3-12
騒然となるギルド内に怒号が飛び交う。
詳しい情報を求める者。
外へ飛び出して行く者。
その場に泣き崩れる者。
反応はそれぞれ異なるが、
とても落ち着いていられるような状況ではない。
「オイゲン様は!オイゲン様と連絡は!?」
ギルドに駆け込んできた冒険者が
受付のお姉さんに詰め寄る。
そうだ。お嬢が信頼するお爺さんなら
この状況を何とかしてくれるかもしれない。
だが、そんな期待もむなしく
受付のお姉さんは首を横に振る。
「くそ!こんな時に何をされているんだ!!!」
私の考えを冒険者が代弁してくれる。
だが、悪態をついたからと言って
お爺さんが見つかるはずもなく。
加速度的に荒れてゆくギルド内。
私は、事態に頭が付いていかずに呆然となりながら、
とぼとぼと歩いてギルドを後にする。
どうすれば・・・。
お爺さんを見つけに行く?
それともお嬢を助けに行く?
どちらの案も非現実的すぎる。
だって私よりはるかに優秀なギルドの面々が
どちらも必死に対応しているのだから、
ただのヤドカリ風情の私に出来ることなどない。
何もできない悔しさと、
安否不明のお嬢の事で心が張り裂けそうになる。
「なな?」
いつの間にか私の前に出てきたスラ子が
私の顔を心配そうにのぞき込んでくる。
スラ子・・・。どうしよう。お嬢が、お嬢が!!!
思わずスラ子を抱きしめると、
心の関が崩れて涙があふれ出す。
「な、な」
私に泣きつかれても困るだろうに
頭を撫でて私が落ち着くのを待つスラ子。
ごめんな、スラ子。
私がしっかりしないといけないのに。
ふるふると震えると、見慣れない形状を取るスラ子。
「ピィーーー」
鳴き声とは違う。
口笛の様なものだろうか?
スラ子が不思議な音を立てると同時に、
私たちの背後の物陰に突如として気配を感じる。
何だ!?
一瞬で見れなかったが、
怪しい人影が現れ物陰へと去ってゆく。
「な!」
そういってその人影を追いかけてゆくスラ子。
ちょ!スラ子危ない!!!
涙を拭いてスラ子を追従し家の角を曲がる。
するとそこには銅褐色のフルプレートを身に着けた
何者かがスラ子に相対しているところだった。
正直この街中では見かけない出で立ち。
警備や冒険者の類はたくさん見たが、
フルプレートの人なんて一人も見かけない。
どの人も動きやすい軽装備で過ごしていた。
こと、この冒険者ギルドの非常事態においても、
そんな重装備をしている人は見かけない。
何よりも怪しいのは、
フルプレート以外の特徴がないことだ。
剣や盾といった武具やマントなどの防寒着、
道具を入れるための袋やバックさえ持っていない。
単品のフルプレートを着た何者かが目の前にいる。
何だこの純度100%の不審者は・・・。
私が訝し気にその不審者を見ていると。
「なっなっ」
そういってスラ子がその不審者の頭によじ登る。
こら!スラ子危ない!いろんな意味で危ない!!!
言ってはみるものの、あまりの不審者っぷりに
踏み込めないでいる私。
すると、頭に乗せたスラ子を特別気にするでもなく
私の方へ近づいてくる不審者。
スラ子が頭に乗っている為、逃げるわけにもいかず。
相手の出方をうかがっていると、
私の目の前へやってきた不審者が一言。
「・・・困ってる?」




