5-3
元気なフーシェの声と共に扉を開けて入ってきたのは
何時ぞや見たことのあるような布の塊だった。
「いい仕事したよ!」
そういって布の塊が地面に着地すると
中からフーシェが飛び出してくる。
如何にも何かを成し遂げたような顔をしたフーシェ。
あの布の塊はひとまず頭の隅によけておいて
コップに麦茶を注いで薦めてみる。
「ワー、スゴイリョウダネ」
若干皮肉のこもった私の感想に。
「だよ!パワーアップしたんだよ!」
と、私の真意をご理解いただけないフーシェさん。
私の頭痛もパワーアップしそうです。
痛み出しそうな頭を空いた手で押さえると。
「じゃあ、いただきますだよ」
そういってコップの中に入り込む。
え?いや、お風呂的な意味で出したわけでは。
内心ツッコミを入れながらもフーシェが入ったため
コップからあふれ出した麦茶に浸水される私の手と畳。
「ちょ!」
慌ててフーシェ入りコップをちゃぶ台に戻すと
雑巾を取り出して畳を拭く。
「・・・大量だね」
そう私が慌てている間に、
いつの間にか移動したレガさんが布の塊物色している。
「ちょっ!!!レガさんは一体何を・・・!
あ!今なんか隠した!!!」
「・・・ほら、立場上問題がないか確認をね?」
「いや、もうこの布の塊も
レガさんの挙動も問題だらけだから!
ね?これ以上ややこしくしないで・・・
大人しく隠したものをこっちにかえしなさい?」
「・・・これ、カニ太郎のじゃないでしょ?」
「テメェのもんでもないだろうが!!!」
即座にレガさんが手にしたものを奪取するべく
とびかかる私であったが、
常に隅っこで座ってばかりいるとは思えない俊敏さで
私の襲撃をかわすと扉を開けて外へと逃走を図る。
「おま、逃げんな!!!」
私もレガさんの後を追うが、
困ったことに奴の逃走経路は一直線に
宿殻の外へとつながる境界線を目指していた。
外に出るつもりなのか!?
フーシェが降り立った場所ということで
危ない場所や、近くに人がいる可能性は低いが
万が一ということも考えられる。
新たな厄介ごとに発展する前に
何としても取り押さえなければ。
下駄箱から発見した靴も履かずに家を飛び出すと
夕暮れに染まり始めた空間内の草原を全力で駆ける。
無論レガさんもその進路を変えることなく
宿殻空間の境目に飛び込み私も後を追って飛び込む。
「うぁ!」
空間から飛び出した事によりヤドカリへと戻った
私の視界に飛び込んできたのは
山間に消えてゆく夕日とそれを背景にたたずむ
巨大な城塞都市の姿だった。
「・・・綺麗だよね」
そういって私の隣に平然とたたずみながら
夕日を眺めるレガさん。
コイツ・・・。
と、いろいろと文句があったのだが
目の前に突如として現れた壮大な自然と
人間が作り出した創造の美がオレンジの陰影
の中で混ざり合う風景を前にどこかに行ってしまった。
無言を味わいながら日の光が消えて
辺りが夜へと切り替わると、ふと我に返る私。
レガさんもしかして・・・。
「・・・うん。」
じゃああの不審な行動も、
私があの夕焼けに間に合うように?
「・・・えへへ」
そういって照れ隠しの様に兜越しに
頬をかくようなしぐさを見せるレガさん。
なかなか心憎い演出を・・・。
お?
おま、その手からはみ出してる物は?
こうして無事下着泥を捕まえた私は
一端宿殻空間内に連行したわけなのだが。
「このお風呂いい匂いがするよ!」
ピッチャーにその行先を変更したフーシェさんが
水浸しのちゃぶ台の上で出迎えてくれるのだった。




