第44話 訓練
イリアナは第一騎士団に移動して2日目だった。
騎士団によって雰囲気も日課も異なるのはわかっていた。
ただ訓練担当騎士の1日の予定の意味がわからなかった。
朝礼
休憩
訓練
昼休憩
自由時間
訓練
就業
休憩と自由時間多すぎない!?
ジオラルドに聞いても無駄なので第一騎士団長室に向かうことにした。イリアナにとってジオラルドは上司として役にたたない存在だった。
ノックをすると入室許可が出たので中に入った。
「朝早くにすみません。」
「構わないよ。昨日は久しぶりにジオは定時で帰れたみたいだ。」
イリアナは新しい直属の上司の穏やかに話す言葉に息を飲んだ。
この人、まさか知っていて放っておいたんじゃ・・。
無能は勝手に自滅しろってタイプなのでは…。いや気にしてはいけない。イリアナは意識を切り替えた。
「隊長、お伺いしたいんですが日課に自由時間と休憩時間があるのはどうしてですか?」
「第二騎士団にはないか。私は集団訓練より個人の訓練の方が効率がいいと思ってるんだよ。」
「休憩と自由時間は個人の訓練にあてる時間ということですか?」
「個人の自由だ。ジオなんて自由時間はいつも書類仕事してるし」
あの書類の量なら仕方ない。ほぼ一人で全部やってるもの。しかもマナ小隊長は書類仕事遅いから特に・・。
穏やかな笑顔を浮かべる第一騎士団長の言葉はイリアナにはやる気がないなら自滅しろと言われている気がした。
「騎士の訓練は全面的に私にお任せいただけますか?」
「ラーナの育てた騎士見習いは驚いた。少数精鋭でも構わない。だからラーナを引き抜いた」
任されたからにはきちんとやるつもりだった。ただイリアナな確認すべきことがあった。
「騎士達が全員くじけて騎士見習いしか残らなくても構いませんか?」
「規律を守れず弱い騎士ならいらない。徴兵で集まる民たちの方がよっぽど良い仕事をするからね」
笑顔で言われた言葉にイリアナは寒気がした。イリアナは絶対に敵にまわしてはいけない存在がいると亡き父の言葉を思い出した。
やっぱり怖い。笑顔で本人が気付かないうちに切り捨てる人だ。
第一騎士団はバカばっかりかもしれない。
この隊長は優しくない。怖い人だ。
下に任せるのは見極めてるから。隊長の頭の中には捨て駒候補がいるんだろうな。
この人は絶対に敵にしてはいけない。
第一騎士団長が怖い。絶対に弱気なところを見せたらいけない人だ・・。
イリアナは怖気づいてることに気づかれないように笑顔を纏った。もし気付かれても態度で隠す姿勢は大事なことはよく知っていた。虚勢とはいえ情けない姿よりもマシなことを。
「貴族出身の騎士から苦情がきたら守ってくださいね。私、隊長に訓練を全面的に任せられてるから逆らうなら、隊長の命に逆らうのと同意って宣言してもいいですか?」
「一筆書いてあげるよ。ジオは甘いから期待している。私のお気に入りを明言しても構わないよ」
「ありがとうございます。期待にそえるように頑張ります」
第一騎士団長はイリアナの虚勢に気付いていた。でも一瞬で切り替えたイリアナを評価してもう一つ特権を与えることにした。イリアナは嬉しそうに笑った。第一騎士団長はイリアナが敵意ばかりの中どうするか楽しみだった。そしてジオラルドがどう隊をまとめるのかも。
イリアナは良い意味での思わぬ収穫があったので礼をして訓練場に向かう前にアドニスに会いに行った。第一騎士団長は怖くても気遣いに感謝した。
上司から与えられた2つ権限のおかげでイリアナは仕事がしやすくなった。バカを黙らすのは力と権力が一番簡単である。
イリアナはあの抜け目のない底知れない第一騎士団長のもとで、甘いジオラルドが小隊長を務めてられていることが不思議だったが、考えることを放棄した。
アドニスへの用は終えたのでイリアナは急いで訓練場に向かった。私のアドは頼りになると機嫌の良いイリアナだった。久々にゆっくり休んだので体が軽いのもあり、イリアナの足取りは軽かった。
「ラーナ様!!これからよろしくお願いします」
騎士見習い達がイリアナの姿を見つけて駆け寄ってきた。
「こちらこそ。また厳しくなるけど」
「はい。頑張ります。ラーナ様と同じ隊なんて光栄です。第一騎士団で良かったです」
「贔屓しないからね。アドの代わりにこれからは私がみます」
騎士見習い達が嬉しそうに頷いた。
イリアナは先程絶賛した自分の騎士に心の中で問いかけた。
アド、あなた何をしてたの?
