3-1
『冒険者ギルド』
お嬢と私は今そこへ向かっている。
というのもお嬢は現在この町の
冒険者ギルドに所属しており、
学園へ発つ前にいろいろと手続きがあるのだとか。
一攫千金目指して危険地帯へ繰り出す
荒くれ者どもが集う場所ってイメージがあるけど。
実際はどんな場所なのだろうか?
お爺さんから説明は受けたが、
お嬢が絡むことに関しては途中から
孫の自慢にシフトされてしまうために、いかに
お嬢がアイドル的な存在でみんなから慕われており。
いかにみんなをまとめるカリスマを発揮しているのか
を重点的に語るために、
ファンクラブ的な印象しか受けなかった。
実際お嬢は顔立ちが整っているので
そのような場所になっていても不思議ではないのだが。
「お嬢!お疲れ様です!!!」
ギルドに近づいているのだろう。
厳ついお兄さんがお嬢へ挨拶する率が
だんだんと高くなり、
ついにはお嬢の目線が一つの建物へと留まる。
周囲に建物に比べても格段に古い入り口。
歪な修繕と増築の後。
ミニ魔王城といっても差し支えがないその建物には
『冒険者ギルド』と看板が出ている。
ここに入るのか・・・。
扉を前に息をのむ・・・間もなく。
ずかずか入ってゆくお嬢。
えぇ!?ちょ!雰囲気が!雰囲気がっ!!!
人間第一印象が大事だというのに
挨拶の内容も考えられないままに中に入ると。
「お疲れ様です!!!」
全員直立の挨拶が出迎える。
「リサちゃん久しぶりー」
そんな挨拶から遅れたテンポで
受付からお姉さんが手を振っている。
「ソラナさんお久しぶりです。」
軽く挨拶を済ませると何やら雑談を交えながら
事務的なやり取りを始める。
お嬢もさることながら受付のお姉さんも
かなりレベルの高い容姿をしている。
笑いあう女子同士というのは良い物ですなスラ子。
「な。」
宿殻の中から出て来て相槌を打ってくれるスラ子。
相変わらず気配りの出来るいい子だ。
そんなスラ子の鳴き声に気が付いたのか
受付のお姉さんがこちらに気が付く。
「あら?この子達は?」
「ふふ。この前塔の近くで見つけちゃったんだ。
この子がスラ子ちゃん。」
「な!」
挨拶をするスラ子に、受付のお姉さんを含め
周囲の冒険者たちが釘付けになる。
「凄い!鳴くスライムなんて初めて見たわ!
大発見じゃない!!!」
「そうよね!お爺様も見たことないって言ってたし。
頭も良いからきっとお金になるわ!!!」
実利的な発言にとてもお嬢らしさを感じる。
まぁ、それはいいだろう。
一先ず呼吸を整えてポーズをとる私。
そう、私こそがお嬢の従魔第一号にして
世にも珍しい知性あるヤドカリ!
カニ太郎にて御座候!!!
・・・ってあれ?
私の紹介は?
ちょ!スラ子にかまいすぎでしょ!?
スラ子を夢中でいじくりまわす二人。
おかしい。
あのポジションは私であるべきなのでは?
この憤りを伝えるためにあらん限りの
力とスピードをもってハサミを打ち鳴らす。
「っち。このうっとおしいのがカニ太郎。」
はぁい。カニ太郎ダヨー。よろしくー。
私の思いつく限り全力の可愛いアピールで繰り出す。
どや?撫でまわしても構わんよ?
「・・・なんだか大変そうね」
「わかる!?本当にお爺様ったら―――」
突如としてスイッチの入ったお嬢が
お爺さんと私を烈火のごとくディスり始める。
やはりお爺さん相手では出来ない
女子同士の会話のノリというものがあるのだろう。
女子トーク。
そういえば聞こえはいいだろうが、
今この場で行われているのは昼ドラも真っ青な
ただの公開リンチ。
というか受付のお姉さんも結構な毒をお持ちです。
別にそんなお嬢の愚痴に対して
私を見ながら適切な感想を述べなくていいんですよ?
やめて!私だって好きでこんな姿に!
磯臭いとか何ですか!?
毛深いとか言わないで!
決めてしまったポーズのまま動けずに
言葉のナイフに耐えていると。
「あ!お嬢じゃないっすか!!!」
ギルドの入り口から元気な男の声がする。




