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傷心令嬢の鬼ごっこ  作者: 夕鈴
第二章

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第15話 成果

徐々に診療所を頼りにする民が増えはじめた。

呪術への良い印象を持つ民が増えてきた。

ただ呪術が利用できると知ると悪用しようとする者も現れる。

イリアナは、呪術師の保護のための組織が必要だと考えた。

ただ呪術師だけが危険ではない。今後、神殿の管理ではなく国の管理になる予定の魔導士の保護も必要である。


ただレオナルドとイリアナの考えは違った。

イリアナは魔導士と呪術師の学びと保護の場を作りたかった。その後、どう生きるかは自由であってほしかった。

ただレオナルドは将来は国所属となり国の力になるという条件をつけた。

魔導士や呪術師の価値を高めても縛られるのはイリアナは嫌だった。特に子供のころにその選択をさせるのは避けたかった。


ライヤやサーラはレオナルドに仕えているわけではない。

ただ善意でイリアナに協力してくれているだけである。

ジオラルドは、レオナルドの意見に賛成だった。


イリアナは悩んでいた。

魔力を持つ子供を救うために呪術師を犠牲にできない。

イリアナはセインを頼ることにした。

セインはイリアナが甘いことは知っていた。でも国には甘い人間も必要だった。セインはイリアナに提案した。

セインの提案をイリアナは受けることにした。


魔法と呪術を初級と中級にレベル分けした。

初級は基本。魔導士なら自身の魔力をコントロールして暴走させないこと。呪術は遊び程度の呪い。利用価値の少ないものばかりである。人に大きく影響を与えるものは初級では教えない。主に自己防衛のためのものだけである。


中級以上を極めたい場合は国に仕えることを制約させる。そのかわり、目指そうとした時点で国から給金がもらえる。皆伝になり試験に受かれば、国から高給とりの魔導士と呪術師の席が用意されることになった。


魔封じを解呪された魔導士と呪術師はレオナルドの直属部隊としてレオナルドの保護下に入ることになった。

レオナルドの直属は地位の高さを証明される。レオナルドの庇護にある者に手を出せば重罪である。


呪術師と魔導士をまとめる総帥の地位にはセインがついた。イリアナには荷が重いとの判断だった。

イリアナは実働部隊の班長だった。残念ながら今の段階では所属しているのはイリアナとアドニスだけである。神殿出身のイリアナの魔導士はいつの間にかセインの臣下になっていた。


「イリアナ様、ライヤを所属させませんか?」

「ライヤが望んでないもの」

「でも呪術師が誰も所属しないのは」

「私に呪術が使えれば」

「できないことを言わないで下さい」

「ラーナの騎士達に入隊を希望されても仕方がないわ。ライヤが育ててくれる子達に期待するしかないわ」


ライヤが教えている子供が成長するのを待つか、いずれ村から迎え入れる呪術師に期待するしか道はなかった。

  

