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第38話 【降伏と崇拝】帝国軍の完全崩壊。王国の救世主としてひれ伏す人々

 

【現在位置:王都・王城中庭(瓦礫の広場)】

【環境スキャン:周囲の生体反応、約5万個体を検知。全員の心拍数および血圧:異常上昇】

【当機の裏タスク:マスターの「英雄視に伴う安全管理」および「過剰な狂信者からの防護」】



 全⾧1キロを超えるガルアナ帝国の超大型空導飛空艇【ガルガンチュア】が、大空の彼方で塵となって消滅した。



 七色の綺麗な虹がかかる青空から、ふわリと地上へ舞い降りたマスター(ミリア)。



 その右手には、まだ微かに光の粒子を散らせる光子槍ミニ・ブリューナクが握られており、背中の四枚の『光の結晶翼』が神々しい粒子を散らしていた。



「あ……あわわ……っ! みんな、なんでそんなにおでこを地面につけてるの……!?」



 ミリアが光の槍を消し去り、手足をバタバタと振って大パニックを起こしている。



 地上に足を着けた瞬間、王城の中庭を埋め尽くしていた国王、貴族、近衛騎士団、そして避難していた数万の王都住民が一斉にひれ伏したからだ。



「聖女様ぁぁぁっ! 救世主様ぁぁぁっ!」



「神の戦乙女様が……! 我ら愚かな民をお救いくださったぁぁぁっ!」



 地鳴りのような歓声と、涙ながらの感謝の叫びが王都全体を激しく揺らしていた。



 ***



 一方――空中に残されていた帝国軍の残党(機械化空導兵の生き残り約200機)は、完全な集団パニックに陥っていた。



『ひ……ひぃぃぃぃぃっ!? なんだあのガキはぁぁぁっ!?』



『我が帝国の誇る巨大空中要塞が……たった一撃で消滅したぞ……っ!?』



『化け物だ! あの白銀の子供は、人間の姿をした神だぁぁぁっ!』



 先ほどまで圧倒的な武力で王都を脅かしていた帝国兵たちが、恐怖で顔面を血の気なく蒼白にし、全身をガクガクと打ち震わせている。



『た、戦えるわけがない! 全機、武器を捨てろ! 降伏だぁぁぁっ!』



『降伏します! 命だけは……命だけは助けてくださいぁぁぁっ!』



 数百の帝国兵が一斉に魔導兵装を放り投げ、空中や瓦礫の上で両手を高く挙げて降伏の意を示した。



 王国の精鋭部隊すら歯が立たなかった最強の軍勢が、ミリアの一撃(お掃除)を目撃しただけで、戦意を100%喪失して全面降伏した瞬間であった。



【敵勢力(ガルアナ帝国軍)の完全降伏を確認】

【脅威度:無へ低下。王都における戦闘フェーズの終了を宣言いたします】



 当機アハトはミリアの隣に静かに着地すると、純白のエプロンを軽く整え、深々とお辞儀をした。



「お見事な終決でございます、マスター。害虫どもは完全に牙を折られ、屈服いたしました」



「降伏って……あのお兄さんたち、戦うのやめてくれたの……? よかったぁ……」



 ミリアが胸を撫で下ろし、ホッと安堵の息を吐き出す。



 だが、本当の大騒動はここからであった。



 ***



「せ……聖女様ぁぁぁっ!」



 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした国王陛下が、豪華な王冠を放り出し、豪華な衣装を泥で汚しながらミリアの足元へと這い寄ってきた。



 その背後には、近衛騎士団長ジェラルド、王宮魔法師団長ヴェイン、そして先ほどまで嫌がらせをしてきた貴族たちが、全員揃って地土下座の姿勢で平伏している。



「国王様……!? ど、どうしたの!? 頭を上げてください!」



「いいえ! 滅びの運命から我が国と民をお救いくださった偉大なる聖女様に対し、頭など上げられましょうか……っ!」



 国王は震える手で地面を叩き、感涙にむせび泣いた。



「我が国の誇る全武力が無力化され、絶望に打ちひしがれていた我らを……貴女様は神の光となってお救いくださった! この恩義、言葉や形程度では到底返しきれません……っ!」



