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宿殻内の空間に入ると中から吹き込んでくる
風が私の頬を撫でてゆく。
「なーーー!」
「ピィーーー!」
紙飛行機の形状になったスラ子の上に精霊が乗っかって
笛を吹きながら空中を飛び回る姿が眼に入る。
どうやら二人とも気が合うらしく
仲良く遊んでいるようで何よりだ。
二人の動向を微笑ましく眺めていると
私に気が付いた二人がこちらへとやってくる。
「わぁー!ヤドカリさんだよ!」
そういって私の周りをぐるぐる飛び回る精霊。
「あれ?私の事がわかるの?」
この空間に入ったことで姿形が
人間の姿へと変わっているわけだが、
精霊には私が同じ存在だということがわかるらしい。
「わかるよ!同じだよ!」
そういって楽しそうに笑う精霊。
どうやら機嫌もよさそうだしこの様子なら
色々と話が聞けるかもしれない。
「そっか精霊さんは物知りなんだね。
私、精霊さんの話もっと聞きたいな」
「お話!?いいよ!教えてあげるよ!」
やはりどれだけ強力な力を持っていても中身は子供。
上手に誘導すればどうということはない。
こうしてスラ子と精霊を引き連れ
この空間の中央に位置する小屋の中へと入る。
小屋の中は相変わらず埃っぽく、
高く積まれた段ボールが部屋へ入る光を
幾分遮っている。
おもちゃの段ボールを持って出た時と
何も変わっていない。
というか、相変わらず部屋の角に向かって
正座をしているレガさん。
あれだけドタバタしていたのに、
この人はずっとここで正座していたのか?
私がいぶかしんでいると、
私の背後から部屋を覗き込んだ精霊が声をあげる。
「あー!土の人だよ!!!」
そういって部屋の中に入ってゆく精霊。
「え?知り合いなの?」
レガさんの頭の上に座ってうなずく精霊と
ワンテンポ遅れてうなずくレガさん。
何だろうかこの感覚は?
虫がいるとわかっている石の下を
わざわざ覗かなければならないような感覚。
まぁ、聞く前から怖気づいてもしょうがない。
ゆっくりと話し合うために何か飲み物を用意しようと
恐る恐る冷蔵庫を開く私。
冷蔵庫の中は電気が通っていないため
開いた際に電気がつかず、奥に何かがうごめいている
気配がしたためすぐさま扉を閉じた。
ふふ、どうやらこの冷蔵庫も後で何とかしないとな。
肩をすくめて一人暮らし様の小さなシンクに移動する。
まぁ、無理だろうとは思って蛇口をひねってみるが
やはりというべきか水は出てこない。
・・・となると。
うずもれた記憶と体が覚えている動作に従って
段ボールの一つを探し当てる私。
『防災用(食料)』
そう銘打たれた段ボールを開けると、
中にはぎっしりと水と保存食が積み込まれている。
その中の水のペットボトルと乾パンを取り出して
全体を見回してみる。
密封状態には問題はない。
賞味期限の表示も書いてあるには書いてあるが
正直そんなものを見たところで今が何年なのか
わかるはずもなく、
開封して感じた五感を頼りに安全だと判断する。
こうして話の席の質素なお供を手に入れた私は、
台所の脇にあった食器の埃をはたいて
その上に乾パンを乗せることでついに準備が整った。
なんとも不思議な光景である。
ちゃぶ台の上に置かれた人数分の水と乾パン。
「ほべほおおほいお」
口に乾パンをほおばりつつ食べかすをまき散らす
風の精霊。
ちゃぶ台の前で正座してから微動だにせず
ただでさえ暗めな室内で被る兜のせいで
どこを見ているのかもわからないレガさん。
そして水と乾パンをペットボトルと皿ごと
消化し始めるスラ子。
っくっそ!何だこのメンツは!!!
機嫌を損ねないように笑顔を取り繕うが
久しぶりの人間の表情筋が
平時であっても取り乱しそうなこのメンツを前に
ちゃんと笑顔を作れているのか不安でしょうがない。




