↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷心令嬢の鬼ごっこ  作者: 夕鈴
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/86

第49話 開戦2

仮眠を取ったイリアナはジオラルドと共に移動をした。

兵はすでに配置についていた。イリアナは人の気配に剣を握った。


「ラーナ飛び出すなよ」

「はい」


イリアナはジオラルドの言葉に動きを止めた

先手必勝と思って動こうとしたことを反省した。


味方と敵が斬り合っていた。

イリアナは敵の剣の様子に違和感を感じていた。


イリアナには敵兵がただ適当に剣を振り回してるように見えた。

初心者に剣を持たせているようだった。

味方の兵の動きが突然鈍くなった。

イリアナは首を傾げた。


「マナ小隊長、集中したいので無防備になってもいいですか?」

「手綱は?」

「お願いします。」


ジオラルドに手綱を預けて馬から降りた。

イリアナは集中して、魔力の気配を探る。

両陣営の兵たちの周りにキラキラとした光が見えた。


「ラン、兵たちに突風。キラキラした粉を吹き飛ばしてほしい」

「任せて。」


ランが風を起こすと粉が吹き飛び魔力の気配は消えた。

イリアナは目を閉じて広範囲で魔力を探るが気配はなかった。

イリアナは目を開けて、馬に乗りジオラルドから手綱を受け取った。


味方の兵たちの動きは平静をとり戻した。

ただ敵兵の動きがおかしかった。突然よわよわしく剣を振る様子を見て、イリアナは違和感を覚えた。


「マナ小隊長、敵兵がおかしいです。話したいけど行ったらだめですか?」

「駄目。ここにいるのが俺たちの仕事。勝手な行動は許されない」

「わかりました」


話せば、戦うのをやめてくれると思うんだけど・・。


「ラーナ、突風も起こした?」

「はい。」

「あれも駄目。勝手な行動は現場に混乱を招くから控えて。探る以外をする時は相談してからにして」


イリアナは驚いた。


あれも駄目なの!?

全部許可って面倒、いや上官の命令は絶対だからな…。


兵達が引いたのを確認したので治療用テントに行こうとしたイリアナはジオラルドに止められた。第一騎士団長のもとに向かい報告を先にしなければならなかった。

ジオラルドはイリアナが教えたことを理解しているか不安に思えていた。すでにジオラルドの傍を離れようとし、観察だけのはずが勝手に魔法を使うという命令を2つ破っていた。


ジオラルドの不安など気付かずにイリアナは考え込んでいた。

一時的に動きが鈍くなった兵たちは、幻聴が聞こえていた。幻聴は光る粉が原因かもしれない。ただイリアナにはいつ粉が吹きかけられたかわからなかった。


軍議でイリアナは第一騎士団長の視線を受けて報告した。


「兵達の動きがおかしくなったので、魔力を探ったところ体に、キラキラした粉がついていました。突然突風が吹いて粉が吹き飛ばされてからは兵士達の様子は元に戻りました」

「ラーナ」

「申し訳ありません。試してみたくて突風をおこしました。軍規を乱してすみませんでした」

「ジオ」

「すみません。あとで厳しく叱ります」

「私には粉など見えなかったけど」


イリアナの周りの騎士達が不審な目をイリアナに向けた。

イリアナ以外に粉が見えた者はいなかった。

幻聴への対策が必要だった。イリアナの話に信憑性がなくても試してみる価値はあるということで話が進められた。


「粉を落とせば、幻聴はやむのか。粉を防ぐ方法を考えないとな。」

「敵兵の剣の動きがおかしいです。素人が、剣を持ってるみたいで。粉を吹き飛ばしたあとなら、語りかければ説得できるかもしれません」

「ラーナ、黙って。すみません。新人なのでお許しを。後できちんと話ます。」


自分に向けられるジオラルドの厳しい視線にイリアナは理解した。

余計なことを話すなってことだよね。うん。黙る。


軍議が終わったのでイリアナとジオラルドはテントに戻った。


「ラーナ、方法を考えるのは俺達の仕事ではない。隊長達の質問だけ答えて。次から俺が隊長達に伝えるから、気付いたことや感じたことは俺に教えて。あの場では余計な事は話さないで。」

「すみませんでした」


イリアナは頭を下げた。


「謝らなくていい。俺こそごめん。お前はセインとしか動いてこなかったから、説明が足りなかった。戦場では全てが隊長の思惑通りに動かないといけない。ちゃんと教えるから、一つ一つ聞いて。」

