第4話 誕生日
イリアナはアドニスが単独任務から帰って来たと聞いて会いに行った。
イリアナ達が出兵から帰ってきてアドニスに会うのは初めてである。
アド、レオ様にいいように使われてる・・。
私のアドは優秀だから仕方ないかな。
イリアナの顔を見たアドニスは安心した顔をした。
昔、お父様に山に放り込まれて帰ってきたときもこんな顔してたな。
うん。たぶん心配かけてたんだろな。今更だけど、アドが出兵についてこなかったのは意外かも。
「イリアナ様、おかえりなさい」
おかえりは私のセリフなんだけど・・。
「ただいま。心配かけたわ」
「今更です。決めましたか」
「ええ。ちゃんと生きる。落ちる時はアドも連れていく。」
アドの忠誠を貰った時に決めた覚悟を思い出す。
殿下が亡くなって見たくなかった現実も未来もこれからは見るって決めたから。
「どこまでもお供します。おかえりなさい。我が主。」
「これからもよろしくね。貴方の忠誠に恥じない主であるよう努力するわ」
「リックたちの羨ましがる顔が目に浮かぶ。」
「相変わらず仲が悪いわね。」
「なにを今更。折れたんですか?」
後にいるジオラルドにアドニスが初めて視線をむけた。
イリアナは笑顔で答えた。
「保留」
「保留!?」
二人はジオラルドの驚いた声など気にしなかった。
婚約式を終えたイリアナには思う所があった。マナ侯爵夫人になることは不安でいっぱいだった。
「イリアナ様、誰を選ぼうと護衛騎士長は俺ですから」
「期待してる。」
イリアナがアドニスの強気な顔に微笑んだ。
アドは私を絶対に裏切らない。騎士として私の一番の味方で忠臣。
だから本当は私の命令に逆らって追いかけてきたことは驚いた。
でも誰よりも心強い味方がきてくれたのはありがたい。
イリアナがセインやアベルトに抱く信頼とは違う。アドニスだけはイリアナにとって守らなくていい相棒である。アドニスはイリアナの絶対的な信頼を勝ち取っている自覚はある。リック達がアドニスを羨望する理由である。
勤務時間になるのでイリアナ達はアドニスと別れ小隊長室に向かった。
出兵に出かけたため滞った業務が溜まっていた。
言いたいことがありそうなジオの視線は無視。
今日こそは書類を片付けないと。最近はちゃんとした書類が提出されるようになった。私の努力の成果かな。
うん?嘆願書?
親睦会を開きたい。日付の希望まで。勝手に開けばいいんじゃ、ジオに参加してほしいのか。
ジオは催し物に参加しない。
リックとイワンと私の3人で街の詰め所任務をこなして、他の皆で盛り上がればいいか。
これは昼休みに話せばいいや。
次は、また嘆願書?私への呼び出し?
