《ルーク、新たな剣》
「くそっ!」
ルークが剣を構え直す。レイピアの刀身に亀裂が走っていた。細く深く、刀身の芯まで達している。
「ルーク、剣が!」
アリエルが叫ぶ。
「わかってる!だが、まだ戦える!」
ルークが《雷剣》を発動する。雷が刀身を走るが、亀裂から火花が散り、制御が乱れた。
「ダメにゃ!そのまま使ったら折れるにゃ!」
ミーニャが土魔法で壁を作り、敵の攻撃を防ぐ。
「ルーク、下がって!僕が前に出る!」
レアが前に飛び出し、《零・改》で敵を薙ぎ払う。
数分後、戦闘は終わった。
ルークは剣を鞘に収めながら、苦い表情を浮かべる。
「この剣も、限界か」
「王家の剣、なんだよね?」
レアが尋ねる。
「ああ。エル=クロス王家に代々伝わる剣だ。俺が王宮を出る時、唯一持ち出した王族の証でもある」
ルークが剣の柄を撫でる。柄には精緻な紋章が刻まれている。雷を象った、王家の紋章。
「何度も戦ってきた。もう、限界なんだろう」
「そっか」
レアが少し寂しそうに頷く。
「じゃあ、親父に見てもらおう。もしかしたら、修理できるかもしれない」
「ああ、頼む」
ラスティアの街。イヅナの鍛冶場に、クロス零が集まっていた。
「見せてみろ」
イヅナがルークの剣を受け取り、じっくりと観察する。刀身を光にかざし、柄を握り、重心を確かめる。そして小さく息を吐いた。
「ダメだ」
「え」
ルークの顔が曇る。
「この剣は限界を超えている。刀身の芯まで亀裂が走ってる。下手に雷魔法を流したら、戦闘中に砕け散るぞ」
「そんな」
「修理は無理なんですか?」
アリエルがおずおずと尋ねる。
「無理だ。この剣の素材は特殊でな。俺の技術じゃ、同じ素材を再現できない」
イヅナが剣を返す。
「この剣は、お前が戦ってきた証だ。無理に延命させるより、ちゃんと看取ってやるべきだ」
ルークが黙り込む。剣を見つめ、紋章に指を這わせ、静かに頷いた。
「わかった。ありがとう」
「おう」
イヅナが頷き、鍛冶場の奥へ歩いていく。
「待ってろ」
「え?」
数分後。イヅナが戻ってきた。手には布に包まれた何かを持っている。
「これを使え」
布が解かれる。そこにあったのは細剣。レイピア。刀身は銀色に輝き、柄は黒く、シンプルで、圧倒的な存在感を放っていた。
「これは」
「ナンバーズシリーズのNo.1、《ファーストライト》だ」
イヅナが剣をルークに差し出す。
「レアと俺が、一番最初に完成させたナンバーズだ。雷魔法との相性は最高だ。お前に使ってもらうには、ちょうどいい」
「でも俺は」
ルークが躊躇する。
「俺は王族だ。王家の剣を失って、別の剣を使うなんて」
「バカ言うな」
イヅナがぴしゃりと言う。
「剣は道具だ。使う者が強ければ、どんな剣だって輝く。逆に、使う者が弱ければ、どんな名剣もただの鉄屑だ」
「それに」
イヅナがルークの剣を手に取り、柄の紋章を指でなぞる。
「この紋章、惜しいだろ?」
「え」
「待ってろ」
イヅナが再び鍛冶場の奥へ消える。金槌の音。火花の音。魔力が集中する音。
三十分後。イヅナが戻ってきた。
手には《ファーストライト》。
そして、その柄には雷を象った王家の紋章が、埋め込まれていた。
「!」
ルークの目が見開かれる。
「王家の剣から、紋章を取り外して《ファーストライト》にくっつけた。
これなら、お前の王族としての誇りも、新しい剣と一緒に持っていけるだろ」
「受け取れ。お前はもう、クロス零の一員だ。レアたちと同じ、ナンバーズを使う資格がある」
イヅナが《ファーストライト》をルークに差し出す。ルークは震える手で剣を受け取った。
「ありがとうございます」
「おう。大事に使えよ」