「そんな……! 私、ただ街やみんなが危ないと思って……!」



「おお……! なんと慈悲深いお心……! これほどの絶対的な力をお持ちでありながら、どこまでも無欲で尊いお方だ……!」



 王宮の上層部たちが「おおお……!」と感涙の声を漏らし、さらに深く頭を擦り付ける。



 盛大極まるアンジャッシュ(勘違い)が、国家最高中枢において完全に神聖不可侵の真実として固定化されていた。



「聖女様! どうか……どうか我が国の申し出をお聞き入れください!」



 国王が顔を上げ、すがるような目でミリアを見上げた。



「我が国の財宝、領地、爵位、何でも望むものをお与えいたします! なんならば、このワシの王位を今すぐ譲り渡し、貴女様をこの王国の『新たな女王』としてお迎えしても構いません!」



「「「お、王位!?!?」」」



 後ろに控えていたレオ、ガイツ、クロエの3人が、目玉を飛び出さんばかりにして叫んだ。



「えええええええっ!? お、王位なんて要らないよぉぉぉっ!?」



 ミリアも手足をバタバタさせて拒絶した。



「私、お姫様や女王様になりたいわけじゃないもん! スラムの家で、レオたちやテオや、アハトさんの作った美味しいご飯を食べて……毎日楽しく暮らせればそれでいいんだもん!」



 ミリアの純粋で素朴な叫び。



 しかし、これを聞いた国王や貴族たちの受けて立つ衝撃は、さらに跳ね上がった。



「な……何ということだ……! 一国の王位すら……一蹴されるとは……!」



「どこまでも物欲から解き放たれた、本物の神の御遣いであられる……!」



【マスターの回答を受領:王位および複雑な国家権力の所有を拒否】

【妥当な判断です。政治的雑務はマスターの「お昼寝時間」を著しく阻害します】



 当機アハトは静かに一歩前へ出ると、平伏する国王へ向けて無機質な声をかけた。



「当機より、マスターの意志を補足・代行いたします」



「は……はいっ! 戦乙女のお付けの方! 何なりとお申し付けください!」



 国王が背筋をピンと伸ばし、当機の顔色を伺う。



「マスターが望んでおられるのは、豪華な王宮でも、煩わしい権力でもございません。求めるのはただ一つ――『安全で快適なスローライフ環境』でございます」



「す……スローライフ……!?」



「ええ。つきましては、マスターの生活拠点である『王都スラム街一帯』の全権利を、マスターの【絶対不可侵の自治領(私有地)】として譲渡していただけますでしょうか?」



 当機の提案に、国王は一瞬呆気にとられた後、激しく頭を縦に振った。



「そ……それだけでよろしいのですか!? スラム街など、王国の最果ての貧しい土地に過ぎませんぞ!?」



「ええ。そこをマスターの聖域といたします。王国の法や貴族の干渉を一切受けず、当機の管理下において完全な自由と平和を保証していただきます」



「分かりました! ただちに『スラム街一帯』を【聖女ミリア様の永世絶対自治領】と定める法を発布いたします! 誰も……いかなる貴族も、その土地に手出しすることは許しません!」



 国王が即断即決で叫んだ。



【交渉成立:スラム街一帯の完全所有権および自治権を獲得いたしました】

【システムログ:マスターの領地(絶対安全圏)の確定を検知】

【記憶セクター0x07のロックを完全解除いたします】



【新規機能アンロック:『自動都市建設プラント(テラフォーミング・ナノドローン群)』が起動いたしました】



 当機の頭脳メインフレームの中で、解放された膨大なテクノロジーデータが駆け巡る。



 これで十分だ。


 国家の不条理な介入を排除し、スラムという広大な土地を正式に手に入れた。


 あとは、この貧しく汚れたスラム街を――マスターが世界で一番快適に過ごせる「最高峰の未来都市(別荘)」へと作り変えるだけである。



「アハトさん……本当にスラムの街、私たちのものになっちゃったの……?」



 ミリアがポカンと首を傾げる。



「はい、マスター。これより我がスラムの改修工事を開始いたします」



 当機は完璧なお辞儀をし、夜空を見上げた。



「今夜、あの汚れたスラム街は――世界で最も安全で、美しい『聖域』へと生まれ変わります」



【次回へのシステムログ・スタンバイ中……】

【次の目標:テラフォーミング・ドローン群の全自動一斉展開、および一朝一夕での『超ハイテク要塞スローライフ都市』の完成】

 

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