第7話前編 旅
イリアナはアマルの修行をしながらいくつかの国をまわっていた。
他国の軍事事情はアドニスに任せ、イリアナは魔法について調べていた。
イリアナには目的と関係なく行きたい場所があった。
イリアナが殺した女性魔道士の村だった。
村に入ると村人達に暴力を受けている魔道士を見つけた。
「何してるんですか!?」
「邪魔するな」
アドニスが殺気を向けると村人達は固まった。
イリアナは怪我をしている魔道士に治癒魔法をかけた。
「お前も魔道士か!?。」
「それが何か?」
「身の程を教えてやるよ」
イリアナを蔑んだ目で見た村人に睨み返した。
「事情はわかりません。でも謂れのない暴力を受けてることはわかりました。」
「やめて、逆らったらいけない」
「安心してください。性根叩きのめしてあげます」
イリアナは止める魔道士を無視して村人達に剣を向けた。
「お前、魔道士じゃ・・」
「先に仕掛けたのは貴方達。」
村人達はイリアナとアドニスの殺気に怯えて逃げていった。
「どうしよう。これから」
怯える魔道士にイリアナは話を聞くことにした。
魔道士の話を聞いて、魔道士を人と思わない村人達に唖然とした。
「アド、私、村長の家に行ってくるわ」
「落ち着いてください。目的を間違えないでください。ここで問題を起こせは、これ以上の旅は続けられなくなります。それに…」
村人達を相手にするな、目的を果たせなくなるとアドニスに宥められイリアナは怒りを抑えた。
転移魔法の使い手でどこから見ているかわからないレオナルドの機嫌を損ねればイリアナの旅は終わりである。
他国で問題を起こせばセインが追いかけて強制送還される可能性もある。
イリアナは村長に物理で話をつけに行くのはやめて、魔道士には手紙を持たせ、ザビ王国かシュナイダー王国への亡命を勧めることにした。
イリアナ・ラーナの名前を出せばどちらの国も受け入れてくれるはずである。
他国の問題に口は挟めないので、それが不当な扱いを受ける魔道士へ今のイリアナにできる唯一のことだった。
その後会った魔道士にもイリアナは亡命を勧めることにした。
魔道士がいなくなり、村人が困っても自業自得である。
イリアナは殺した魔道士の魔力を探りながら歩き進めると森についた。
イリアナは幻影魔法がかけられた祠に辿り着いた。
あの人はきっとここに家族を埋葬した。
イリアナは隠れて魔道士の遺髪を切って懐に隠していた。
そのことはジオラルドとイリアナしか知らない。
イリアナの報告を聞き遺体は兵が回収した。
そのあと、どうなったかイリアナにはわからない。ただ罪人である魔道士が故郷に返して貰えることはないと思っていた。
イリアナは祠の下に穴を彫り魔道士の髪を埋め祈った。
どうか家族と会えますように。
彼女のしたことは許されない。
でも彼女を追い込んだのは国。
魔法は悪いものじゃない。善にも悪にもなる。
大事なものを奪われて狂う気持ちはイリアナにはよくわかった。
義務も責任なく、一人ぼっちだったら彼女はイリアナだったかもしれない。
復讐のためなら、国を滅ぼしたかもしれない。
イリアナは魔道士を殺したことは後悔していなかった。
昔はイリアナも誰かに自分を殺してほしいと思っていたから。殿下と二人で眠れる死という幸せが訪れるのを待っていたから。
でもイリアナは生きると決めた。
だから彼女のような悲劇をもう起こさないように、魔力があっても自由に大事な人と離れずに過ごせる場所がほしいと思った。
彼女の命を奪ったかわりに、それを成し遂げたいとも思っていた。
彼女は方法は間違えた。でもきっと作りたいと思っていた場所は同じだと思うから。
祈りをささげおえ、祠を後にしたイリアナ達は不思議な占い師に出会った。
アドニス達は自分を大魔道師と名乗る占い師を警戒していたが、イリアナは信じることにした。
「イリア、本気なの?」
「うん。この方は凄腕の魔道士なのは間違いない。この感覚は魔道士にしかわからないわ。それに危害を加えるならもう術にかけるはずよ。」
「アマル、諦めろ。イリアナ様を見守りながら、術が完成するまでに、切り落とす準備だけしておけ。魔道士との戦いは速さが勝負だ」
「手は出させないので、教えてください。斬られても私が治しますのでご安心ください」
ローブを被った小柄な占い師が笑った。
「不思議な娘だね。そなたが求めるものは?」
「魔封じや無効化の魔法を破る方法です」
「命ではなく?そなた」
占い師の言葉をイリアナは遮った。
代償に払った自分の命が人より短いことはアマル達には知られたくなかった。
「知っています。後悔は残したくないんです。それは私にとって大切なことではありません。」
「ほぉ。他人に捧げて朽ちると」
「自己満足です。私は誰かのために生きたことなどありません。それに魔道士ならわかるでしょ?」
自分の魔法が不完成だった謎を解きたいことを。
代償に予想外のものを奪われた屈辱も。
アルの時は諦めた。治癒魔法にも限界があるって思い込んだ。
でも禁呪でも方法はちゃんとあったから。だから私はジオの腕のことは諦めないって決めたから。
「わからないね。」
「残念です。私の知りたいことを教えてくれますか?」
「それなら・・・」
急ぐ旅でもなかったので占い師のお告げの通りの方角に進むことにした。
半信半疑で二日間歩き続けると小さな集落を見つけた。




