3-19
先ほどとは違った騒がしさに包まれるギルド内。
上手いこと壁にはまった私だったが、
別に抜け出せないわけではない。
ただちょっと誰か助けてくれるかな?
みたいな期待があったのでじっとしている。
ギルドの外は晴れ晴れとした晴天が広がり
まだ寒いながらも気持ちのいい風が流れている。
・・・・・・・・・。
どうやら希望はないらしい。
気力を失い私が呆然としていると、
スラ子が出て来て私をギルドの中へと
戻してくれる。
そうだよな!私にはお前がいるもんな!
スラ子!スラ子ぉーーー!!!
「な!」
抱きしめようとする私に対して一言告げると、
お嬢へと駆けていくスラ子。
先ほどの私と変わらぬ軌道でお嬢へと跳躍すると、
難なくお嬢の腕の中に納まるスラ子。
なんだか納得のいかない複雑な光景を見せつけられた
私を他所にお嬢とスラ子がじゃれあっている。
「スラ子ちゃん!遅れちゃってごめんね?
いい子にしてた?」
「っな!っな!!!」
「ふふ、それになんだか大きくなったわね」
そう言われてみれば、
お嬢に抱かれているスラ子の大きさが
この前見た時よりも大きくなっている気がする。
いつも見ていたせいで、
お嬢が指摘するまでまったく気が付かなかった。
しかし、成長したのはスラ子だけではない。
この私だってさらに大きくなっただけでなく、
記述スキルまで習得したのだ。
男子三日会わざれば刮目してみよという。
だったら四日目を迎えた私はさしずめ
一晩寝かせたカレーのごとく!
お嬢!見てください!ほらスキルですよ!!!
凄いでしょ!?!?
近くの受付によじ登ると、
黒板をハサミでひっかき全員の注目を集め。
『お嬢!私です!カニ太郎です!!!』
と、スキルを駆使して黒板に文字を書きなぐる。
するとどうだろうか。忌々し気に私を視認したお嬢が
驚愕の表情を浮かべる。
「え?あんたカニ太郎なの?」
何度もうなずく私。
それに対して先ほど殴られて破砕した顔面の甲殻を
杖でつつきながら。
「あんた・・・また気持ち悪くなってない?」
『これはお嬢がやったんでしょ!?』
顔面をつつく杖を払いのけて文字を書いた黒板を
バンバンと叩いてお嬢へと見せつける。
「まぁいいわ。待たせて悪かったわね」
そういって苦笑するお嬢。
あぁ・・・。もう反則だろう。
初めて見る私に向けられたお嬢の笑顔。
そのことに対するうれしさと、
お嬢が無事に帰って来てくれたうれしさに
抑えても抑えきれない涙があふれ出す。
「ったく。何泣いてるのよ。
ほら!あんたたちも持ち場に戻りなさい!
まだ収束宣言出てないわよ!!!」
「「「押忍!」」」
取り巻きが散り散りになってゆくと、
お嬢がソラナさんへとダンジョンの報告を始める。
お嬢の口頭での報告では今回の主犯であるモンスターは
ギルドの把握している個体ではなかったらしい。
詳細は討伐せずに捕縛できたので
支援で来ていたリンダちゃんに任せているとのこと。
そっか、だから喫茶店がしまっていたのか。
路頭に迷った際の不運が
今回の騒動を起こしたあのモグラに収束する。
「でも驚いたわ。
マスタールームに突入したら取り巻きは全員逃げて、
主犯が尻を押さえて倒れているんだもん」
「内輪揉めかしら?」
苦笑しながら笑いあう二人の間で気が気じゃない私。
あのモグラ、モザーグが生きてる?
お嬢の突入シーンを見た私としては予想外だ。
もし、リンダちゃんがモザーグから
私に関わる情報を引き出したら・・・。
和やかな雰囲気の中で一人冷や汗をかきつつ、
何か身元がばれるような事をしていないか
必死で思い出す私。
そんな私の心臓に悪い報告が一通り終わると。
「はぁ、もうさすがに限界だわ。
部屋使わせてもらっても大丈夫?」
「そうね、夜通しの任務お疲れ様でした。
私たちが使ってる仮眠室なら今すぐ使えるわよ?」
「えぇ、お願いするわ。
後、トーマス達もしばらくしたら来ると思うから」
「わかったわ。みんなの分も用意しておくわね」
「あ・・・あと、起きたらもう出発・・・
馬お願いね」
報告を終えたことで一気に気が抜けて
睡魔に朦朧とするお嬢。
それを苦笑しつつ仮眠室にソラナさんが誘導すると
ありがとうの代わりに片手をフラフラとあげて
仮眠室へと消えてゆくお嬢であった。




