第36話 【空飛ぶ聖女】大空を翔けるミリア。敵の猛攻を弾き、味方を癒やす奇跡
【現在位置:王都上空2500メートル】
【環境スキャン:超大型空導飛空艇【ガルガンチュア】、および機械化空導兵1200個体に包囲されています】
【当機の裏タスク:マスターの「大空のお散歩」の絶対安全確保。およびマスターたちの戦闘演武のフルサポート】
――ドォォォォォォォォンッ!!
王城の屋根を突き破り、音速を超えて大空へと飛び出したマスター(ミリア)たちは、王都の遥か上空でピタリと空間に静止した。
「う、うわぁぁぁぁぁっ!? 高い! すっごく高いよアハトさん! 王城が、街が小さく見えるーっ!?」
ミリアが当機の腕の中で、目をまん丸にしてパニックを起こしている。
「ご安心ください、マスター。当機の『対空大導光翼』の慣性制御および気圧調整フィールドにより、落下および風圧の危険性はゼロでございます。どうぞ、極上の空中散歩をお楽しみください」
当機は抱きかかえたミリアの頭を優しく撫で、後ろに浮遊する3人の様子を確認した。
「う、うおぉぉぉっ! 俺、いま空を飛んでる!? すげぇぇぇっ!」
「た、高いわね……! でも、全然怖くない……!?」
「……風、きもちいい」
ナノ光線ワイヤーで接続されたレオ、クロエ、ガイツの3人も、反重力フィールドの中で安定して空中浮遊を楽しんでいた。
***
一方、急に天井を突き破って空へ躍り出てきたミリアたちを目撃した敵軍――ガルアナ帝国の空中要塞は、大パニックに陥っていた。
『な……何だあのガキどもはぁぁぁっ!? 人間が道具もなしに空に浮かんでいるだと!??!』
巨艦【ガルガンチュア】の甲板に立つ帝国軍総司令官アルフォンスが、目玉を飛び出さんばかりにして叫んだ。
『ええい、何を恐れている! たかが子供4人とメイド一気だ! 全機械化空導兵、撃ち落とせぇぇぇっ!』
司令官の怒号と共に、空を覆い尽くしていた数百の機械化兵が一斉に襲いかかってきた!
さらに要塞の側面から、数千発の魔導砲撃と誘導魔法弾が、黒い雨のようにミリアたちへと放たれる!
「わわわっ!? アハトさん、なんか凄いいっぱい飛んでくるよーっ!?」
「マスター。慌てる必要はございません」
当機はミリアの耳元で、静かに囁いた。
「あちらの砲撃は、マスターの『ナノテクパーティードレス』の絶対防御性能を試験するための、ただの標的に過ぎません」
「えっ? 標的?」
「はい。どうぞ、迫り来る攻撃に向かって『やめてください』と、可憐に手をかざしてください」
「えっ、えーっと……『やめてくださいーっ!』」
ミリアが言われるがまま、小さな掌を襲いかかる魔導砲撃の大群へと向けた。
【マスターの音声入力を確認:『絶対防御フィールド(広域版)』を全開展開】
――カキィィィィィィィィンッッ!!!
ミリアの掌の前方数メートルに、神聖な白銀の幾何学障壁(対消滅バリア)が巨大な花が開くように展開された。
直後、王国の城郭を一瞬で粉砕するはずの数千発の砲撃と極大魔法が、バリアの表面に接触したコンマ一秒後に――
チュンッ! チュンッ! パチンッ!
まるで「線香花火の火花」のように、何一つ音を立てずに無力化・消滅していった。
「「「な……なにぃぃぃぃぃっ!??!」」」
帝国軍の兵士たちが叫ぶ。
「えっ!? あ、あたしの『やめて』で、みんな消えちゃった……!?」
ミリア自身も信じられないといった様子で、自分の小さな掌を見つめている。
「素晴らしい威力(防御力)でございます、マスター。次は皆様の出番でございます」
当機は後ろの3人へ、兵装補正信号を送信した。
「レオ様、ガイツ様、クロエ様。あちらの鉄の機械(敵兵)は、皆様の武器の運動テスト用に最適な硬度をしております。どうぞ、思う存分『お遊戯』なさってください」
「よっしゃあ! 空を飛びながら戦えるなんて最高だぜ! はああああっ!」
レオが『少し良い鉄の剣(超高周波ブレード)』を大きく一閃した。
【アシスト補正:剣圧を圧縮し、超高周波真空刃として射出】
――ズバァァァァァァァンッ!!
「ぶへぇぇぇっ!?」
空を裂いた真空の刃が、襲いかかってきた重装甲の機械化兵10機を一瞬で一刀両断にし、空中で大爆発を起こさせた!
「あたしも負けないわよ! 狙い撃つわ!」
クロエが『猟師の木弓(電磁加速レールガン)』の弦を引き絞り、一気に解き放つ。
――ピギュゥゥゥゥゥンッ!
光速の矢は敵兵のコア(動力炉)を正確に撃ち抜き、連鎖爆発を引き起こしていく。
「……お前ら、ミリアに近づくな」
ガイツが『古びた大盾(重力反射盾)』を構えて前へ出ると、突撃してきた敵の飛空艇を正面から受け止め、そのまま衝撃波で逆方向へ吹き飛ばした!
