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地平線の彼方から覗く朝日の眩しさに目を伏せたのも
ほんの一瞬。
重力に従って体が引っ張られてゆく。
嘘でしょ。つい先日落とされたばかりなのに?
はは、ありえないんですけど!
二度目の紐なしバンジーということもあり、
思いの外慣れた・・・なんてことはありえない。
ってか今回も私は何一つ悪いことどころか
行動の選択肢すら与えていない。
にもかかわらずこの仕打ちは何だろうか?
一日の始まりから選択肢のないイベントを
読み進めているだけでデッドエンドが待ち受けてる。
どうしろと?
もういっそこのまま楽になりたい。
迫りくる地面を両手で迎えようとしたその時。
「な!」
宿殻の中から這い出てきたスラ子が変形し、
パラシュートとなって落下速度を落とす。
スラ子・・・!
忘れていた私の救世主。
だが、スラ子への感謝もつかの間。
昨日と同じ状況で、聞こえたあの声が
スラ子と鳴き声と一致する。
まさか昨日も?
態勢を崩しながらも無事に地面に着地する私。
それと同時にスラ子も元の形状に戻る。
ありがとうスラ子。
もしかしてこの前の時もスラ子が?
私の眼前で微動だにしないスラ子だったが、
ある程度の間をおいて。
「・・・な!」
肯定の意味合いだろう返事をする。
そっか。やっぱり。
感謝の意を込めて思いっきりスラ子を抱きしめる。
だが私の中で湧き上がってくるのは安心感ではない。
突き付けられてしまう私の存在価値。
そう、昨日のあれが私の力でないのならば
お嬢の言っていた通り、
私は魔法も使えないガチのヤドカリということになる。
そんなただのヤドカリがこんな人間でも危うい
九死に一生の事態にポンポン遭遇していたら
とてもじゃないけど生きてゆけない。
私が突き付けられた現実と向き合っていると。
「ごめんなさいスラ子ちゃん。」
上空から箒に掴まって降りてくるお嬢。
近寄ってくるお嬢に対して
反射的にスラ子を離し後ろに飛びのく。
「あの宿殻でスラ子ちゃんが寝てるのを
忘れてて・・・」
申し訳なさそうにスラ子を抱きしめようとしたその時
「な!!!」
そういってお嬢の手をスラ子が触手で弾き
その触手で私の方を指さす。
「な!なな!!!」
「スラ子ちゃん・・・」
私の事を察してくれているのだろうスラ子。
お嬢に対して私に謝れ的なことを言っているらしい。
その気持ちはとてつもなくうれしい。
うれしいのだが待ってほしい。
現状踊り狂うチェーンソーみたいな状況のお嬢に
近づくだけでも危ないのにそんな注目をさせたら
どんな惨劇が巻き起こるかわからない。
頭をよぎるスプラッターな光景に
私がその場で固まっていると。
「悪かったわよ・・・大人げなかったわ」
あれ?意外にも素直な反応を見せるお嬢。
いや、おそらく私の方がお嬢より年上なので
お嬢のセリフに若干の引っ掛かりを感じなくはない。
だが、この素直な謝罪。
拒むのもそれこそ大人げない。
そっとお嬢にハサミを伸ばす私。
それに対して私のしようとしたことを察したお嬢が
私のハサミをつまむと。
「ふふ、良いわ。その度胸はかってあげる」
おおよそ謝る人の態度ではないのだが
恐らく初めてであろう私に向けられた笑顔と評価に
満足してしまう私であった。




