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悲鳴の聞こえてきた方向を見やると
何やら凄まじい砂ぼこりが舞い上がっている。
「さては精霊が・・・!」
ギルドマスターがそう言うやいなや
見ていた方向の街角から突如
幾重にも衣服が絡まった塊が現れた。
ま、まさかあれら全てが
洗濯物の類だとでもいうのだろうか?
あれだけの洗濯物が飛ばされたら
一体どれだけの家庭に影響が・・・!
戦慄を覚えるような量の服の数に恐怖する。
そんな衣服の集合体が私たちを発見したかの如く
方向を変えてこちらにスピードをあげてやってくる。
「あーもう!!!」
苛立たし気に杖の先端に火の玉を生じさせると
布の塊に向けてそれを放つお嬢。
え?街中で!?
しかも洗濯物に!?
私の驚く間もなく布に炎が直撃すると
布が纏っていた風が無くなり地面に叩き付けられる。
うわぁ、消さないと!
お嬢の火の玉によって勢いよく燃え始めている布に
私が近づいたその瞬間、
中から何か小さなものが飛び出し私たちの間を
すり抜けてゆく。
「きゃ!!!」
なん・・・だと!?
今日日今まで聞いたことのないお嬢の悲鳴が
私の進路を180度回転させる。
お嬢!?大丈夫ですか!?
顔を真っ赤にして地面にしゃがみ込むお嬢。
一体お嬢の身に何が・・・があ゛ぁあ゛あ!!!
近寄った私を認識すると
私の眼球を両手でつかみ立ち上がるお嬢。
ちょ!目が!目がぁーーー!!!
「こっち見るんじゃないわよ!」
そういって私を投げ飛ばすお嬢。
何て不条理な。
視界を封じられて突然投げられ混乱しつつも
体に襲い掛かる衝撃に身構えたその時。
「あー!いじめちゃいけないんだよっ!」
馬がさらわれた時に聞いた子供の声が
私のすぐ近くで聞こえ、体が宙に浮くのを感じる。
「ヤドカリさん大丈夫?」
そう私に聞きながらそっと地面におろしてくれる。
ちょっと視界がぼやけてわからないが
どうやらこの声の正体が件の精霊らしい。
なんだかギルドマスターの話では
もっと凶悪でヤバそうな印象を抱いたのだが
こうして接してみると、
私が馬をさらわれたときに抱いた印象通り
まだ年端もいかない子供の様だ。
私が精霊を観察しようとぼやけた視線を向けると。
それに気が付いた精霊が。
「手当てしてあげるよ!」
そういって私の眼球に何か生暖かい布を巻いてくれる。
なんて、なんていい子なのだろう。
こんなヤドカリにも優しく接してくれる存在が、
そんな悪いものであるはずが・・・。
いや!そうか・・・わかってきたぞ!
きっと自我思ったばかりで
まだ善悪の区別がついていないとか
そんな感じの話なんですよね?
わかります。よくあるパターンですもんね。
そうとなればお嬢!
ここは一つ話し合いの場を設けてみてわ?
そうすればこの事件、案外私でも解決できるような
簡単な物かもしれませんよ?
視界を布で覆われてわからないが、
お嬢のいるであろう方向を向いて
『一端落ち着きましょう』のポーズをとる私。
だが、不思議な事に私に返ってきたのは
眩いばかりの光と熱量の塊だった。
っは!?ここは!!!
気が付くとまだ視界がぼやけながらも
室内にいることがわかった。
「なな?」
ふと横を見るとスラ子が横に居て
私に水をかけているのがわかった。
そうか、あれは・・・。
自分の甲殻がおいしそうに変色していることから
お嬢の攻撃に巻き込まれたことに気が付く。
スラ子・・・ありがとうな。
「な!」
スラ子の看病に感謝しつつもお嬢の行動に憤る。
まさか私ごと精霊を攻撃するなんて・・・。
あの場で話し合えば解決できたかもしれないのに。
お嬢のなんでも力で解決しようとする姿勢は
何とかしてもらわないと困るよな。
スラ子もそう思うだろ?
「な」
そういって理解しているのかいないのか
返事を返しながら私の黒板を見せてくる。
まだぼやけた視界を凝らしながら
目を見張るとそこにはお嬢の筆跡で。
『今日だけ今回の件に手を貸す。』
その一言だけ書いてあった。