たった3人の子供たちによって、帝国の誇る精鋭空導兵団が、まるで「ハエ叩き」のように次々と空中で撃ち落とされていく。
「化け物だ……! あのガキどもは化け物だぁぁぁっ!」
帝国兵たちが恐怖に引きつり、逃げ惑い始めた。
【敵戦力の35%が無力化完了。マスターたちの戦闘満足度:極上】
「うわぁ、みんなすごいよ……! あっ……!」
無双する仲間たちを応援していたミリアだったが、ふと地上を見下ろし、その顔を曇らせた。
先ほどの王城の崩落や、帝国軍の事前砲撃によって、地上の王宮中庭には多数の近衛騎士や民衆が倒れ伏し、血を流して苦しんでいたのだ。
「あ……騎士のおじさんたちが……血を流して倒れてる……! 可哀想……っ!」
ミリアの瞳に、ポロポロと大粒の涙が浮かんだ。
【マスターの感情を検知:深い悲しみおよび同情】
【優先タスク変更:広域医療支援プロトコルを即時実行します】
当機は空間ストレージより、一本の美しい銀色の杖――『給仕用ナノマシン散布機(癒やしの銀杖)』を取り出し、ミリアの手へと握らせた。
「マスター。悲しむ必要はございません。こちらの杖を掲げ、『みんな、元気になって!』と優しくお祈りください」
「えっ……? これでおじさんたち、助かるの……?」
「ええ。マスターの慈悲深きお心が、奇跡を呼び起こします」
ミリアはキュッと涙を拭うと、大空の上から地上に向かって、全身全霊で銀杖を高く掲げた。
「みんな……痛いの痛いの、飛んでけぇぇぇぇぇっ!!」
ミリアの叫びと共に、銀杖の先端から、太陽をも凌駕するほど美しく暖かい「黄金と白銀の光の雨」が解き放たれた!
【高濃度医療用ナノマシン散布:広域展開】
パラパラパラ……と、天空から降り注ぐ光の粒子。
それが地上で倒れていた騎士や民衆の身体に触れた瞬間――
――ショワァァァァァァァ……!
「な……なに……!? 傷が……傷が消えていく……!?」
「え……!? 折れていた足が……一瞬で治っただと……!?」
骨折は数秒で接合され、深手の一撃は跡形もなく塞がり、失われた体力が溢れんばかりに満たされていく。
ただ傷が治るだけでなく、長年の疲労や病気までもが完全に浄化されていったのだ。
「あ……ああ……! 見ろ、空を……!」
血を流していた騎士たちが立ち上がり、感涙しながら天空を見上げた。
そこには、白銀の光の翼を背負うメイドに抱かれ、黄金の光を撒き散らしながら大空に佇む、あまりにも神々しい少女の姿があった。
「聖女様だ……! 天から降臨された、本物の『空飛ぶ聖女様』が……我らをお救いくださったのだぁぁぁっ!」
「聖女様ぁぁぁっ! 感謝いたします! 感謝いたしますぅぅぅっ!」
国王も、貴族も、騎士も、全民衆が涙を流して地上に膝をつき、空のミリアに向かって祈りを捧げ始めた。
【マスターの神格化プロセス:完了】
【王国家族および民衆からの信仰度:最大値を記録】
「ふえぇ……? みんな、私に向かって手を合わせてるよ……!?」
ミリアが顔を真っ赤にして照れ惑う。
しかし――その温かな奇跡の光景を、怨嗟の悲鳴で打ち破る者がいた。
『おのれ……おのれおのれおのれぇぇぇぇっ! 空飛ぶ小娘めぇぇぇっ!』
巨艦【ガルガンチュア】の甲板で、総司令官アルフォンスが般若のような顔で狂い叫んでいた。
『我が帝国の誇る空中要塞をバカにしおって! 全エネルギーを主砲【超極大空導破壊砲】へ全集中させろ! 王都ごと……あの生意気なガキを灰にして消し飛ばしてやるわぁぁぁっ!』
――ズズズズズズズズズンッッ!!!
要塞の巨大な中央砲門が赤黒い凶悪な光を帯び、空間を歪めるほどの圧倒的な破壊エネルギーがチャージされ始めた!
その余波だけで、王都の空が引き裂かれ、黒雲が渦を巻き始める。
「ひ、ひぃぃぃっ!? あの砲撃は危険だ! 王都全体が吹き飛ぶぞぉぉっ!」
地上の騎士たちが悲鳴を上げる。
【警報:超大型個体の主砲より、高エネルギー反応(都市全壊レベル)を検知】
【マスターの絶対安全、および快適なお食事環境を維持するため――】
当機は冷酷に目を細め、静かにログを流した。
【限定解除プロトコル:起動】
【マスター用・簡易兵装『ヴァルキリーモード・ライト』の展開承認を申請します】
「ミリア様。あのような不衛生な巨大ゴミは、ミリア様ご自身の手で『大掃除』してしまいましょう」
「えっ……!? わたしが……お掃除するの……!?」
【次回へのシステムログ・スタンバイ中……】
【次の目標:簡易武装『ヴァルキリーモード・ライト』の展開、および敵巨大戦艦の全自動一撃粉砕】




