《裏切りの騎士》
ラスティアの夜。
港の風が静かに吹いていた。
レアは空を見上げる。
「なんか……嫌な感じする」
認知加速が働いていた。
空気の流れが不自然。
屋根の上。
路地。
複数の気配。
ミーニャの耳がピクリと動く。
「来るにゃ」
次の瞬間――
ザッ!
黒い影が降り立った。
フードを被った男たち。
武器を構える。
「見つけたぞ」
低い声。
「エル=クロスの王子」
ルークが静かに細剣を抜いた。
雷が刃に走る。
「……追手か」
レアが拳を構える。
ガントレット《零》が光る。
「ルークを狙ってるんだね」
刺客の一人が笑う。
「王国の遺産はいただく」
「王子の命もな」
ミーニャが槍を回す。
《ツインヘリックス》。
「返り討ちにするにゃ」
戦いが始まろうとしたその時。
足音がした。
コツ…コツ…
ゆっくり歩いてくる男。
月明かりが顔を照らす。
ルークの目が見開かれた。
「……お前は」
男はフードを外す。
鋭い目の騎士。
黒いマント。
ルークが低くつぶやく。
「ガルディア……」
レアが聞く。
「知り合い?」
ルークの声は重かった。
「エル=クロス王国騎士団」
「俺の……家臣だった男だ」
空気が凍る。
ミーニャが驚く。
「裏切りにゃ!?」
ガルディアは静かに笑った。
「裏切り?」
「違う」
彼は剣を抜く。
「俺は王国を救う」
ルークが怒る。
「王国はもうない!」
ガルディアは首を振る。
「ある」
「遺産が残っている」
彼の目が狂気に光る。
「雷魔導具」
「それがあれば王国は復活する」
レアが言う。
「だからルークを狙うの?」
ガルディアは答えた。
「王子の血は鍵だ」
「王家の魔力がなければ遺産は動かない」
ルークが剣を構える。
「だから俺を捕まえる?」
「違う」
ガルディアは言った。
「必要なのは血だけだ」
その言葉に空気が凍る。
レアが怒鳴る。
「最低だ!」
ガルディアは冷たい目を向ける。
「子供がでしゃばるな!」
そして手を上げた。
「やれ」
刺客たちが一斉に動く。
「クロス零!」
レアが叫ぶ。
「戦闘開始!」
ミーニャが地面を蹴る。
土魔法。
地面が盛り上がる。
敵の足を止める。
「いくにゃ!」
槍が回る。
二人を吹き飛ばす。
アリエルが杖を掲げる。
「エナジーシールド!」
光の壁。
敵の攻撃を防ぐ。
そして――
ルークが前へ出た。
雷剣。
バチバチと光る。
「ガルディア!」
ガルディアも剣を構える。
「見せてみろ」
「王子」
「王の力を」
二人の剣がぶつかる。
キィィン!!
火花。
雷。
激しい衝突。
レアが走る。
「ルーク!」
ガントレットが光る。
雷拳。
ガルディアは笑った。
「遅い」
剣が動く。
レアの拳を弾いた。
レアが驚く。
「強い……!」
ルークが言う。
「元騎士団長だ」
ミーニャが叫ぶ。
「化け物にゃ!」
ガルディアは剣を構え直す。
「王子」
「お前は弱い」
「だから王国は滅びた」
ルークの目が光る。
怒り。
雷が剣を包む。
「黙れ」
レアも拳を握る。
雷が走る。
ルークの雷。
レアの雷。
二つの力が共鳴した。
バチバチバチ!!
ガルディアの目が細くなる。
「ほう……」
雷が暴れる。
「それが王の雷か」
「違うよ」
レアが拳を構える。
「クロス零の雷だ!」
雷が夜空を裂いた。
レアの拳とルークの剣。
二つの雷が重なり、激しい閃光が走る。
ガルディアの目が細くなる。
「……面白い」
だが次の瞬間。
キィン!!
ガルディアの剣が二人の攻撃を弾いた。
レアが驚く。
「うそ……!」
ルークも歯を食いしばる。
「やはり強い……!」
ガルディアは静かに構え直した。
「王子」
「お前の雷は未熟だ」
その瞬間。
ミーニャが飛び込んだ。
「後ろにゃ!」
《ツインヘリックス》が回転する。
渦巻く刃。
ガルディアは素早く後退する。
しかし――
足元の地面が盛り上がった。
土魔法。
ミーニャの罠。
「捕まえたにゃ!」
ルークが叫ぶ。
「レア!」
レアはすでに動いていた。
認知加速。
世界が遅くなる。
ガルディアの剣。
動き。
呼吸。
すべてが見える。
レアは拳を握る。
ガントレット《零・改》が強く光る。
「いくよ!」
雷が集まる。
バチバチバチ!!
「《雷迅拳・ゼロストライク》!!」
雷拳が炸裂した。
ガルディアの剣と衝突する。
ドォン!!
衝撃波。
地面が割れる。
煙が上がる。
しばらく沈黙。
やがて煙が晴れる。
そこに立っていたのは――
ガルディア。
だが鎧が砕けていた。
彼は笑う。
「……見事だ」
ルークが剣を向ける。
「降伏しろ」
ガルディアは首を振った。
「それはできない」
彼はポケットから黒い石を取り出す。
「王国の遺産は必ず手に入れる」
次の瞬間。
石が砕ける。
バシュッ!!
黒い煙が広がる。
レアが叫ぶ。
「逃げる気!?」
煙が晴れた時。
ガルディアの姿は消えていた。
静寂。
ミーニャが槍を下ろす。
「逃げられたにゃ」
アリエルがため息をつく。
「でも……助かりました」
ルークは剣をしまう。
そして静かに言う。
「これで確定だ」
レアが聞く。
「何が?」
ルークは空を見る。
「王国の遺産を狙う者が動いている」
レアが拳を握る。
「なら決まりだね」
「クロス零の出番だ!」
ミーニャが尻尾を振る。
「面白くなってきたにゃ!」
アリエルも頷く。
「私たちなら大丈夫です」
ルークは小さく笑った。
「……ああ」
「頼りにしている」
夜空に雷が走る。
エル=クロス王国の真実。
それを巡る戦いは、
まだ始まったばかりだった。