「兵達を説得するのは、余計な口出しをしたからいけなかったの?それとも内容?」


あの時に周りの空気が変わった。刺さるような視線を向けられた。


「両方。敵兵相手に降伏を持ちかけたりしない。国に手を出したんだから、殺すよ。降伏されたら受け入れるけど、」


イリアナは前の戦いで会うたびに降伏をジオラルドに勧められていた。


「ジオは私に亡命を勧めた」

「あれは本当は規則違反。ただリアを悲しませたくなくて説得してた。俺の愛しいイリアナの弟と従兄を殺したら悲しむから。あれが他のやつなら俺は迷わず殺した。ここは戦場だ。敵は殺さない限りまた襲ってくる。情けはかけられないんだよ」


迷いもなく話すジオラルドの様子にイリアナは自分が戦いというものをわかっていなかったことに気付いた。あの戦いは特別だった。

当たり前のように命が奪われる世界を平和な国にいたイリアナは知らなかった。



殿下、怖い。

戦闘不能にすればいいと思ってた。

戦争が終わったら国に帰れるように。家族に会えるようにって。

イリアナは迷子の子供のような顔をしていた。

ジオラルドはイリアナには優しい世界で生きていてほしかった。こんな殺伐とした世界を知らないで欲しかった。


「こんな所に連れてきてごめん。でも、これが現実なんだよ。帰ったら結婚しよう。そしたらお前はこんな所に来なくていい」


見なくていいというジオラルドの優しさに首を横に振った。

一瞬でもすがりそうになった自分に恥じた。


「ジオが謝ることじゃない。それに怖いから逃げたいから結婚するなんて許されない。」

「俺は構わないよ」


ジオラルドの優しさに首を横に振った。


「貴方を利用するためだけなんて駄目。頑張る。これが私の役目」

「無理はしないでいい。殺さなくていい」


ジオラルドの瞳がイリアナの代わりに殺すと言っていた。イリアナは首を横に降った。


「私のために貴方に手を汚させるなら自分でやる。」

「俺の手は血で汚れている。この手でたくさんの命を奪った。」


イリアナは差し出された手を静かに見つめた。


「怖い?」


悲しい声にイリアナが顔をあげるとジオラルドの瞳が揺れているように見えた。

彼が奪った命になにも思わないはずはない。

ジオラルドが優しいことは知っていた。優しいジオに押し付けるなんた許されない。そんな甘えはラーナ家の者として絶対に駄目。怖くても立ち向かわなきゃいけない。

この恐怖を乗り越えて前に立っているジオラルドの手を両手で包み込んだ。


「怖くない。守るために覚悟を決めた手を誇りに思う。誰がせめても、私は肯定する」


ジオラルドは強い瞳で自分を見つめるイリアナに優しく微笑んだ。

自分のことを怖がらず、凛として立ち上がろうとするイリアナが愛しかった。ジオラルドに任せればいいのに、選ばなかった。虚勢を張って、必死なイリアナを守りたくて仕方なかった。


「なら俺はリアを肯定する。リアが奪った命に嘆くなら、側にいてお前が代わりに殺されなくて良かったって言うよ。命を奪ったやつの家族に責められるなら、リアの大事さを話して納得させるよ。」


イリアナがやわらかく笑った。


「ジオ、言ってることおかしい」

「リアが大事だから生きててほしい。嫌なことは俺に任せればいい。」

「押し付けることなんてできないって言った」

「俺は嫌じゃない。リアは嫌がるけど、好きな女を守れるなんて幸せなんだよ。リアのためならなんだってする。リア以外の人間と結婚する以外は。」

「バカみたい」

「男は馬鹿な生き物なんだ。」


ジオラルドにほんのり甘い瞳に見つめられてイリアナの思考がとまった。ジオラルドは空いてる手をイリアナの頬にあてるとじっと見つめ返され唇を重ねた。


唇が暖かい。イリアナは口づけされていることに気づいて握った手を離して慌ててジオラルドの胸を押し睨みつけた。


「不謹慎です。」

「ごめん。つい」


思わず口づけてしまったことに気付いたジオラルドは真っ赤なイリアナの顔を見て笑っていた。自分を睨んでいるイリアナの瞳に嫌悪がないことに安心してイリアナの頭に手を乗せた。


「俺は出てくるから、先に休んでて。また起こしてやるから寝てて」

「わかりました。お気をつけて」


平静を必死で装いジオラルドを見送り、イリアナは顔の火照りに動揺していた。


きっと戦に興奮してるだけ。

ジオに見惚れたなんてありえない。

頭から水を被りたかったけど、貴重な水を無駄にしてはいけないので諦めた。

イリアナは濡れたタオルで体を拭いてベッドに横になった。イリアナは疲れていたせいなのかすぐに眠りに落ちた。


ジオラルドは外で頭を冷やしてテントに戻ると、安眠しているイリアナを見て複雑だった。

時々無防備になるイリアナを見て、他の男に手を出されないように側にいようと再び決意をした。

イリアナの隣に横になると、寝ぼけたイリアナが抱きついてきたので、軽く抱きしめて眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。