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4-8

しかしこうしてまた畳に座れる日が来るとは。


一先ずレガさんの処遇が決定すると、

一休みといった形で会話が途切れる。


私は久しぶりに感じる畳の感触を

これまた久しぶりに操る五本の指それぞれで

堪能している。



多少埃っぽいな。



指先から伝わる感覚からここに関する

情報を感じ取る。


一体いつからここが存在しているのだろうか?


余り人が生活している雰囲気はないが

レガさんは一体ここで何をしているのだろうか。


とりあえず聞いてみるか。



「レガさんはここで何していたんですか?」


「・・・調整」


「なんの調整ですか?」


「・・・色々」



会話する気がないのか、

最小限の大雑把な解答のみが返ってくる。



「「・・・」」



ダメだ。この人はそっとしておこう。


観察対象を変えてスラ子の姿を探す。


すると近くにあった段ボールを

こちらに押してくるスラ子の姿があった。



「お?スラ子は何か見つけたのかな?」


「な!」



そういって蓋の開いた段ボールを見せてくる。


どうやらほかの段ボールがしっかりと

梱包されているのに対してこの段ボールだけ

梱包の途中だったらしく、封をした形跡がない。



「これは・・・」



段ボールの中身は百円ショップで買えるような

折り紙やシャボン玉などの簡素な遊び道具が入っており

その上に一枚むき出しの手紙が置かれている。



『ちびっ子たちへ

ちゃんと先生の言うことを聞いているか?

しばらく遊びに行けそうもないから

代わりにこれを送ります。

みんなで仲良く使うように』



手紙を一読したとたん、

なんとも言えない切なさが胸を締め付ける。



あれ?


この筆跡って私の・・・。



記述スキルを使用してかけるようになった文字の癖に

非常に似た文字がその手紙には書かれている。



先ほどから感じるここの居心地の良さは、

自分の元居た世界を感じさせるからだけではなく

どうやらここ自体が私に所縁のある場所らしい。


記憶の彼方に見え隠れする風景を

私が追いかけようとすると。



「っな!っな!」



スラ子が飛び跳ねて箱の中身を取り出してくる。



「あーこらこら、

知らない物を不用意に触っちゃだめだぞ」


「な?」


「そうだぞ。おそらくこの世界にないものだからな。

下手にいじって大事になったら大変だぞ?」


「な!」


「お、わかったか?スラ子は偉いなー」


「なぁー」



嬉々として飛び跳ねるスラ子。


その姿にぼやけた記憶を重ねつつも、

無造作に箱の中に手を入れる。



「そうだな」



私が箱の中から取り出したのはお徳用折り紙だった。


まだ解かれていない封を開いて、

ちゃぶ台の上に中身を広げると

色とりどりの色彩がちゃぶ台の上にちりばめられる。



「なぁーーー!」



目の前に並べられた紙に興奮したのか

嬉しそうに飛び跳ねると、端っこの折り紙から

順々に体に取り込んで消化し始めるスラ子。



「ちょーーーっと待った!

これは食べ物じゃないからねー!」


「なぁ?」



そっとまだ食べられていない部分の折り紙をのける私。


私の忠告を理解したのかしてないのか、

体に取り込んだ折り紙を溶かしながら

不思議そうな声をあげるスラ子。



「こんなの食べて大丈夫か?お腹痛くないか?」



スライムのお腹がどこにあるのかは知らないが

スラ子の様子を見る限り、

折り紙の色素が体に見え隠れしているぐらいで

これと言って異常はなさそうだ。



「スラ子。ここにあるものは危ないものもあるから

私の許可なく勝手に食べちゃダメだからね?」


「なぁー。な!」


「よし。いい子だ。

あ!レガさんもお願いしますね?」


「・・・うん?」


「わからない物は極力触らないでくださいね!」


「・・・・・・うん?」



っくっそこいつは。


わかっているのかいないのか生返事を返すレガさん。


後でもう一度確認を取る必要がありそうだ。


そういうことで一先ず不審者は横において、

再びスラ子に向き直る。



「いいかスラ子。これはな?

こうやって・・・」



久しぶりに指を使う作業でなおかつ折り紙なんて

おった記憶がおぼろげだったため

すぐさま折れるアバウトな紙ヒコーキを作って

部屋の中で飛ばしてみる。


手を離れた紙ヒコーキは狭い室内を滑空し、

部屋の壁に当たって床へと落ちる。



「っんなぁーーー!」



その光景に興奮したのかスラ子が

落ちた紙ヒコーキを拾って私の下へと戻ってくる。



「どうだ?すごいだろ。

この世界の紙じゃ出来ないものな」


「な!」



そう、この世界の紙は羊皮紙で柔らかく重く、

そのうえ大変高価と来ている。


そんな高級品で遊ぶということはまずないだろうし、

よしんば紙ヒコーキは折ることが出来ても

あの飛距離を出すことは出来ないだろう。



私の折った紙ヒコーキを興味深げに見つめるスラ子。


すると、私が退避した折り紙の一枚を取って

私の真似をして折り紙を折り始める。



真剣に折り目を確認して端と端を合わせるあたり、

スラ子の几帳面さがうかがえる。


そうして物の数秒で紙ヒコーキを折り上げて

飛ばし始めるスラ子。



ホント、この子は天才ではなかろうか?


そこいらのスライムではこうはいかないだろう。


ホンマ成長が楽しみやで。



私が楽しそうに遊ぶスラ子を見ていると。



「っな!っな!っな!!!」



何やら興奮しきったスラ子が

折り上げた紙ヒコーキを段ボールにしまい始める。



「お?もう遊び終わったのか?

自分で片付けるなんてスラ子は偉いな」


「んな!」



遊び終わったにしてはやけに高いテンションのスラ子。


折った紙ヒコーキをすべてしまい終わると

段ボールを持ち上げて部屋の扉に移動する。



「え?スラ子どうしたの」


「な!!!」



そういって器用にドアを開けて

家の外へ駆け出してゆくスラ子。



「え?ちょ!!!」



慌てて止めに入ろうとするが、

久しぶりにあぐらをかいていたせいか

足がもつれてスラ子の制止が遅れてしまう。



「ちょ!スラ子ぉーーー!!!」



私がほふく前進で家の扉を出た頃には

段ボールを持って草原を走っていたスラ子が

突如として風景の中に現れた波紋の中に

飛び込んでゆくところだった。


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