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昨日と同じように部屋に差し込んでくるかすかな光に
体が反応して目が覚める。
寝ぼけた体に起こすために大きく伸びをして
新鮮な空気を取り込んでゆく。
するとどうだろうか。
なんだかちょっと自分の体が大きくなった気がする。
・・・あれ?
いや、あっれ?おっきくなってない!?
比喩ではなくホントに体が大きくなっていた。
二回りは大きくなった体に、甲殻も重量感が増した。
さらには宿殻も合わせて大きくなったうえに
宿殻に生えていた木まで大きくなっている。
どこぞのポケットに入るモンスターのごとく、
進化でもしてしまったのだろうか。
体に起こった異変に戸惑っていると。
「ほら、朝よ。昨日で水場もわかったでしょ?
ちょっと水くんで・・・」
そう言って扉を開けて私の姿を確認したお嬢が、
扉を閉めて去ってゆく。
別にわからなくもない反応だが、
実際にされると若干傷つく。
そうしてしばらくするとお嬢に連れてこられた
お爺さんによる診断が始まるが。
「ヤドカリとは一晩でこんなにも
大きくなるものなのかのう?」
調べる風にはしているが本人も要領を得ない様子。
「カニ太郎や。どこかいたむかのう?」
成長痛的なものもないのでハサミでバツを作る。
「大丈夫なんじゃなかろうか?」
そういってお嬢に私を手渡そうとするが
受け取ってくれないお嬢。
「お爺様、そんな適当に片づけないでください。
これから私が面倒見なくちゃいけないのに」
「と言ってものう。」
お爺さんの話では魔法陣や魔道具を使用しない
魔法の常時発動というものは存在しないらしい。
また、巨大化の魔法というのもあるにはあるが、
制御が難しく今の私のようにふんだん通りの動きを
することはまずできないとのこと。
「ってかそもそもあんたは魔法ちゃんと使えるの?」
お爺さんの手から床におろされた私に
お嬢が聞いてくる。
そんな事私に聞かれても、
逆にこっちが聞きたいぐらいですよ。
そして使えるなら是非使ってみたい。
きょとんとしている私を見るとお爺さんが
しゃがんで私のハサミを握ってくる。
「そういえば確認しておらなんだ。
では適性の有無を見ておくかの、
今からワシが魔素を送るからの、
判ったらハサミを動かしなさい」
なんか聴力検査みたいですね。
そんな感想を抱きながらお爺さんと見つめ合う。
最初の数秒はワクワクしていたのだが、
間が伸びるにつれてだんだんと気まずくなってゆく。
あれ?お爺さんちゃんとやってます?
無表情なお爺さんの表情からは何も読み取れない。
そして結局私のハサミが動く前にお爺さんの手が
離されてゆくと、弁明するかのごとくお爺さんが。
「リサや。昔からバカとハサミは使いようと・・・」
「ないんですね?」
「いや、待つのじゃ」
「魔法適正はないんですね?」
「・・・うむ」
「って言うことはなんですか?
お爺様はただのヤドカリを召喚したんですか?」
ゆっくりと笑顔でお爺さんを見据えるお嬢。
それに対して視線を逸らすお爺さん。
「あまつさえただのヤドカリを飼えと?」
「そ、そんなことはないと思うぞ?」
精一杯声をひねり出すお爺さんに
ゆっくりと歩み寄るお嬢。
「それ、私の目を見て言ってもらえます?」
しり目にお嬢の顔を覗き込んだお爺さんは突如転進し
駆け出した次の瞬間。
老人とは思えない力強さで分厚い雨戸を突き破り
窓の外へ消えてゆく。
ちょ!!?お爺さん!!?
いくら何でもお孫さんに責められたからと言って
身投げしなくても。
急いで破られた窓から外を覗くと。
「わ、ワシちょっとそういうのに詳しい知り合いに
来てくるでなーーー!」
そういってどこから取り出したのか、
杖に乗ってパジャマ姿で飛び去ってゆくお爺さん。
まったく、いくらお嬢が怖いからって窓を壊して
逃げなくても。
お爺さんの行動にあきれつつ、
私が後ろを振り返るとそこにお嬢が立っていた。
「ねぇカニ太郎?」
そういって私のハサミをつまむお嬢。
「偶然ってあるわよね?」
まぁ、あるでしょうね。
こうしてお嬢と出会えたのも偶然かはたまた運命か。
一期一会とはなんと感慨深い。
そういうお話ですよね?
嫌な予感がぬぐえないこの状況に
必死で別の意味を見出そうとする私。
だが、お嬢の歩みと共に恐れている事態が
一歩一歩と着実に近づいてくる。
「今度はちゃんと見ててあげるわ。
あんたの実力見せてみなさい。」
お嬢のその言葉と共に私のハサミを掴んでいた手が
ゆっくりと離され、お爺さんが突き破った窓から
空中へと私の体が放り投げだされる。