私の訓練に喜ぶなんて相当よ・・。
些細なことは気にせず近づいてくるリックとカレンに手を振った。
「ラーナ」
心配そうな顔のジオラルドに呼ばれイリアナは騎士見習い達と別れてジオラルドの下に移動した。イリアナは小隊長の情けなさにため息をついた。上司の情けない顔なんて見たくなかった。
「大丈夫です。心配しないでください。その顔は示しがつきません。」
イリアナの声にジオラルドは平静な顔を装った。ジオラルドの声に騎士が集まり整列をする。
イリアナは隣で様子を見ていた。騎士見習い達は動きが早いが騎士の動きは遅かった。
あらかじめ整列して待っていないことへ呆れていた。騎士達が散っていたため騎士見習い達は騎士が動かない限り整列を組めなかった。
ジオラルドの説明が終わったのでイリアナは一歩前に出た。
イリアナは騎士たちと馴染む気はなかった。敵意を向けられても気にしなかった。
「第一騎士団小隊長補佐のイリアナ・ラーナです。騎士の皆様より私が地位が高いことを忘れないでください。隊長より訓練を全面的に任せていただいてるのでよろしくお願いします。質問があればお伺いします」
「色仕掛けで小隊長補佐におさまった人間の命令なんて聞かない。ジオラルドがお前に惚れてるの利用したんだろ」
イリアナは蔑んだ表情を浮かべた。どんな理由で就任しても上司の命令は絶対である。
リックの目が険しくなったのに気付いて視線で余計なことはしないでと伝えた。
「マナ小隊長をバカにされてるんですね。色に目が狂ってるなんて。私がこちらに配属されたのは第一騎士団の皆様が弱すぎるからです。第二騎士団よりも明らかに実力が高くなれば私を第二騎士団に帰してくださるそうです。目障りな私に消えてほしければさっさと強くなってください。」
イリアナの蔑んだ視線に一部の騎士が殺気を飛ばした。
動こうとするリックをイリアナはまた視線で止めた。
「お前」
「第一騎士団長より訓練での私の命は隊長の命と同じと一筆いただきました。よろしくお願いします。ではまた訓練で。空き時間にお暇な方は訓練に付き合うので声をかけてくださいね」
罵倒する騎士は無視をして、最後に笑顔を浮べて礼をしたイリアナが去ると騎士たちが散っていく。
殺気をあてても、イリアナに剣を抜く騎士はいなかった。イリアナの実力に適わないことを騎士達は知っていた。
第一騎士団長の真意を理解してる騎士は少なかった。
リックとカレンと騎士見習いがイリアナに近づいてきた。不服そうなリックにイリアナは笑みを浮かべた。リックはイリアナへの殺気に体が動いてしまうのは当然だ。でも今は堪えてもらわないといけない。
「リックは手を貸してくれる?」
「勿論です。イワンが悔しがってました」
イリアナの顔を見てリックは笑った。
昔から変わらないリックにイリアナは挑戦的な笑みを浮かべた。
「リック、体は温まってる?」
「はい。お任せを」
訓練の前に準備運動をして体を温めておくのはラーナ家の常識だ。ラーナの騎士はいつでも動く準備をしている。イリアナは周りの騎士見習い達に向き直った。
「準備運動が終わったらリックに挑んでください。皆で協力してください。リックから剣を奪ったら勝ちです。」
騎士見習いが準備運動をしながら相談をしていた。
1対1なら無理でも連携なら可能性はある。騎士見習い達が相談を終えて挑んでいく姿をイリアナは関心しながら観察していた。
「ラーナ」
リックと戦う騎士見習いから目をそらさずに、声をかけられたジオラルドに返答した。
「なんですか?勤務中なんで謝罪とかやめてください。騎士に何を言われても気にしないので」
考えこんでいるジオラルドの甘さにイリアナはため息をついた。
ここで悩まれても邪魔だった。
