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『しばらく臨時休業よ(ハート)』
この町で唯一、お嬢と私の関係性を知っている
リンダちゃんを頼りに喫茶店に来た私を
出迎えたのはそんな張り紙だった。
今朝あったばかりだったのに・・・。
突然孤立無縁になった私とスラ子。
「な?」
「だ、大丈夫だよ。私が付いているからな!」
自分を落ち着けるようにスラ子をなだめる私。
とにもかくにも安全を確保しないと。
この喫茶店は閑静な住宅街という立地と同時に
余り人気がなくてとにかく暗い。
人間こういう時には自然と光を求めてしまう。
家々から漏れる光をたどりつつ
羽虫のごとく大きな光を求めて歩いているうちに、
気が付くと小さな祠にたどり着く。
人ひとりが入れるぐらいの大きさで
中には明かりを持った女神像が置かれている。
きっとお地蔵さん的な何かだろう。
像の陰にうずくまり朝を待つ。
どれくらいの時間が経ったのだろうか?
宿殻の外から鳥の鳴き声がする。
どうやら一日が始まったらしい。
お嬢の宣言では明日には帰ってくると言っていたが
それを信じるにしても
お嬢とうまくコンタクトを取れなければ
ギルド前で掴まってばらされてしまう可能性がある。
さらには最悪私がいないことをいいことに
道中置き去りにしたように私を置いて
旅に出てしまう可能性だってある。
問題が山積み過ぎて頭が痛い。
とりあえずどうすればいいのか
考えを巡らせようと意識をはっきりさせると
空腹感を体がしっかりと認識してしまう。
まずはご飯だな。
そう、目標を決めて祠を出ようとすると
不意に目の前に現れた子供と鉢合わせる。
「ヤドカリだ!!!」
朝からこのテンションの高さは凄まじい。
いくら私でもこんな早朝にヤドカリ一匹で
ここまでテンションをあげることは出来ない。
興奮を押さえつつ恐る恐る私に近づくと、
私に敵意がないことを確認する子供。
「シスターに見せなきゃ!」
そういって私を抱えてフラフラと走り始める。
シスター?
もしかしたら教会があるのだろうか?
だとしたらチャンスかもしれない。
元の世界と同じようにこの世界にも宗教はある。
一番大きく広く布教されている
星神デリアを信奉する星教というものがある。
ここはいうなれば平等を旨とする教えで
孤児院や施し的な社会福祉を率先する宗教だとか。
上手くいけばご飯がもらえるかもしれない。
運ばれるまま子供に体を預けていると、
星教のシンボルを掲げた建物が見えてくる。
ここまでくると自分の洞察力が恐ろしくなる。
子供は走るスピードそのままに建物の裏手に回ると
裏庭らしき場所でお鍋を前にする女性に声をかける。
「シスター!ヤドカリ!!!」
そういって私を前に差し出す。
「あらあら」
そういって私を前へ掲げてシスターへ渡す。
「おっきなヤドカリね」
そういって大切そうに私を持つシスター。
これだ。
これこそ私の適切な持ち方だ。
いつもお嬢にボールのように扱われている私にとって
笑顔で持ち上げてくれる女性など皆無だった。
久しく感じていなかったはりつやのある
確かなぬくもり。
貴方が女神様だったか・・・。
「ふふ、今晩はヤドカリスープね」
「やった!おかずが増えた!」
満身創痍の私が出せる全力。
空腹で気の抜けた体に生存本能が駆け巡り
自分でもびっくりするほどの力で
シスターの手の中から脱出する。




