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周辺一帯に響き渡るような、いや
むしろ周辺の空間そのものが唸るように
私たちに向かって叫ぶ。
「ヨォ゛ーーー!!!」
四方八方から聞こえるその声はもうすでに
先ほどまで聞こえていた朗らかな声ではなく、
怒りと敵意に満ち満ちている。
はは、無理だろ。
こんなの人間がどうにか出来る代物じゃない。
時間が経つにつれて厚くなってゆく曇天。
遠目には竜巻がいくつも出来上がり
ゆっくりとこちらへと向かてきている。
逃げ場のなさと迫りくる圧倒的な存在に
呆然と立ち尽くす私。
「はは、やってくれるじゃない」
そんな私とは対照的に実に楽しそうなお嬢。
手に火の玉を作り出すとその形を槍へと変へ
竜巻の一つに向けて投擲する。
魔法で出来た槍は物理法則とは逆に
手を離れてからさらに加速すると
竜巻の中に飛び込むや否や爆発する。
「ヤァ゛ーーー!!!」
先ほどまであたりに響きわたっていた
精霊の叫び声がうめき声へと変わる。
「ほら!だらだら演出に時間かけてんじゃないわよ。
風だろうが精霊だろうが全部まとめて焼き払って
あげるからかかってきなさいよ!」
わー!わーーー!
精霊なんかよりも怖い存在が隣にいた。
マジですか?マジで相手するんですか?
私の動揺なんて気にも留めず、
魔法の詠唱に集中するお嬢。
それに対して精霊もお嬢の挑発に乗ったのか、
ゆっくりとこっちへ向かっていた竜巻が
一気にそのスピードをあげて向かってくる。
もう何も考えられない。
立っていることもままならず、
必死に地面にしがみつくだけであたりの状況は
一切頭の中に入ってこない。
と、飛ばされる。
私が掴んでいた岩がぐらつき始めたその時である。
竜巻の目の前に現れた魔法陣から
巨大な火柱が立ち上り竜巻とぶつかり合った。
まったくなんて光景なのだろうか、
間近で噴火でも見ているようだ。
竜巻が生成する風の勢いが相殺された代わりに、
魔法陣から発生した炎を風が周囲にまき散らし、
辺りを火の海へと変えてゆく。
あぁ、なんてことだろう。
こんな事になるなんて思いもよらなかった。
私はただ話し合って和解できればと
精霊を連れてきただけだったのに、
どこでどう間違えばこんな惨状に代わるのだろうか?
あぁ、もうなんでやねん!なんでやねん!!!
私が捕まっていた岩に
どうにもならない気持ちをぶつけていると、
前方を向いていたお嬢の目が私を捉える。
「あんたのせいでこうなったんだから・・・」
おもむろに杖を振りかぶったお嬢。
「ちょっとは役に立ってきなさいよ!!!」
そういって魔法で強化された物理運動が
私の体を周辺で渦巻いていた竜巻の一つに送り込む。
う、嘘でしょ!?
すがるものの無くなった私の体は
なんの抵抗も許されずに竜巻に巻き取られると
そのまま上へ上へと持ち上げられてゆく。
目まぐるしく回転する渦の中で
もう何も考えられなくなってくる私。
もう何だろうな・・・。
次に生まれ変わるとしたら鳥になりたいな。
そんなことを考えながら朦朧とした意識の中で
体が竜巻の力場から投げ出されたのを感じる。
あぁ、これはもう終わったわ。
眼下に広がるのはお嬢の炎によって炎を纏った
穀倉地帯が余すところなく私を待ち構えている。
至れり尽くせりの完封シチュエーションに
そっと目を閉じて走馬灯の準備を始めたその時である。
「な!」
そういって宿殻の中からスラ子が出てくる。
しまった!スラ子がまだ中に・・・!
スラ子の存在が私の意識を
逃避していた現実へと引き戻す。
スラ子だけは、スラ子だけは何とかしなくては!!!
うおぉーーー!飛べ!私!
来世じゃなくて今飛べ私!!!
無茶でも、無謀でも、何でもいい、
スラ子だけは何としても助けて見せる。
そうして必死に空中でもがく私に奇跡が起こる。




