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「悪かったわね。カニ太郎―――」
そういうお嬢の口の動きが
『後で覚えておきなさいよ』
と動いているのは私の気のせいだろうか?
私がそんなお嬢の謝罪に硬直していると。
「よかったよ。じゃあヤドカリさん
早く凄いところ行こうよ!」
そういって私のハサミを引っ張る精霊。
「ちょっとまって」
だが、そんな精霊をお嬢が引き留める。
「精霊ちゃんにお詫びと言っては何だけど
これをあげるわ」
懐から小さな黒い球体を取り出して精霊に
手渡すお嬢。
「よ?これは何?」
不思議そうに太陽に球体を透かしながら
精霊が尋ねるとお嬢が杖を構えながら。
「それはね?『封印石』って言うのよ」
そう説明しながら杖で地面を突く。
すると突き刺した地面から閃光が地面を伝い
辺り一帯に巨大な魔法陣が浮かび上がる。
「きゃーーー!」
地面に浮かび上がった魔法陣から
聞こえてきた精霊の悲鳴へと視線を向けると、
先ほどまで黒かった球体が白く発光し
精霊の体を球体の中へ取り込もうと
光の糸を出している。
「っは!騙されてんじゃないわよ。バーカ!
頭空っぽなんじゃないの?」
怒りの度合いが強すぎたのか
幼児退行してしまったようなセリフを吐きながら、
悪役さながらの表情で魔法陣を維持するお嬢。
「やーーー!!!」
必死に精霊も抵抗をしているようだが、
次第にその体を光の糸に巻き取られてゆく。
そんな光景に呆然としてしまう私。
いや、いやいやいや!
お嬢!それはないですよ!!!
私そういうつもりで
精霊連れてきたわけじゃないですからね!?
『お嬢!何をやってるんですか!?
そんな事今すぐやめてください!!!』
精霊の抵抗で突風が吹き荒れる中。
お嬢に向けて抗議の文面を
記述スキルで書き上げたその時である。
何かガラスが砕けたような音があたりに響き渡ると、
不意に私の周辺の魔法陣から光が消え失せる。
「馬鹿!魔法陣の上でスキルなんて!!!」
お嬢の叱咤が届くか届かないかのタイミングで
白く光を放っていた球体がひび割れて
元の黒い球体へと戻ったその刹那。
体を持っていかれそうな強風が
私とお嬢の間を吹き抜けてゆく。
うわぁ!
思わず視界を覆い、その場で踏みとどまる私。
だが、数秒後には今吹き荒れた風が嘘だったかの様に
辺り一帯から空気の流れが停止する。
「あんた一体何考えてんの!?」
そういって足で私のハサミの関節をきめつつ
顔面に杖を突き立ててくるお嬢。
いや、お嬢こそ一体何を考えてるんですか!?
私は話し合いで解決しようと
精霊連れてきたんですよ!?
なんでいきなり実力行使になるんですか!?
そう、抗議しようとするが、
手が塞がっているためスキルがうまく発動できない。
「あとちょっとで捕まえられたのに!
逃がすどころか封印石までこんなに・・・!
あんたこれがいくらするのかわかってんの!?」
そう吐き捨てながら
砕けた球体を握りながら私の上で地団駄を踏むお嬢。
だがそんな暴れつくすまで止まらない勢いの動きを
不意に止めて静かに杖を構えるお嬢。
え?どうしたんですか?
余りの切り替えの早さに私も動揺しつつ、
お嬢にならって周囲に神経を張り巡らせてみる。
すると辺りの空気がだんだんと
重くなってくるのを感じ取れる。
私たちを中心に気圧が下がり
周辺の雲や風が集まって来ているようだ。
何だこれ、気持ち悪い。
あからさまに不自然な自然現象が
私たちを中心にうごめき始めている。
まるで世界からにらまれているようなどこにも
逃げ場のない感覚に恐怖を覚えて震えが止まらない。
そんな私の恐怖をさらにあおるように
次第に強風が吹き始め、風の音があたりを満たす。
お嬢!に、逃げましょう!!!
身振りでお嬢に撤退を進言するが、
微動だにしないお嬢。
一体どうしたんだ?
お嬢が直視する目線の先から
今までの声とは似ても似つかぬ精霊の声が
強風を伴って私達に襲い掛かる。
「ワルイコトシタライケナインダヨォ゛ーーー!!!」