「どうしてもと言うならお昼休みにしてください。訓練は私一人に任せて仕事に戻ってください」
「俺も参加するよ」
「いりません。」
「指導側じゃない」
「はい?本気ですか?」
「ああ」
「わかりました」
イリアナは放っておくことにした。参加したいなら止めない。ただ小隊長が脱落は勘弁してほしいと思った。イリアナはジオラルドが第二騎士団の訓練に参加していたことは忘れていた。
イリアナは騎士見習い一人一人に改善点を伝えた。
今の実力だとまだジオラルドに圧勝は難しいと判断した。
ただアドニスの指導を受けてるため、きちんと成長していたことは評価した。イリアナは飴と鞭の使い方が上手い人間だった。騎士見習い達は再び集まりリックに勝つための方法を相談していた。
休憩時間は終わったのでイリアナは散らばっている騎士に聞こえるように話し出した。
「訓練がはじまる前に隊列を組んで待つのは常識です。上官がきてから組むなんてありえません。騎士見習いでもできるので頭に叩き込んでください。文句のある方は私に勝ってからにしてください。勤務中でしたらいつでもお相手します」
文句がありそうな騎士をイリアナは笑顔で制した。基礎訓練の予定を変更することにした。
「わかりました。予定を変更します。皆様と私で手合わせしましょう。どれだけ弱いか教えてあげます」
リックが手を上げた。
「イリア様、僕が。イリア様よりも弱い僕がお相手しますよ。イリア様自ら手合わせする相手ではありません」
「マナ小隊長もいるけど?」
「大丈夫です。だから僕もアドニスみたいに言ってください」
イリアナはリックの願いを聞いて誇らしげにリックを見た。
「貴方たちは仲が悪いね。私のリックが負けるはずない。殺しはだめだからね。楽しませて。勝利を私に捧げなさい」
「はい。お任せください」
「ラーナ、お前、まさか」
誇らしげに頷くリックを見て、イリアナに不満をもつ騎士達がニヤニヤした顔を向けてきた。
イリアナには騎士の言いたい事はわかっていた。バカらしいけど念の為に一言言うことにした。
「同郷です。リックをたぶらかしてません。そうね。もし私のリックを倒したら命令を一つ聞いてあげます」
「本当だろうな」
「ええ。騎士に二言はありません。マナ小隊長も遠慮はいりませんよ。」
イリアナは挑戦的な笑みを浮かべた。やる気があがる理由はなんでもいい。ただ怒りに身を任せて愚かな剣を振るならさらに弱さを突きつければいいだけだった。
リックは負けない。リックが遅れをとる相手はこの中にはいなかった。全員で連携して組んだらリックも苦戦するけど負けないことはないと確信していた。
なによりイリアナに勝利を捧げろと命じられたリックは強い。飢えた獣のような目で騎士達を見るリックに怖じけづく騎士達に勝機があるとも全く思えなかった。
もしも、リックが負けるほどの相手がいればそれがそれでおもしろかった。騎士の実力を見余ったイリアナの失態なのでその時はどんな願いも叶えるつもりだった。
イリアナの想像通り、リックの圧勝だった。
自分の前に跪くリックをねぎらい、座り込んで息切れしてる騎士達に声をかけた。
イリアナ達の育てた騎士見習いはきちんと隊列を組んで待っていた。
「休憩ではないので立ち上がってください。自分の弱さを身に沁みました?基礎訓練に戻ります」
「休憩は?」
「お昼休憩まで休憩はありませんよ。さっさと立ち上がってください。減俸しますよ」
「お前にそんな権限は」
イリアナはにっこりと笑った。上司から与えられて予想外のありがたい贈り物だった。
「あります。上司への態度でもありません。ポイントがたまるとそれに応じた罰を用意してるので楽しみにしてくださいね。アドニスと一緒に考えました」
