3-13
突然『困ってる?』と話しかけてきたフルプレート。
切迫した状況なだけに、思わず『そうなんです』と
切り返しそうになってしまう。
だが、ここでちょっと考えて欲しい。
常識的に考えてただのヤドカリの状況を察し、
わざわざ声をかけてくる人なんているのか?
どうやらスラ子はなついているらしいが、
どう控えめに見ても不審者だ。
どうすればいいのか私が悩んでいると、
スラ子が不審者の上で飛び跳ねる。
「・・・あぁ。・・・・・・レガ君だよ」
そういって両手を突き出して振ってくる。
その姿はどう控えめに見ても危険人物だ。
あ、あかん。スラ子を連れて逃げなくては。
退路を確認しようと視線を危険人物から逸らすと。
「・・・困ってるよね?」
そういうやいなや地面から持ち上げられ、
完全に退路を失う。
こうして直に背後から感じる強烈な視線。
何だこの圧迫感は?
抗い切れない圧倒的な力の差を感じる。
この恐ろしさはお嬢とはまた違ったベクトルの
実質的な強さを感じる。
こんな相手に下手を打ったら詰むの明白。
だが、対応次第では好機かもしれない。
相手はこちらの状況を察してくれている。
悪く言えば足元を見られているわけだが、
今は何よりもお嬢が最優先だ。
『困っています』
そう黒板に書いて見せると、
私の向きを変えて視線を合わせてくる。
正確に言えば私からは
相手の兜が邪魔でその中にあるはずの目を
見つけることが出来ない。
しかし、確実に何かがその奥から私を覗いている。
得体の知れない恐怖に手が震えてくる。
だが、お嬢だって今この時も
必死に頑張っているかもしれない。
なのにこの程度で私が怖がって何も出来ずにいたら
さすがに私もお嬢にあわせる顔がない。
怖気づいた自分の体に喝を入れて、
震えるハサミを意地でもって押さえつける。
「・・・助けてあげようか?」
願ってもない提案が相手から出てくる。
だが、突然なんで手助けなんて?
この不審者に何かメリットでもあるのだろうか?
淡々としゃべる不審者の声からは
何も読み取ることが出来ない。
感情のこもっていないような中性的な声は
ただ、台本に沿って音を発音しているだけのようだ。
何かの罠なのかもしれない。
だが、私に取れる手段などもう残されていないのだ。
この不審者が悪魔や物の怪の類だとしても、
私の何を犠牲にしても、お嬢は救って見せる。
『助けてください』
言葉は選ぶ、相手が何を要求してくるかは
慎重に見極める必要があるからだ。
私の回答に対して。
「・・・いいよ。そのかわり私もついてくよ?」
どんな要求が出てくるのか身構えていたが、
何て事のない確認だった。
どうやら本当に善意の手助けなのかもしれない。
『私は何もお礼できませんよ?お嬢だって・・・』
「・・・大丈夫。」
「なっなっ!」
色々と確認を取ろうとする私を急かすスラ子。
そうだな。この期に及んでこんな事に
時間を割いてはいられないような?
聞き足りないことはいろいろとあるが、
今はお嬢の下へ向かって急がないと。
「・・・そうだね。急ごう」
そうつぶやくと突如地面が振動し始める。
え!?
突然の事にあたりを確認しようとすると
私たちのすぐ隣の地面を突き破り
突如として土と岩でできた馬が現れる。
え?え!?
私が事態を飲み込めないまま、フルプレートは
私を小脇に抱えて現れた馬にまたがると
日の暮れた町中を猛スピードで走り始める。




