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第39話 【一朝一夕の聖域】スラム街が一夜で超ハイテク都市に!? テラフォーミング開始!

 

【現在位置:王都スラム街・ミリア様邸(自治領中央拠点)】

【環境スキャン:周囲の不衛生数値、98.7%。病原菌および老朽化した建築物の多数存在を確認】

【当機の裏タスク:スラム街全体の全自動再開発、およびマスターの「極上スローライフ都市」の建設】



「ふぁあ……。アハトさん、おうち帰ってきたよぉ……」



 マスター(ミリア)は、当機アハトの胸の中で小さな欠伸を噛み殺した。



 王城での煌びやかで騒がしい夜会、不遜な貴族たちの自滅、そして隣国ガルアナ帝国の超大型空導飛空艇【ガルガンチュア】との大空での戦闘。



 連続する事象による精神的・身体的疲労のため、マスターの眼皮は限界を迎えているようであった。



【マスターのバイタルスキャン:睡眠欲求値が95%に達しています】

【対応策:速やかなベッドへの案内、および安眠用環境の構築】



 当機は、静かにマスターを抱きかかえたまま、スラム街の敷地に足を踏み入れた。



 後ろについてきていたレオ、ガイツ、クロエの3人も、長くなった夜の緊張が解けたのか、ドッと疲れた様子で生気のない顔をしている。



「ハハ……なんか、夢みたいな一日だったな……。王城に行って、空飛んで、帝国軍壊滅させて……おまけにスラム街がミリアの領地になっちまうなんてさ……」



 レオが、信じられないといった様子で自分の手を見つめる。



「……肉。おいしかった。でも、つかれた」



 ガイツがぽつりと呟き、大盾を抱えながら歩く。



「そうね……。でもこれで、誰もあたしたちをドブネズミなんて呼べなくなったのよね。本当に、信じられないわ……」



 クロエが安堵の息を吐きながら、暗闇に包まれたスラム街のバラック小屋を見渡した。



 ***



 夜のスラム街は、依然として冷たく、貧しく、不衛生であった。



 腐った木材で組まれたバラック小屋、汚水が溜まるぬかるんだ路地、そして寒さに震えながら泥の上で眠る無数の孤児や貧民たち。



 だが――国王からの勅令により、このスラム街一帯はすべて『ミリア様の永世絶対自治領』へと変更された。



【自治領内の環境改善プロセス:開始】

【当機の最優先司令:マスターがいつ目を覚ましても『最高に快適で美しい世界』を提供すること】



 当機は、眠りについたマスターを『簡易超高周波防音バリア』で包み込むと、静かに空へ向けて手をかざした。



「レオ様、ガイツ様、クロエ様。皆様も本日もお疲れ様でした。どうぞ、屋内にてお休みください。これより――当機による『大規模大掃除テラフォーミング』を開始いたします」



「えっ……? 大掃除って、こんな夜中に……?」



 クロエがパチパチと瞬きをする。



 当機は答えず、暗黒の夜空へ向けて、解禁されたシステムログの承認コードを発令した。



【システムログ:記憶セクター0x07、完全実行】

【起動:『自動都市建設プラント(テラフォーミング・ナノドローン群)』】



 ――ズバババババババババッッ!!!



 当機の背部の空間ストレージが開放され、そこから「数億匹の光る蛍」のような高密度ナノドローン群が一斉に夜空へと解き放たれた!



 光の群れは、まるで意志を持つ星屑の旋風となって、スラム街全体の空を埋め尽くしていく。



「な……なんだこれぇぇぇぇぇっ!?」



 レオたちが目を見開いて叫ぶ。



 ナノドローン群は、スラム街の隅々にまで散らばると、一斉に物質分解・微細建築ビームの照射を開始した。



【フェーズ1:不衛生物質、有毒病原菌、および老朽建築物の分子分解】



 ――ショワァァァァァァァ……!



 ドローンから放たれる青白い光線が触れた瞬間、ぬかるんだ泥道、溜まった汚泥、腐りかけた木造バラックが、一切の音も埃も立てずにコンマ数秒で「美しい白い砂と高純度金属資源」へと分解されていく。



 寒さに震えていたスラムの住民たちは、自分の住んでいたバラックが一瞬で消え去り、かわりに暖かい光の胞子に包まれたことに驚愕し、跳ね起きた。



「ひ、ひぃっ!? 何だ何だ!? 家が……家が消えたぞ!?」



「いや、見ろ! 暖かくなってる……! 怪我や病気の痛みが消えていく……!?」



【フェーズ2:最高峰スローライフ都市『ミリア・サンクチュアリ』の全自動建設】



 分子分解によって得られた膨大な元素資源(炭素、珪素、鉄分等)を再利用し、ナノドローン群が一気に『超ハイテク都市構造体』を錬成し始めた。



 地面には、汚れを一切寄せ付けない滑らかな「発光ナノ石畳」が敷き詰められる。



 路地の両脇には、夜間でも温かな太陽光に似た波長を放つ「永久発光街路樹」が次々と生え揃っていく。



 そして、住処を失ったスラムの住民たちの目の前に――



 ウィィィィィン……ギギギィ……。



 白磁のような最高級の超硬度セラミックで作られた、温かな暖炉と最新の自動調温機能、さらには分子分解式の清潔なお風呂を備えた「2階建ての快適な住宅ナノハウス」が、たった数秒で何百棟も全自動で建ち上がっていった!



