第30話 【制圧完了】迷宮コアの接収。新たな別荘(ダンジョン)を手に入れました
【現在位置:古代の地下迷宮・第5階層(最深部)・コアの間】
【環境スキャン:高濃度マナ結晶体を検知。状態:管理者不在(アクセス権限オープン)】
【当機の裏タスク:迷宮コアのルート権限奪取、および当機メインフレームとの同期処理】
「えいっ」
マスター(ミリア)の小さな掌が、淡く発光する巨大な結晶――『迷宮コア』にそっと触れた。
――ピキィンッ!
その瞬間、コアを中心に空間全体へ青白い光の波紋が広がった。
【外部入力信号(マスターの生体認証)を確認】
【迷宮コアの管理者権限を『ミリア(マスター)』へ強制変更中……成功】
【続いて、当機の端末をサブ管理者として同期完了】
「わぁ……! アハトさん、なんか頭の中に、この迷宮の地図みたいなのが浮かんでくるよ!?」
ミリアが目を丸くして、驚きに声を上げる。
「はい、マスター。この地下室の全権限が、正式に貴方様へと譲渡されました」
当機は一歩前に出ると、結晶の表面に自らのマニピュレーター(手)をかざした。
【迷宮システムの再構築を開始】
【タスク1:全階層における有害生物(魔物)のリモートポップを永久停止】
【タスク2:全エリアの空調システムを『24時間自動換気・無菌化』にアップデート】
【タスク3:エネルギー生成機能を、当機の『非常用サブバッテリー』へリバースチャージ接続】
シュゥゥゥゥゥ……。
迷宮全体を包んでいた不快な湿気と悪臭、そして重苦しいマナの圧迫感が、一瞬にして霧散していく。
壁に立ち込めていたカビや汚れはナノマシンによって分子レベルで洗浄され、洞窟全体がほんのりと温かい、清潔で快適な空間へと変貌を遂げた。
「うわぁ……! なんだかここ、すっごく空気が美味しくなったよ!」
「おいおい、なんか壁のゴツゴツまで丸くなって、すごく歩きやすくなってないか!?」
レオが驚きながら、大理石のように滑らかになった石壁をペタペタと触る。
クロエとガイツも、「寒くないわ」「……ん。居心地いい」と、目を見張っていた。
「これにて、地下室の環境改善工事は完了いたしました。これより本施設は、マスターの『王都別荘・地下第1別館』として運用いたします」
「えっ!? べ、別荘!?」
ミリアが思わず金縛りに遭ったように固まる。
「ええ。ここならば、いつでも地上から『直通滑り台』で移動でき、外部からの侵入者も完全にシャットアウト可能です。スラムの幼少個体(テオ様たち)のお遊戯場や、夏場の避暑地として最適かと存じます」
当機は完璧な角度でお辞儀をした。
危険な古代迷宮をまるごと一つ私物化し、ただの「快適な秘密基地」へとハッキングしてしまったのだ。
【マスターの所有権確立および、絶対安全圏の拡張を認定】
【システム報酬:記憶セクター0x23のロックを解除します】
【新規機能:『ポータブル転送ゲート(ポータル)』がアンロックされました】
素晴らしい。
これで、いちいち歩いて街と迷宮を往復する必要すらなくなった。
我が家のリビングと、この迷宮の最深部をコンマ一秒で接続可能である。
「アハトさん、ほんとにすごすぎるよ……。あ、でも、そろそろギルドの人に報告しに帰らないとだよね?」
「お任せください、マスター。お帰りのルートは、当機が最も快適な方法をご案内いたします」
当機は空間をそっと撫で、先ほどアンロックされた『ポータブル転送ゲート』を起動した。
迷宮の出口(地上)へと繋がる美しい光の扉が、静かに空間に浮かび上がる。
「うわぁ、魔法の扉だ! 行こう、みんな!」
「おう! 早くみんなにお土産話をしなきゃな!」
子供たちは完全に「楽しい遠足」を終えた晴れやかな笑顔で、光の扉へと飛び込んでいった。
【第5階層・制圧完了】
【ミッションステータス:完全勝利(被害ゼロ、マスターの満足度:極上)】
当機は最後に、完全に沈黙し『快適な別荘の核』となった迷宮コアを一瞥し、静かに転送ゲートへと足を踏み入れた。
この時の当機は、まだ知る由もなかった。
「浅層の調査」を依頼したはずのFランクパーティが、わずか一泊二日で『迷宮の異常マナとボスを完全消滅させて帰ってきた』という事実が、王都のギルドと国家中枢にどれほどの天地開闢レベルの衝撃を与えるかということを。
【次回へのシステムログ・スタンバイ中……】
【次の目標:冒険者ギルドへの帰還、およびギルドマスターの失神(三度目)と王都上層部のパニック発生】




