4-3
田畑の中をトボトボと歩いていると
遠くに街の入り口が見えてくる。
馬が暴走した方向がちょうど街の方向だったので
お嬢たちに追いつきやすい距離なのは幸運だった。
だが正直会って何て言えばいいのだろうか?
つむじ風の後をある程度追いかけてはみたものの、
どこまでも続いてゆく通過跡に加えて
途中から似たような跡がいくつも見受けられ
つむじ風の行方を完全に見失ってしまった。
馬がさらわれちゃって・・・。
手がかりも何も見つかれませんでした!
私が解体されるは!馬の代わりに!!!
頭の中をフル回転させているうちに入場門まで
たどり着いてしまう。
一応見える位置に従魔のタグは付けてあるので
私の入場を妨げるような事はされない。
そのまま人に会ったついでに
ギルドの場所を聞いてみる。
無論聞くといっても文字で書くと
わからない場合があるのでギルドマークを出し
スムーズに目的地を把握する。
何だろうか?
なんでこう、嫌なことに関してだけ
スムーズに物事が進んでしまうのだろうか。
目前にギルドが見える。
ついでに中から慣れ親しんだ怒声まで聞こえてくる。
タイミングまで最悪と来ますか・・・。
恐る恐るギルド内を覗いてみる。
ギルド内は二人ほど壁にめり込んでおり。
中央でお偉いさんらしきおっさんをお嬢が
胸ぐらをひっつかんでまくしあげている最中だった。
わー。わー。
これは日を改めないとダメなパターンですわ!
あの!また来ます!!!
踵を返してそっとその場を立ち去ろうとすると、
どこにいたのかスラ子が私に向かってかけてくる。
「なぁーーー!!!」
あー、よしよし。
怖かったか?もう大丈夫だぞ。
いつもとあまり変わらないので
恐らく私の主観が入ったであろう感想をのべて
スラ子の頭を撫でていると。
スラ子の動きを追ったお嬢の視線が
私の事を見つけてしまう。
「早かったじゃない!」
いつになく目を輝かせて私に駆け寄ってくるお嬢。
普段からこうしてくれれば私のモチベーションも
大分違うのだが、もうどうしようもない。
「あんたが来たってことは『ごめんなさい!』」
「は?」
『馬が得体の知れない風にさらわれました』
「はぁ!?馬がさらわれたってどういうことよ!?」
「だからそれらについて
先ほどから説明しようとしているじゃないか!!!」
お嬢が胸ぐらをつかんでいたおっさんは
このギルドのマスターで、
私たちにこの街で起きている事態を説明してくれた。
なんでも数日前から
風の精霊が現れて悪さを始めたらしい。
この土地自体はもともと風の恩恵を受けていて
そういった精霊が現れることはあったらしいのだが、
今回はいたずらの度合いも期間も
今までと比較にならない規模らしい。
洗濯物が飛ばされるという日常的なものから、
田畑や作物への被害、極めつけは
小麦を挽く為の風車も数基壊されたらしい。
「さすがに私も事態を重く見てね。
各地へ救援の依頼を出したんだが
なかなか返事が来なくてね」
「あぁ、それでたまたま来た私を
救援に来たと勘違いしたのね」
「そうだとも!リサ・ベルクヴァインの名前は
冒険者の間では有名だからな。」
「そう、わかったわ。私も勘違いして悪かったわね。
それじゃあ頑張って」
「なんだと!待ちたまえ!!!
我々を助けてはくれんのか!?」
「あ゛!?自分の縄張りの面倒ぐらい
自分で見なさいよ!私は後が使えてるのよ!」
「ま、待ちたまえ!!!」
そそくさとギルドを出てゆくお嬢。
それを追いかけるギルドマスター。
「頼む!もう街に相当の被害が出ているんだ。
これ以上は街の存続にかかわるんだ」
「いやよ!第一そんな力の強い精霊なんて
下手したら喋るじゃない。
そんなの絶対に関わりあいになりたくないわよ!!!」
お嬢の指摘に一瞬硬直するギルドマスター。
どうやらギルドマスターも私が体験したように
あの風が喋ることを知っているらしい。
『精霊』
それはありとあらゆる自然現象が、
魔素の影響を受けて化身かしたもので
とても強い力を持っているとお爺さんが言っていた。
さらに。
『喋る精霊』
カテゴリー的に自我をもって人間と意思疎通できる
レベルに達した精霊を中級と位置づけると
言っていたな。
なんか対応がめんどくさいって
お爺さんが言っていたけど、
もっと詳しく聞いておけばよかった。
お爺さんの話を思い出しながら
お嬢とギルドマスターの悶着を見守っていると
街の中央から悲鳴が聞こえてくる。




