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「そいつ絞めると高くつくわよ。
伝書鳩って高いんだから」
いつのまにやら現れたお嬢が手に持った杖で
鳩目がけて放ったハサミを遮った。
どうやらまだ身支度の途中だったらしく
空いたもう片方の手で髪を整えている。
ってかお嬢。絞めたことがあるんですか?
身をもって知っていそうだが
地雷を踏みぬきそうなので聞きはしない。
「ってかあんた手紙受け取ったんでしょ?
さっさと渡しなさいよ」
あぁ、そういえば。
鳩討伐に気を取られてうっかりしていた。
果たして一体誰からなのだろうか?
宿殻にしまった手紙をお嬢に渡して
お嬢の対応をうかがっていると・・・。
お・・・おぉ!え!?
いつもの眼光鋭い目つきが柔らかくなったかと思うと
次の瞬間には口元が緩み始めるお嬢。
そこまで喜ぶ相手なのか?
出会ってから今までに見せたことも無い表情の
お嬢にちょっとたじろぐ私。
「クルック!」
そしてそんなことお構いなしの鳩は
お嬢の挙動が止まったのを見かねて
恐れ知らずにもお嬢の足に蹴りを入れる。
「クルッグぅ・・・」
何やらお嬢を急かそうとする鳩だったが
次の挙動に移る前にお嬢に首を握られて
その動きを止める。
「伝書鳩が調子に乗ってんじゃないわよ?
次やったらミンチにするからね?」
お嬢の複雑怪奇な表情と適切な握りしめにより
完全に勢いをなくす鳩。
先ほどの私への忠告は何だったんですか?
ってかやっぱり食べるんですか?
朝食に参入するかもしれない新鮮なたんぱく質に
心躍りつつハサミの手入れをする私。
「な!」
開け放たれていた雨戸を閉めてカギをするスラ子。
どうやら布陣は完璧のようだ。
お嬢の手から解放された鳩は今や部屋の隅っこで
縮こまってガタガタと震えている。
そんな鳩を気にも留めずにお嬢は
室内の小物入れから道具一式を取り出して
何やらサインと印を押すと。
「ほら、これでいいでしょ?
スラ子ちゃんも窓開けてあげて」
丸めて鳩の足に取り付けてある入れ物にしまう。
なるほど。受け取り印的なものが必要だったのか。
でもそんなもんヤドカリに要求されても困るし。
・・・ってかさっさと帰れよ。
何やら恨めしそうな顔でこちらを見てくる鳩。
あ?やんのかポッポ。
やるなら相手してやる。かかってこいや!
お嬢の後ろという完全な安地において
圧倒的優位性を持つ私。
お嬢の後ろでハサミを掲げて鳩を威嚇する。
そうしてしばしそんな状況が続く中。
待つのに業を煮やしたお嬢が床を足ドンして
鳩に無言のガンを飛ばす。
「ポッポォオオオォーーーーーー!」
ちょっとかわいそうになるぐらいの悲鳴を上げて
飛び去ろうとする鳩。
だがまだ完全に室内だったためか
その大きな両翼を窓にぶつける。
するとどうだろう。
この前お爺さんがぶち抜いた窓だったせいもあるのか
嫌な音を立てて窓が吹っ飛んでゆく。
うわ、痛そう。大丈夫かなあの鳩?
若干可哀そうになりつつもよろけながら
とんでゆく鳩を見て気の毒になる私。
「っち。あほ鳥が・・・。
あんたその窓なおしておきなさいよ」
えぇ・・・。
また私が直すんですか・・・。
こうして朝から面倒な仕事が増えることとなった。




