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3-11

今日はお嬢が宣言した帰還の日。


いつとは言っていなかったが、

あのお嬢ならもうすでに帰って来ていても

不思議ではない。


朝、鳥が鳴くよりも早く目を覚ますと

身だしなみをしっかり整え、

シスター達へお礼の手紙を書き、

一礼をして冒険者ギルドへと発つ。


冒険者ギルドでは早朝ということもあってか

人気は少ないが未だ常駐の人たちがちらほらいる。


シスターが事情を伝えてくれているので

いきなり斬り付けられることはないだろうが、

距離を取りつつ一番近場の冒険者に黒板を見せる。



『お嬢は戻りましたか?』


「・・・?」



あれ?目でも悪いのかな?


私には気が付いているらしいが、

どうにも反応が薄い。



もう少し近づいて黒板を軽くたたいて強調する。


するとその冒険者は近くにいた別の冒険者に近づき。



「なぁ、あれなんだ?」


「あ?・・・ヤドカリだろ?」


「はぁ!?んなもん見りゃわかるよ

そうじゃなくて!」


「冗談だよ、冗談!

おめぇみてぇなおバカさんと一緒にすんなや、

あ・れ・は『黒板』っうんだよ」


「っげぇよ!何が書いてあんのか聞いてんだよ!」


「ば!おめぇホント馬鹿だな!

んなもん俺にわかるわけねぇだろ!!!」


「ちげぇねぇ!!!」



大爆笑の二人。



誰もコント見せろなんていってねぇよ!!!



しょうがないのでギルド内に入ると、

死屍累々と言った感じで人が突っ伏している。



そんな中でもうつらうつらとしつつも

書類を書き続けている受付嬢が一人、

また知らない人だ。


眠たそうにしているところ申し訳ないが、

机の上に上ると黒板で聞いてみる。



『お嬢は戻りましたか?』


「・・・・・まだでーす。」



営業スマイルを出し損ねた表情に同情しつつ、

私の従魔の登録タグについて聞いてみる。



「・・・え?・・・・・・えーーっと。

・・・ぐぅーーー。」



あ、これはダメだ。


私の質問がとどめになったのか、

頭を働かせようとしたところで夢の中へ

行ってしまった。


まぁ、この人も夜通し働き詰めだったのだろう。


近くのおっさんから毛皮をはぎ取ると、

寝てしまった受付嬢へそっとかぶせておく。



まぁ、この感じではまだお嬢が返ってきている

感じではなさそうだ。


仕方なく書置きを残して、

ギルド近くの物陰に隠れる私。


ここなら邪魔にならないし、

あの鳩やら危ない冒険者にも見つかるまい。



安地を見つけて一息つくと、

お嬢の帰りを刻一刻と待ち構える。



やはり、いの一番に出迎えるのが

お嬢の従魔としての私の役割だろう。


さらにそこで黒板を使ってスキルを見せれば

さすがのお嬢も私の成長を認めてくれるはず。


確信をもって断言できる。


絶対に値上がりする私の未公開株。


どこまで行ってしまうのか自分でも恐ろしい。



どんなお嬢の賞賛にもおごらずに

きれっきれの対応を出来るよう

シュミレーションを繰り返す私。



気が付けばとうにお昼は過ぎていた。


しかしまだ帰ってくる気配はない。


大丈夫だろうか?


やっぱり立て込んでいるのだろうか?



しかし、私の中のお嬢の絶対像

根拠のない自信となって私を支える。













・・・まだかな?



徐々に日が傾き始める。


さすがにシュミレーションも

万全過ぎてこれ以上ない完成度を誇っている。



・・・まさかな。



ここにきて不意に不安の芽が顔を出す。


有言実行が具現化したようなお嬢。


そんなお嬢の身に何かが起こっているのだろうか?


いや、それだったらまだ置いて行かれたと

言われた方が納得できる。


だが・・・。



「なぁ」



さすがにお嬢もスラ子を置いて

一人先を急ぐなんて事は考えられない。


そう、スラ子がいる限り私が置いて・・・。


何か犯罪めいた考えに至りつつある

自分の思考をポイし。



もうしばらく待っていると。



大通り沿いから一頭の馬が駆けてくる。



お嬢か!?



身を乗り出して確認するが知らない冒険者だ。


だが、何か情報があるに違いない。



ギルドに駆け込んでいく冒険者にくっついて

ギルドの中に私も入る。


息を切らした冒険者が一息で呼吸を整えると

ギルド内にとどろくような大きな声を張り上げる。



「大変だ!お嬢がダンジョンにのまれた!!!」



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