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「食材が逃げたぞ!」
そんなちびっ子の声を聞きつけたちびっ子達が
ぞろぞろとあたりから沸き出てくる。
どのちびっ子も見た目は子供だが、
その目は飢えた狼を彷彿させる。
まさかヤドカリになったからと言ってそんな目で
見られる日が来るなんて思いもしなかった。
「さぁさぁ、大人しくしましょうね?」
笑顔で距離を詰めてくる眼前のシスター。
周囲から寄ってくるちびっ子たち。
目的さえ違えば微笑ましいはずの光景。
だからこそ話し合おう?
落ち着いて話し合えばわかりあえるさ。
相手を興奮させないように細心の注意を払い、
黒板を取り出して文字を書こうとしたその時。
「かかれぇーーー!!!」
ば、まだチョーク持ったばかりなのに!
待ちきれなくなった子供の一人が号令をかけ、
私を取り囲む子供たちが私にとびかかる。
この距離とスピードでは
握りしめた黒板に文字を書くよりも早く
子供たちの手が私へ届いてしまうだろう。
間に合わない。
一言でいいのに・・・。
この一言が伝わればいいだけなのに・・・。
私があきらめかけたその時。
「な!」
宿殻の中にいるスラ子の声が私に勇気をくれる。
諦めるか!
スラ子のためにも!
お嬢のためにも!!!
握りしめたチョークを手に意地でも
言葉を書き込もうと文字を頭に思い浮かべたその時、
手にした黒板がまぶしくひかり、
私の思い浮かべた文字が浮かび上がる。
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「お詫びと言ってはなんですが、
たんと食べて行ってくださいね」
今私は教会で朝食をいただいている。
あれから無事に事情を説明することが出来た。
シスターやちびっ子たちは
会話が出来ればなんてことのない良い人たちだった。
現にこうして朝食をいただけているわけだから、
間違いなくいい人だ。
「ギルドの方たちには後で
私から事情をお伝えしておきますね」
『ありがとうございます』
「あらあら、こんなことぐらい
星教徒として当然の行いですよ」
念じただけで黒板に文字が出るようになって
コミュニケーションの円滑化が半端ない。
シスターに聞いたところ、
『記述』スキルの一種だろうとのこと。
若干予想はしていたとは言え
これで私が魔法を使える可能性は消えたわけだが、
このスキルのおかげで命拾いした。
下手をしたらこの朝食に
私が入っていた可能性があるのだから
本当に紙一重だった。
「な゛ーーー」
シスターと私が話しているなか、
一足先にご飯を食べ終わったスラ子は
子供たちと遊んでいる。
やはり可愛いスラ子は子供たちにも大人気のようだ。
今は三人の取り合いになって
ハンドスピナーの形状になっている。
あれは・・・大丈夫なのだろうか?
やはりこういった時に声が出せないはもどかしい。
心配そうにスラ子を見つめる私に気が付いたのか、
シスターが一言声をかける。
「こらこら、痛いことしちゃだめですよ」
「「「はーい」」」
注意に従って素直にスラ子を離す子供たち。
一声で子供たちの行動を制するとは
相当このシスターは慕われているのだろう。
改めてこのシスターの人徳に感心してしまう。
「っなっな」
子供たちから逃れたスラ子が
私の下へ駆け寄ってくる。
「そのスラ子さんも鳴くなんてすばらしいですね」
『シスターも鳴くスライムは聞いたことが?』
「えぇえぇ、ないですね。
それに言葉を介するヤドカリさんも」
微笑みながら私たちを見るシスター。
心根を反映したその微笑みは
さすが神職といったところだろう。
そんなシスターに恩返しの一つでもしなければ
男がすたると言うもんだ。
黒板を持ち直し、改めて文字を映し出す。
『ご飯のお礼と言ってはなんですが、
何かお手伝いできることはありますか?』




