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3-2


「丁度良かったっす!緊急事態っす!」



金色の短髪に垢ぬけない顔をした青年が、

そういってお嬢の前へとかけてくる。



「はいはい。あんたはいつだって緊急事態でしょ」



そういって青年をいなすお嬢。


どうやらかなり親しい仲らしい。



「いえ、今回はどうやら緊急の様です。」



お疲れ様ですと断りを入れながらアラサーぐらいの

しっかりとした男性が青年を遮ってお嬢の前に出る。



「本当にタイミングが良かった。

これから高速便で一報を入れようかと」


「どういうこと?」


「それがダンジョンの地形が変わったようでして」



何やら真剣な話をし始めるお嬢と男性。


どうやら青年が言っていた通り、緊急事態らしい。



ダンジョン。


ファンタジーお決まりの迷宮の事である。


ただしモンスターが無限に湧き出てきたり、

宝箱が設置してあったりなんてことはない。


わかりやすく例えるならゴキブリホイホイと同じで、

周辺の魔性生物や、魔獣を引き寄せる効果がある。


こうしたダンジョンがあるおかげで周辺地域が

比較的人の住みやすい土地になるという。


そしてそんな場所を管理するのが一般的な冒険者の

お仕事となるわけなのだが、

今その管理において良くないことが起きていると。



「断りもなしにそんなことしたら

反抗の意思ありで絞めなきゃダメじゃない!」


「しかしあのご老体がそんな」


「アイツはそんなことしないわよ。

だから世代が変わったんでしょ?」


「まさか!次代はまだ赤ん坊ですよ!?」


「そんな事はどうでもいいの!結果だけ見なさい!

じゃあ封鎖措置と制御杭は?」


「すみません・・・。制御杭は」


「ケチったわね?お金の心配はするなって・・・」


「申し訳ない」



先ほどまでの活気づいていたこの場が一瞬に凍り付き

誰もがお嬢の次の発言を固唾をのんで見守る。


そんな耳が痛くなるような静寂に耐えきれなくなった

一名が取り乱し始める。



「や、やばいんすか?やばいんすね!?

ヤバいっす!!!」



自らのテンションで自らの危機感を高めてゆく青年が

お嬢の肩を掴んでおもむろに揺さぶり始める。



「ヤバいっぶ!!!!」



そんな揺さぶりに切れたお嬢が反動を利用して

青年の鼻っ柱に強烈な頭突きを叩き込んで

黙らせたかと思うと声高らかに叫ぶ。



「レベル4!今から出るわ。

動ける奴はついてきなさい!!!」



手に持った杖で床を一突きすると。



「「「押忍!!!」」」



室内の冒険者たちが一斉に立ち上がる。



やべぇ。お嬢かっけぇ!!!



テキパキと指示を出してギルド内を一気に掌握する

お嬢の手腕に見とれていると。



「ソラナさん。各所へ通達お願いします。

後、この子達魔獣小屋に泊めてもらっていいですか?」


「えぇ。問題ないわ。任せておいて」


「明後日までには戻ります。もし戻らなかったら」


「リサちゃんなら大丈夫よ。こっちは心配しないで」


「ありがとうございます。

いい子にしてるのよスラ子ちゃん」


「な!」



そういってスラ子を抱きしめるお嬢。



『私もお供します!』



こういう時にこそ私がお嬢をサポートせねば、

そう思って黒板に書いた文字をお嬢に見せる。


だが。



「あんたが来たって邪魔になるだけなんだから、

大人しく待ってなさい」



そういってお嬢が私の眉間を小突く。



・・・あれ?


なんかやけに優しいな。



下手すれば強烈なデコピンで顔面破砕もありうる

お嬢の一撃が今回はやけに生ぬるい。


いつもとあからさまに違うお嬢に一抹の不安を

覚えながらもギルドから出立するお嬢を

スラ子と一緒に見送る私であった。

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