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2-7

突然聞こえてきた草のこすれる音にびっくりし、

数歩後退しつつも音のした方向を凝視する私。



もしかしてお嬢が!?



そう思っては見たものの、

こんな草むらからわざわざお嬢が現れるだろうか?


服を汚してまで私を探してくれるなんて

あったらうれしいが、ありえない。


次点で途中までついてきていたお爺さんという線も

なくはないのだろうが、それにしては音のした範囲から

長身のお爺さんという線は考えにくい。


となればやはり大本命のご登場だろう。



スラ子!


迎えに来てくれたんだね!!!



な!



そういって飛び出してくるスラ子を抱きしめようと

両手を目一杯広げる私。



「ゴブ!」



そんな鳴き声と共に出てきたのは実に彫の深い顔。


これには度重なる死線を乗り越えてきた私も

驚いて宿殻の中に退避する。



仕方ないよね?


だってここにきて未知との遭遇だもの!!!



いきなりトップギアに入った私の心臓が

宿殻の中で反響しそうなほど高鳴っている。



あ!しまった!!!



慌てふためく自分をなだめて冷静になろうと

現状を整理する私だったが、嫌な事に気が付く。


完全に宿殻の中に入ってしまったために、

もうこの場から動くことが出来なくなっている。


あからさまに距離を縮めてくるゴブリン。


もうこうなってしまっては逃げるには

遅いのかもしれない。


悔やんでもどうにもならない。


お爺さんから話は聞いていたのだけれども

実物にこんな薄暗くなってから会うなんて

最悪にもほどがある。


正直こんな場所で遭遇して、

あんな凶悪な顔面と戦うなんて

人間の状態だったとしても御免被る。



もう嫌だ。おうち帰りたい・・・。



極限状態で幼児退行を起こしかけていたその時。



「面白そうなものを持っているゴブね?」



低くしわがれた声が背後から聞こえてくる。


恐らくお爺さんの黒板の事を言っているのだろう。



お爺さん・・・。


お嬢が心配で心配で、

最後まであんな形相で必死についてきていたお爺さん。


正直、こんな状況になったのも

お爺さんのせいとは言えなくもないが。


そんなお爺さん想いのこもった黒板を、

ゴブゴブキャラ付けのこいつに好き勝手に

されて良いのだろうか?




いいや、良くない!!!



感情の高ぶりとやけくそで宿殻から這い出ると、


背後を振り返りハサミを掲げる。



お爺さんの思い。


踏みにじりたくば

この私を倒してからにしてもらおうか!!!



宿殻から這い出て改めてゴブリンと対峙する私。


怖い。やはり彫が深くて怖い。


例えていうなら妖怪以上チュパカブラ未満だろう。



だが、不思議と先ほどまで恐怖で震えていた体が

しっかりと自分の意識下に戻っている。


大見得を切ったことで吹っ切れたのだろう。


しばしにらみ合うヤドカリとゴブリン。


最初に動いたのはゴブリンだった。



「これはすまないゴブ。大切なものだったゴブか?」








・・・あ、この人は話の分かる方だ。


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