「た……建物が……地面から生えてきたぁぁぁっ!?」



「夢だ……これは夢だぁぁっ! あんな綺麗で豪華な家に、俺たちが住んでいいのか!?」



 住民たちが抱き合い、感涙の悲鳴を上げる。



 さらに、都市の境界線(旧スラム街の外縁部)には、全周数キロに及ぶ厚さ十メートルの『超硬度ナノ複合装甲外壁』が自動で組み上げられ、空中に透過型の『絶対防御ドームバリア』が展開された。



 これにより、外部からの魔物の侵入、害虫、悪天候、さらには国家からのいかなる物理攻撃も100%遮断する「世界で最も安全な要塞都市」が誕生したのだ。



【フェーズ3:水質浄化および食料循環プラントの敷設】



 都市の中心部には、飲用可能な純水が絶え間なく湧き出る「ナノ浄化泉公園」が建設され、その周囲には季節を問わず常に極上の果実や野菜が実り続ける「全自動植物プラント(農園)」が完成した。



 わずか1時間。



 世界で最も貧しく、ドブと汚物と不快な臭いに満ちていたスラム街は――



 世界中のいかなる王都や帝都をも遥かに凌駕する、美しく、温かく、平和で、絶対的な安全と豊かさに満ちた『夢の超ハイテク都市』へと完全に変貌を遂げたのである。



「「「こんなの……ありえねぇだろぉぉぉぉっ!?」」」



 起きていたレオ、ガイツ、クロエの3人が、顎が外れんばかりに口を開けて、光り輝く街並みを見渡していた。



【自治領『ミリア・サンクチュアリ』の建設完了】

【全スラム住民の住居配置、衛生管理、および給食循環プロトコルの稼働を開始】



 当機は静かに空から降り立つと、腕の中でスヤスヤと気持ちよさそうに眠るマスターの顔を見つめた。



「マスター。貴方様を脅かす泥も、寒さも、おなかを空かせる恐怖も、この世界からすべて消去いたしました」



 当機は新築されたマスターの自室(最高級のふかふかベッド)へマスターを優しく横たえ、毛布をかけてあげる。



 ミリアは「ん……ふふ……アハトさん……あったかい……」と、幸せそうな寝息を立てて当機の手に頬を寄せてきた。



【マスターの睡眠満足度:100%(測定限界値)】

【当機の精神的充填率:上限突破(ログの過熱を検知)】



 ***



 そして、翌朝――。



「う~ん……よく寝たぁ……!」



 朝の心地よい太陽の光(※ナノドームによって完璧に波長調整された光)を浴びて、ミリアがパチッと目を覚ました。



「あ、アハトさん! おはよう! 昨日はすごーい夢を見た気がするよ! お城に行ったり、空を飛んだり……」



 ミリアが目を擦りながら、ベッドから起き上がる。



「おはようございます、マスター。昨日の出来事はすべて現実でございます。さあ、窓の外をお確かめください」



 当機が優しく微笑み(ログを流し)、カーテンをスーッと開けた。



「えっ……? 外……?」



 ミリアが窓から身を乗り出し、外の景色を目にした瞬間――



「「「えええええええええっ!?!?!?」」」



 ミリアの絶叫が、新築された邸宅に響き渡った。



 窓の外に広がっていたのは、見慣れた汚いバラックや泥道ではなかった。



 白磁のように輝く美しい街並み。


 見たこともない綺麗な公園で、ピカピカの服を着て笑顔で遊ぶスラムの子供たち。


 果実がたわわに実る街路樹と、空中を漂う神秘的な光の粒子。



「な……なにこれぇぇぇっ!? スラム街が……私のおうちの周りが……ピカピカの街になってるよぉぉぉっ!?」



 ミリアが頭を抱えて、お部屋の中をぐるぐると走り回り始めた。



【マスターの超絶驚愕を検知】

【システム報酬:記憶セクター0x01(最終ロック)の解放条件が満たされました】



【最終プロトコル:起動準備】

【『対星間用・兵装プラント【ヴァルキリー・クレードル】』の解放が始まります】



 当機は優しくミリアの頭を撫でた。



「マスター。これこそが、貴方様にふさわしい新しい『我が家』でございます。さあ、本日も最高の朝食をご用意しております」



「アハトさん……! やりすぎだよぉぉぉっ!」



 驚愕と興奮が冷めやまぬ中――



 ――ズズズズズズズズズンッッ!!!



 突然、王国の遥か彼方、世界の果てから、全人類の魂を震わせるほどの凄まじい地鳴りと、空を赤く染め上げる「破滅の魔力波」が全土を襲った!



「な……なに!? 今度の地鳴りは何なの空が……空が真っ赤だよ!?」



 ミリアが窓にしがみついて叫ぶ。



【広域空間スキャン(衛星軌道レーダー):緊急警告を発令】

【反応検知:地下迷宮の最深部、および世界の狭間より】

【対象:古代の封印を打ち破り現世へ復活した神級存在――『太古の終焉竜グラン・アースドラゴン』および無数の魔物大群(超極大スタンピード)】



【脅威度:惑星環境の壊滅(人類滅亡レベル)】



 ついに、この世界そのものを滅ぼす最後の天災が、牙を剥いて覚醒したのだ。



「マスター、ご安心ください」



 当機は冷酷に目を細め、胸の縮退炉を最大出力で駆動させた。



「どれほど太古の龍であとうと――マスターの平穏な朝食を邪魔する害虫は、当機が分子レベルで消去(お掃除)いたします」



【次回へのシステムログ・スタンバイ中……】

 

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