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私たちはソラナさんから魔獣小屋の説明を受け、
従魔のタグを貰うと冒険者ギルドを後にした。
さすがにあわただしくなったあの場所に居ても
邪魔になるのは目に見えていたし、
お嬢が仕事に励む中、
私だけ待ちぼうけというのもいただけない。
今日を入れて三日間!
お嬢が驚くほど成長して見せようなスラ子!
「な!」
うむ。実に頼もしい返事だ。
しかし、ここで問題が一つ。
お腹減ったな・・・。
「なぁ・・・」
よくよく考えてみればお嬢から
三日分の食事代を貰っていない。
宿と一緒にギルドから出るかもしれないが、
ここでよく考えてみよう。
たいした説明もないまま放置された私たち。
いってみればただのヤドカリとスライムだ。
そして思い出して見よう。
当初のお嬢がそうであったように
ヤドカリは土を食うと思われているらしい。
となると一般的な食事は期待できない。
むしろ気を使われて土を出される可能性すらある。
厳しい・・・。
これはさすがに厳しい。
もちろんちゃんと説明すれば普通の食事を
出してくれることもあるだろう。
だが、主人が緊急事態で忙しい時に
『邪魔だから』とおいていかれた私が、
『普通の食事が欲しい』などと言ったら?
想像するのも恐ろしい。
強要されようものなら
三度目の塔からの紐なしバンジーすらいとわない。
ということで。
まずは生活面からたくましくなっていこうなスラ子。
「な!」
こうしてスラ子と一緒に仕事を探し町を歩く。
さすがに町といっても安全とは言い切れないため
なるべく明るく人通りの多い通りを
邪魔にならないよう歩く。
ファンタジーさながらの獣人や
荷馬車を引くオオトカゲなど目を引くものは
多々あったのだが、生憎求人はない。
むしろ文字自体少ない。
大体が何かの象徴的なものが出ているぐらいで、
見た目からは何の店だかわからない物も多い。
時折高級そうなお店で求人の張り紙もあるのだが、
正直人間のレベルでもかなりの制限があり、
ただのヤドカリとスライムを短期で雇うとは
到底思えない。
そうしてフラフラしながら人の多そうな方へ向かうと
運がいいことに市場へ着いた。
時間は午後四時あたりだろうか?
日が傾く前に夕ご飯の食材を求める人たちで
あたりが活気づいている。
ここなら何かあるかもしれないな!
「な!」
そうして屋台の上に登って店沿いに移動する私たち。
正直活気がありすぎてヤドカリの相手を
してくれそうな人が見当たらない。
他に何かないかとくまなく探していると。
店主が客からもらったお金をポケットに
しまい損ねたのを見かけた。
店主はその事に気が付いていない様子。
おぉ?
そう思って転がったお金を拾う私。
銅貨だ!
確かこれ一つでくずパンぐらいは買えたかな?
思わぬ収穫に喜ぶが。
「な?」
私を見つめてくるスラ子。
そうだな・・・。
スラ子の教育上もあるし、
こういうことはよろしくない。
拾った銅貨を落とし主に届ける。
『落とした』そう黒板に書いて店主に渡すと
一瞬、非日常的な光景に驚きつつも。
「あんがとな!」
そう素敵な笑顔で銅貨を受け取ってくれる。
ヤドカリ相手にお礼を言うとはなかなか礼儀正しい。
この人なら何か物や情報をくれたりしないだろうか?
そんな期待も込めてしばし店主を眺めているが
お客さんの相手でかなり忙しそうで
こちらに気が付く様子はまったくない。
まぁ、待っていてもしょうがないので
似たようなことをしつつ、市場を巡っていると。
「な」
そういってスラ子が夕日を指す。
そうか。もうこんな時間か。
暗くなるにつれて客も店もどんどんはけてゆく。
このタイミングでなら誰かから情報が聞けたり
するかもしれないが期待は出来ないだろう。
何せ私達だって『早く帰らなければ』と
身の危険を感じるのに、
今日の売り上げを持った商人たちなら
なおの事急いで自分の家に帰りたいだろう。
また、先ほどと同じように落ちている小銭を
拾うことも出来るかもしれない。
だが、それも同じ理由で厳しい。
こうして裏路地から伝わってくる嫌な気配から
逃れるように冒険者ギルドへと急ぐ私たちであった。