手合わせなら直接声をかけれくれればいいのに。嘆願書が多いな。
うん。いい加減にして。
書類の山に嘆願書を混ぜないでほしい。集中力が途切れる。
今は訓練場に集まってるかな。
締めてこよう。紛らわしいことはやめさせないと。
突然立ち上がったイリアナにジオラルドが視線をむけた。
「出てきます。マナ小隊長はこちらで進めてもらって結構です」
「今日は書類を片付ける予定だよな」
「公私混同してる騎士達を落としてきます」
「は?」
イリアナは書類に混ざった嘆願書を何枚かジオラルドに渡した。
イリアナは書類を読んでいるジオラルドの顔になぜか寒気がした。
「俺がいくよ。」
「え?いや、私、行ってきます。マナ小隊長の手を患わせるほどでもありません」
「いい。俺がやる。ついでに、しごいてくる。」
「え?体を動かしたいなら止めませんが、うん。わかりました。しっかり言い聞かせてください。」
「任せろ」
いい笑顔で頷き出ていったけど、そんなに書類仕事嫌だったのかな。
代わりにやってあげられないし。小隊長になる気はない。
面倒ごとが多すぎる。
手を動かさないと。これ、本気で頑張らないと終わらない。
出ていったジオラルドは気にせず手を動していると目の前の書類を取り上げられた。
「なんですか?」
「昼休み。」
イリアナは書類を片付けてお弁当を出し食事をはじめた。ジオラルドはイリアナが食事を抜いて仕事をすることを許さないのは身をもって知っていた。最近はジオラルドも食事は小隊長室で食べていた。
「ジオ、たまには食堂に行ったら?」
「なんで?」
「ジオと親睦を深めたい騎士達が多いみたいよ。親睦会のお願いもあるし。私達が街の仕事を引き受けるから、開いてあげれば?」
「俺の休みはリアと過ごすって決めてるから」
「将来、団長を目指すんなら親睦を深めるのも必要でしょ?」
「たぶん、あいつらは俺じゃなくて、いや、いいや。場所と金だけだせばいいか」
「そうゆうずるいことだけ覚えて」
「貴族らしいだろ?俺はこの日取りに悪意さえ感じるよ」
「なんで?」
「親睦会は用意して最初だけ顔を出すよ。だからその後、俺と過ごして」
「うちに来るってこと?」
「いや、二人で過ごしたい。駄目?」
「親睦会から抜け出せずに待ちぼうけなんて嫌」
「ありえない。」
「私、この日はリック達と街の勤務に出勤するけど」
「仕事を終わるの待ってるよ。」
親睦会の日の業務を終えてたイリアナは着替えをすませて待ち合わせにむかった。
今は女子更衣室を使ってもイリアナに嫌がらせをする人物はいなかった。イリアナをよく思わない人物も嫌がらせはしなくなった。アドニスやジオラルドが制裁をしている事実をイリアナだけは知らなかった。
ジオラルドと合流し二人で食事をするが、ジオラルドの物言いたげな視線に首を傾げるイリアナだった。
その後は、第二王子殿下に会いにいった。
イリアナはジオラルドに手を引かれて、第二王子殿下のそばに座った。
「リア、17歳おめでとう」
誕生日!?。
「アルのお祝いしてない!!」
「忘れてると思ってた。」
アベルトは母親を迎えにシュナイダー王国に一旦帰国した。
屋敷も用意し亡命の準備も整えおえた。
イリアナは本当に皆で亡命するとは思っていなかった。アベルトには敵わないので好きにさせることにした。
亡命してきたラーナ家の騎士達は騎士団に入隊した。
おかげで騎士団の能力は一気に上がった。
受け入れたレオ様に驚いた。
私がレオ様に従う限りは問題ないと判断されたのかな。
15歳は殿下とアルとセイン兄様と一緒にお祝いした。
遠い記憶。幸せだったな。
肩を抱かれる腕に身を任せた。
「泣いてもいいよ」
「泣かない。だって殿下はここにいるもの。」
「そうか」
ジオは私が殿下を想うことを許してくれる。
殿下の話を笑顔で聞いてくれる。ジオの隣は暖かい。
「ジオ、ここを一緒に守ってくれる?」
「リアが許してくれるなら。」
「ありがとう。ジオ、これから何があっても私は貴方と殿下のもとに帰ってくる。」
「リア?」
「覚えていてほしいけど、忘れても恨まない」
離れている間にジオが他の人を選ぶなら構わない。
婚約は了承はしたけど、やっぱり貴族令嬢を選んだ方がいいという思いは消えない。
「忘れない。俺はリアのことは全部覚えてるから」
「すごいな。」
優しく笑うジオを見て決めた。
動きが鈍くなってる貴方の腕は絶対になんとかする。
でも私の命は使わない。
どこまで時間が残されているかわからないけど、精一杯生きると決めたから。
その日はそのまま殿下のもとで一晩過した。
当たり前のように一緒に野宿してくれるジオ。
願わくば、ずっと一緒にいたい。




