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この姿は一体。
私が手をにぎにぎして立ちすくんでいると。
「な!」
足元でスラ子の声がする。
「スラ子」
「な」
どうやら声も出すことが出来る。
久しぶりに聞いた自分の声に驚きつつ
しゃがんでスラ子を見つめる。
「ここが天国なんだな」
「な゛?!」
晴れ渡る晴天が色鮮やかな草原を照らし出し、
澄み切った空気がこの空間を満たしている。
どこか見慣れた風景で、自然と落ち着いてしまう。
そんな理由もなく安心できてしまうこんな場所が
天国というものなのだろう。
そう悟った私の目に涙が流れる。
「そっか、スラ子。
お嬢の事を許して成仏してくれるんだな」
「なあああ!な!!!」
突然捻じれて聞いたことも無い声で鳴き始めるスラ子。
「お、落ち着けスラ子。落ち着くんだ!」
慌てて抱きかかえようと、前のめりになった私の顎を
捻じれから戻る反動を利用した鋭い一撃で
打ち抜くスラ子。
「あが!」
顎から伝わる振動が脳を揺らし、
その場で私が動けなくなると。
「な゛!な゛!」
私を持ち上げでどこかへ向かい始めるスラ子。
数分もしないうちに何かの建物の前につくと
その扉を開けて室内へと入って行く。
室内は暗いが前の世界の家屋の作りで、
天井には電灯がみてとれる。
そんな薄暗い室内の壁に私を持たれかけさせると。
「ななーな!」
スラ子がそう鳴く。
するとどうだろうか、室内の一角で動きがあった。
とても重厚感のある音が、
ゆっくりとこちらに向かってくる。
「・・・いらっしゃい」
そういって声をかけてきたのは先日お世話になった
フルプレートことレガさんだった。
脳震盪から回復し、
カーテンを開けていくぶん光を取り込んだ室内には
とても異様だが、懐かしい光景が広がっていた。
あたり一面にできた段ボールのタワー。
その一つ一つがその中に何かが詰まっていることを
主張するかの如くふっくらとその幅を膨らませている。
そしてそんな段ボールに取り囲まれた中央には
年季の入った大きなちゃぶ台が置いてあり、
それを中央にスラ子を持った私とレガさんが対峙する。
「あの、先日はお世話になりました」
「・・・うん」
「あの・・・ここはレガさんのお家なんですか?」
「・・・ちがうよ」
え?
一つ一つ確実なところから状況を整理しようと
質問しようとしたつもりだったが、
いきなり私の想像を飛び越えてきたらしい。
ってか自分の家でもないところで
真っ暗な室内で座って何をしていたんだこの人は。
この前私を助けてくれたこともあって
悪い人ではない事はわかるのだが、
行動が異様すぎて怖気づく私。
「「・・・」」
「な!な!」
無言になった私たちの代わりにスラ子が
あわただしく泣き始めたかと思うと。
「・・・わかった。
『ここは死後の世界じゃない』
ってスラ子がいってるよ」
まさかのスラ子の通訳をレガさん始める。
「スラ子の言っていることがわかるんですか!?」
私の質問に対してゆっくりとうなずくレガさん。
「そっか、そうだったのか。
取り乱して困らせちゃって悪かったなスラ子」
「っな!っな!」
私の誤解が解けたからなのか、
機嫌がよくなったように見えるスラ子。
かなり時間がかかってしまったが、
一先ず私の誤解は解けた。
だが、その後色々と角度を変えて質問してみたものの
ここがどういった場所なのか要領を得ない。
宿殻の中ではあるらしいが私ではわからない。
いや、私でなくともわからないだろう。
むしろそこまで頑張って聞き出した私は偉い。
そしてなぜここにレガさんがいるのかというと。
「・・・ついて行って良いって言われたから」
「はい?私そんな事言いましたっけ?」
「・・・ダンジョンに行くときに」
「それはダンジョンにってことでしょ!?」
私のツッコミをもろともせずにゆっくりと
首を横に振るレガさん。
「・・・ついてくよ。どこまでも、いつまでも」
とっても危ない発言を淡々と口に出すレガさん。
私がドン引きしていると、私の腕から抜け出した
スラ子がレガさんの頭の上によじ登り飛び跳ねる。
「え?スラ子は良いの?」
「な!」
「んーでもなぁ」
さすがにいつも背負っている宿殻の奥に
こんな得体の知れない空間と人物を抱え込むのは
リスキーすぎやしないだろうか。
私がこめかみに皺を寄せて考え込んでいると。
「・・・私が面倒見るよ。私も面倒見るし」
通訳と個人的な感想を述べるレガさん。
いや、もうそれどっちがどっちかわからない。
「スラ子。ちゃんと責任もって面倒見れる?」
「なぁ!」
「じゃあ、仕方ないな。
いつもスラ子にはお世話になってるし。
スラ子のためだったら不審者の一人や二人、
何とかしてあげるよ」
「なぁーーー!」
レガさんの頭の上から飛び降りて
私に飛び込んでくるスラ子を抱きしめつつ。
「・・・なぁーーー」
よくわからないノリで私にすり寄ってくる
不審者を押しのける私であった。




