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2-5

「それではお爺様行ってまいります」


「きお゛つけて・・・」



ガチ泣きすぎて言葉が続かないお爺さん。


苦笑しながらお嬢がハグをする。



「年越しの際には戻ってきます。

それまでお体に気を付けて頑張ってくださいね」



そう、お爺さんが来れないのは

この塔で国境監視やらの役目があるため

ここから離れることが出来ないとのことだった。



「カニ太郎。リサを・・・!」


あーはいはい。わかっていますとも!



徹夜で本とお爺さんから情報をかき集めた為、

朦朧とした意識の中やっとこさ返事を返す。



「それと、これはワシからの選別じゃ」



そういうと涙やら鼻水をぬぐった手で

板を手渡してくる。



拭きたい・・・。


とりあえず後で拭こう。



状態はともかく渡されたそれは

お爺さんの授業で使っていた黒板セット一式。



そっか、これから意思疎通するにも大切だよな。



改めて自分が喋ることの出来ない状態を自覚すると

板に通された糸を宿殻に引っ掛けて背中に背負う。



「それじゃあ・・・」



改めて断りを入れるとそっとお爺さんから離れ

サクサクと歩き始めるお嬢。



「気を付けるんじゃぞー!」







そうしてお嬢と歩き始めてしばらく。



「な!な!」



お嬢の首に巻き付いたスラ子が

楽しそうな鳴き声をあげている。



ふふ、二人仲良くじゃれついて・・・。



温度調節が出来るのか、

触っても冷たくない場合のあるスラ子。


まだ寒いこの季節、しかも遮るもののない

この草原で首に巻いたらさぞかし暖かいことだろう。



別にうらやましいわけではない。


いや、本来ならうらやましいかもしれないし。


私の強がりに聞こえるかもしれない。


だが、今はそんな事より後ろが気になる。


数百メートルは離れているだろうが。



「・・・・じゃぞーーー!」



数十分前に別れを告げたはずのお爺さんが

遠目に見るほどに後ろをついてきている。


部屋着で。



寒くないんですか?大丈夫なんですか?



ちょっと気になってしまって足元がおぼつかない。



「カニ太郎。後ろ見ないの。

気にかけるともっとついてくるんだから」


そ、そんな猫みたいな言い方を。



振り向いたら若干距離が縮まりそうな。


何かの妖怪の様な体を成してきてるから

ありそうで怖いのだが。



「もう!面倒くさいわね。ペース上げるわよ」



そういって進行速度が上がっていくお嬢。



え!ちょっと!!!



先ほどまで現代社会では競歩ほどのスピードが

突然駆け出すお嬢。


ヤドカリの体になってからさほど疲れを感じず

スタミナも有り余っていた私だったが、

さすがに歩幅の違うお嬢のスピードには届かず、

お爺さんどころか私までお嬢から離される始末。



ちょ!ちょ!!!わざとですか!?


そのスピードはわざと何ですか!?



そんな私の突込みもお嬢には伝わらない。


一切後ろを気にしないお嬢を必死に追いかける。


だが、昨日の徹夜が祟ったのか

地面のくぼみに足を取られて。



あ!



勢いよく転んでいった先にある茂みに

思いっきり転げ込んでしまう。



いたた・・・。



慌ててもらったばかりの黒板が無事か確認を取ると、

急いでお嬢を追従しようと茂みから抜け出すが。







いない・・・・。



あたり一面緑の草原が広がるこの場所。


道といっても獣道があるかないかのこの場所で、

どうやら私ははぐれてしまったらしい。



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