ると

ぶわっとなるんだよ?」


「うん?」


「それでふわふわってしたら私たちのだよ?」


「うん???」



大変独特な表現方法だったためかいつまむと、

空中にふわふわ漂うものはすべて風の精霊の持ち物

というのが風の精霊の思考らしい。



「でも、一号が通る前はちゃんと紐なりなんなりに

ちゃんと向過ぎつけてあったでしょ?」


「えーだよ」



納得のいかないフーシェが正座を崩して

じたばたし始める。


どうやら集中力の限界らしい。


私は攻略先を隣のレガさんに変更する。



「コソドロ2号・・・なんで下着を持って

突然走り出したん?」


「・・・地面にあるものは」



フーシェと似たような言い訳を始めたので

言葉を遮り質問を重ねる。



「他にも洗濯物はいろいろあったよね?

なんで女性ものの下着だけ選別して?」



そう、今後お嬢と秘密裏に旅を共にする以上

私にはレガさんが下着に見せた執着の理由を

見極める必要がある。



「・・・好きだから」



フルプレートを着込んだ厳つい精霊が呟いた

ひっそりとしたカミングアウトに頭が痛くなる私。



あかん。


こいつはあかん。


どうにかしてこの旅路から除外せねば。



ここにきてお嬢の身に危険を及ぼしそうな

奴の趣向に危機感を覚えた私は、

この状況を打開すべく秘密兵器を繰り出す。



「あうとーーー!」(ピコ!)



私がそう声をあげつつ、

繰り出した黄色い物体がレガさんの頭にぶつかると

間抜けな音がそれから聞こえてくる。


そう、一見古風なピコピコハンマー。


段ボールから発見された新しいおもちゃである。



「わー!面白そうだよ!!!」



案の定食いつくフーシェ。



「そうだろう?面白いぞー」



そういって自分の手に当てて再度音を鳴らすと

目をキラキラ輝かせて私の周りを飛び回るフーシェ。



「貸してほしいよ!」



そういって私に懇願する。


私から無理やり奪ったり、

勝手に触ったりしないところを見ると

前回取り決めた


『家の中の物品は私の許可なく利用しない』


という約束は有効らしい。



ふふ、こうなってしまえばこっちのものである。



「あー。でもなー。コソドロ1号さんだしなー。

悪いことをする人にはちょっとなー」



そういってピコピコと音を鳴らすと

うずうずと歯がゆさのあまり身もだえするフーシェ。



「悪いことしないよ!」


「えー、ホントかな?」



そういって後ろの洗濯物を見る私。



「う゛ーーー」



苦々しい表情を浮かべる。


ここまでくればあと一息だろう。



「もう洗濯物を飛ばしたり、飛ばした洗濯物を

持ってきたりしないって約束できる?」


「うん!出来るよ!!!」


「良し!じゃあどうぞ!」


「やったーだよ!」



そういって私からピコピコハンマーを受け取ると

嬉々として遊び始めるフーシェ。


ふふ、やはり強大な力を秘めた精霊と言えど

所詮はお子様。


私にかかればこの程度造作もない。



自分の切れすぎる頭に戦慄を覚えながら、

内心盛大なガッツポーズを決める。


そう、何故なら精霊の約束は絶対。


この約束さえ取り付けられれば今後の旅路で

洗濯物の大量紛失事件が起こることはないだろう。



だが、私のターンはまだ終わっていない。



「いやー。フーシェはピコピコハンマー上手だな。

なんだかカッコいい冒険者みたいだ」


「よよ!?ホント!?」


「ホント、ホント、そんな頼りになる冒険者さんに

依頼だしちゃおっかな」


「わかったよ!任せてほしいよ!!!」


「じゃあ、あそこのコソドロ2号が

何か泥棒しようとしたときは

そのピコピコハンマーで成敗して欲しいんだけど」


「・・・!」


「わかったよ」



そういってレガさんの頭の上に移動して色々と

罵声を浴びせながらハンマーを振り下ろすフーシェ。


そしてその光景を満足げに見届ける私。


そう、何故ならば遊びではあるが

『何か泥棒しようとしたとき成敗する』

も約束に該当するはず。


ということは今後レガさんが下着泥を行う場合

フーシェという抑止力が発生することになる。


猫に鈴ならぬ。


レガさんにピコピコハンマーを付けたわけだ。



「・・・ふふ」



私の策に対して微笑を洩らすレガさん。


まぁ、フーシェがちゃんと認識しているのか

わからないし。


どこまで有効なのかはわからない。


少なくとも今後精霊たちと付き合っていく上で

必要な情報にはなるはずだ。

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