他国から来たセインが新しい役職につくことに不満はでなかった。危険な魔導士と呪術師に自ら関わりたい貴族などいなかった。


ただイリアナはセインが総帥についたため、自由に動けなくなった。第一騎士団長とレオナルドの下にいたほうがいいと思う時がくるなんて思いもしなかった。

イリアナは定期的に報告書を持ってセインのもとを訪ねた。報告書を見せるたびにセインのお説教が待っていた。


「リア!説明しろ。報告書に書いてないことあるよな」

「書き忘れただけです。なんで知ってるんですか。こっそり偵察するのやめてください」

「次、同じことすればジオとアルに言うからな」

「やめてください。ちゃんと邪魔してきた魔導士は穏便に説得してお帰りいただきました。報告書書き直します。アド、手伝って」

「ちゃんと俺は止めましたよ」



セインとイリアナの努力の末、呪術師をむかえ入れる準備が整った。ザビ王国では呪術師と魔導士の地位が向上した。

ただ、勘違いして礼儀をわきまえない魔導士にはイリアナ達の教育的指導が入った。

イリアナとセインはレオナルド殿下直属魔導士の証を授かった。今のところ直属魔導士はセインとイリアナだけである。

見目麗しいイリアナとセインが魔法を使って活躍することは、魔導士のイメージアップになり、陰険な魔導士のイメージが払拭された。


またライヤとサーラという麗しの呪術師も受けが良かった。

イリアナは容姿に優れない呪術師もいることを知っていた。

村の呪術師を招きいれたら、違う意味での誹謗中傷をうけないように気を引き締めようと決めたのはイリアナの秘密である。


「ライヤ、お面被って活動しない?」

「イリア?」

「ごめん。冗談です。ライヤの顔を隠したらご婦人達から苦情がきます」

「イリア、休んできなよ」


ライヤはイリアナが突然変なことを言うことには慣れていた。

細かいことは気にしないのがライヤの長所だった。



約束の一年がたち、イリアナはレオナルドとライヤとサーラを連れて呪術師の村に向かった。

村長との話し合いで、希望する者だけザビ王国に移住することになった。村長はイリアナの呪いを消そうとしたのをイリアナは断った。自分が呪いを受けていることで、呪術師の不安を解消できると思っていた。移住する呪術師に彼らを守りきれなかったら、自分は命を差し出す覚悟があるから呪術師として誇りを持って役目を果たしてほしいと演説した。

呪術師は村の半分が移住を希望していた。若い呪術師が多く、過半数はライヤやサーラのファンであることをイリアナは知らなかった。鈍いライヤは自分へのアプローチに全く気づかない。ただライヤのために働く呪術師が多く統制しやすいことは救いだった。


サーラは意図的に自分のファンを働かせていた。自分のファンに仕事をさせ、空いた時間でアマルの手伝いをしていた。アマルはサーラが働くとイリアナが楽になるので、サーラを頼りにしていた。大事な相手のために周りを利用するところがそっくりな二人だった。


呪術師達の働きに満足していたイリアナは裏にある思惑なんて気づかなかった。志の高い呪術師に感動していたイリアナに、アドニスは事実を話さなかった。


特別任務が一段落したので、イリアナとジオラルドの婚姻が発表された。

恩赦として魔力持ちは魔封じを受ければ罪に問わないことが公言された。

呪術師達は魔封じの呪いに駆り出された。ただ罪人を許すということに不満も多かった。

イリアナはジオラルドと婚姻の儀式や披露宴をすませたるとドレスから騎士の制服に着替えていた。


「リア、本気?」

「ジオ、ごめん。愚かな人達を黙らせてくる。できるだけ早く帰るから。今日はゆっくり休んで。アド、行こう」


飛び出していくイリアナをジオラルドは見送った。

その夜、イリアナは帰ってこなかった。

イリアナの予想以上に不満は多く、休みの騎士達も協力を申し出てくれたことにイリアナは感動した。

不満への対応はイリアナが動くつもりだったが人手が足りなかった。


ジオラルドは1週間の休みを一人で過ごすのも寂しかったため翌日からイリアナの後についていった。

イリアナと過ごすためには、罪人の魔封じを終わらせないといけなかった。

投獄されていたことに不満を言っていた罪人達はイリアナの後で睨んでいるジオラルドが怖くて、大人しくなった。

イリアナは罪人達に誠心誠意対応していたため時間がかかっていた。


結婚しても休みもせずに、魔力持ちの救済にあたっていた未来のマナ侯爵夫妻の人気が上がり、二人が仕えるレオナルドの人気も共にあがった。レオナルドは未来の賢王から未来の慈悲深い賢王と言われるようになった。

レオナルドは忠臣達の人気と働きに満足して微笑んだ。

レオナルドは歴史に名を刻む名君となった。

魔法に呪術の研究が進み、軍事力も向上したザビ王国に手を出せる国などなくなった。


城下でレオナルドの話を聞いたイリアナは言葉が出なかった。


「殿下、レオ様は慈悲深い賢王になるって言われてるんです。この国の民は平気なんでしょうか?」

「リアはどう思ってんの?」

「性悪王子」

「それはよそでは言うなよ」

「言いません。ただあまりの言いようだったので。レオ様に笑顔で声をかけられる時ってろくな事がありません」

「またやらかしたの?」

「ジオ、違います。今回は私は悪くありません。」


イリアナは第二王子の下で一緒に過ごす時間が一番憩いの時間だった。

イリアナはレオナルドの無茶振りに答えながら慌ただしく日々を過ごすことはかわらなかった。


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