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リティの変化

 村の大人から教えてもらったことも多いが、シンリン様からの勉強は、質が違った。内容は深く、様々な観点から教えてくれる。

 魔法に関しては一人で森へ行き、シンリン様に教えてもらう。


「我は風魔法が得意でな。だからこそ、我の愛し子であるそなたは、風魔法の一つ、風の刃も簡単に扱えたのだ。相手が偶然、風魔法への抵抗力が弱かったのも幸いだったな」


 ここでおじいちゃんの本にも記されていないことを、尋ねてみる。


「魔物はどうして現れるの? 村に魔物が現れたのは、村長が子どもの頃が最後だって聞いているよ。だからこの前、この辺りで魔物が出たのって、何十年ぶりだと思う。なんで急に現れたのかな?」

「神の世界にも色々あってな。そもそも世界というのは、一つではない。我々は他の世界の神々と交流することがある。その際、人間と同じで相性が合う、合わないがあり、不仲だと喧嘩に発展する。その延長で、刺客を送ることがあるのだ。嫌がらせで、我らの愛し子たちを傷つけるために」


 意外な理由だった。かなり俗な理由だし、人間には関係ないのに、巻きこまないでほしい。こちらは生死が関わるのに。人の命を軽んじる神様たちへ苛立ち、その不満のはけ口として、石を蹴飛ばす。


「逆に我々が他の世界に干渉することもあるが」

「なんなの、それ。どっちもどっち。そういうことをするから、争いはなくならないって、おばあちゃんが言っていたよ」

「おお、耳が痛い。そうだな、メールの言うことが正しい。だが、我々にも感情というものがある。神と呼ばれても、万能ではない。我々より上位の存在もいるしな」

「神様の神様ってこと?」


 ややこしいことを言われる。世界が複数ある話は有名だけれど、神様よりも上の存在って、なんて呼んだら良いのかな。神様の神様としか浮かばない。


「そんなものだが、そなたには関係のない話だ。知識として知っておくだけで良い。それよりもっと村から離れるぞ。魔法を見られてはまずいからな」


 森には他の村人もよく入る。だからわざと遠くまで行き、人気のない場所で魔法の練習をすることに決まった。


「先ほども伝えたが、我は最も風魔法を得意としておるので、そなたの得意な魔法でもある。また、水魔法と雷魔法も、風魔法に比べると劣るが、得意であるぞ。逆に火や土は駄目だな。火魔法で攻撃された場合は、それを上回る他の魔法で迎え撃つしかない」


 魔法は人により、得意、不得意があると書かれていたのは、自分の血筋に関する神様の影響があると知る。


「他国の王族同士が結婚し、子どもが産まれたとしよう。その子は両方の家系の得意とする魔法を取得することもあるが、(まれ)だ。火と水のように、どうしても相性が悪い魔法があるからな。とりあえずそなたは、火魔法を極めることは諦めろ。ただ、全く使えない訳ではない。火打石を使わずとも、火種を作るとかはできるぞ」

「本当?」


 それは便利になるので、助かる。

 魔法が使えない村人ばかりなので、火を起こすことは村で生きるのに、絶対取得しなければならない。だから真っ先に、火打石の使い方を教わった。


 火魔法を習得するのには、かなりの日数を要した。逆に水や雷魔法の習得は早かった。でも火種を作れるようになっても、コツを忘れないように、火打石を使うことが多い。村の人の目があるので、魔法に頼り、上手く火を起こせなくなると困るから。

 でも特に得意な風魔法を使い、初めて空を飛べた時は楽しいと思った。体がふわふわと浮かび、不思議な感覚。浮かんでいるのに、体は固定されている。それなのに風を感じ、気持ち良い。


「あはは、これ、面白い。気持ち良いよ~」

「あまり高く飛ぶなよ、人に見つかっては厄介だ。あと、笑い方! もっと上品にせよ」

「分かった、シンリン様」


 勉強を教えてもらう中で、『あたし』ではなく、『私』と言えと、口をすっぱくされた。


「品性も身につけろ。なにしろお前は、ラウンデス、最後の生き残りだからな。リーヴァーが攻めてこなければ、言葉遣いも指導されていたからな。だが、この村でそれを使うと……。違和感しかないな。仕方ない、使い分けることを覚えろ。権力者は演技力も必要だからな」


 シンリン様は、丁寧な喋り方も教えてくれた。学習は多岐に渡り辛い時もあったが、おばあちゃんに言われた、知識は武器になる。これを信じ、いつかどこかで活かせるからと頑張った。



◇◇◇◇◇



「シーちゃんがいるからかしらね。最近、ママに再会したらと、あの子、言わなくなったわね」


 シンリン様と呼ぶ訳にはいかないので、私は皆の前で『シーちゃん』と呼んでいた。

 ママが帰ってこない現実を受け入れ、諦めたことから、ママに会いたいと言わなくなった。そのことに一部の人は、やっと現実を受け入れたのだろうと言っていたが、村長夫婦は、逆に心配していた。


「うむ……。シーちゃんにより、少しは心が安定していると思いたいが……。フェーアも酷いことをするものだ。あんな紙切れ一枚で、我が子を捨て去るとは」

「王都でなにがあったのでしょうね。戦争が起きたことと、関係しているのかしら。リティの父親は、戦死したとか? 愛した男性を亡くし、フェーアは変わったのかしら」


 村を出て王都へ働きに出る前まで、フェーアは素直で優しい娘だった。そのことを知っている村長夫婦は、フェーアが子を捨てるとは信じられなかった。

 だが置手紙がある。筆跡は間違いなく、フェーアのもの。だから、リティを捨てたと認めるしかない。

 都会で変わってしまったのだろうと、いつも同じ結論になっていた。


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