「アドニス!?」
アドニスの名前に騎士達がざわめいた。
イリアナはアドニスの観察力を信頼していた。そのため、アドニスのもとに罰について相談に行った。イリアナは第一騎士団員のことは知らなかったのでアドニスに頼っていた。
アドニスが怖がられている理由はわからなかった。ただ騎士達の動きが格段に良くなった。
イリアナは想像以上にレベルの低い騎士達を見て、先の長さにため息をついた。基礎訓練で根をあげる騎士など見たことがなかった。
マナ小隊長とリックと騎士見習いが余裕で基礎訓練をこなすのは当然よね。
カレンがついてくるのが予想外だけどちゃんと努力したんだ。
後から斬りかかってくる気配にイリアは横によけた。
「1ポイントです。基礎訓練も終わってないのに他のことをしないでください。この訓練がおわらないとお昼休憩ありませんので。訓練の途中で休憩に行けばポイント加算します」
イリアナの一言で騎士たちの動きが変わった。まさか休憩時間も訓練が続くとは思わなかったようだ。イリアナは飽きれていた。もう何度ため息をついたかわからなかった。
できるならさっさとしてください。
まともな騎士は何人いるのかな。悲しくなるから数えるのはやめよう。
ジオラルドに不満を言う騎士達は放っておくことにした。ジオラルドが訓練に口を出すなら第一騎士団長に直訴に行く気だった。第一騎士団長がイリアナの訓練にジオラルドが口出すことを禁止していたことは二人以外は知らなかった。
昼休憩が残り半分の時間になる頃には全員が訓練をおえていた。
ジオラルドには先に食事に行ってもらっていた。隣で全員の訓練が終わるのを待たれても邪魔だった。イリアナは全員が訓練を終えるまでその場を離れる気がなかった。無事に終わったのでイリアナは小隊長室に戻ってお弁当の蓋を開けた。
小さいお弁当の中は色鮮やかに彩られていた。最近は触感にも工夫されていた。アマルは味覚がなくてもイリアナが食事を楽しめるように工夫していた。イリアナが気を使わないでと言っても好きでやってると笑うだけだった。イリアナは優しいアマルだけは幸せになってほしいと信じていない神に心の中で祈りを捧げた。
イリアナはアマルの優しさがたくさん詰まったお弁当を大事に食べていた。
「嬉しそうだな」
イリアナは聞きなれた声に顔を上げた。
「マナ様、食事は?」
「終わった」
「早いんですね」
「その量で足りるのか?」
「もともとそんなに食べられません。」
話を聞くためにイリアナは箸を止めた。
「食べながらでいいよ」
「わかりました」
時間はないので、行儀が悪くても食事を再開することにした。お弁当を残すとアマルが心配するのを知っていた。アマルのお弁当を捨てるという選択肢はなかった。
「毎日弁当?」
「はい。ここの食事は多いので」
「あらかじめ言えば減らしてもらえるよ」
ジオラルドの言葉にイリアナは指導係を思い浮かべた。
「そんな説明受けてません。ヒューゴ、後で覚えてなさい」
「第二騎士団に馴染んでいたのにごめん」
申し訳なさそうな顔をするジオラルドにイリアナは呆れた。本心を隠して社交用の顔を作った。
「マナ様の所為ではありません。騎士一人の移動に心を痛めていたら指揮官は務まりません」
「俺がもっと」
イリアナは弱音を聞きたくなくて言葉を遮った。せっかくのアマルの優しいお弁当で癒やされた心が台無しである。
「向上心があるのはいいことです。でも人には向き不向きがあるんです。年齢も経験も性格もうちの小隊長と比べる必要はありません。敬意をはらえる小隊長になら尽くします」
ジオラルドは力不足を責めながらも敬意を示すという言葉の意味がわからなかった。
「俺に失望してるんじゃないの?」
「同じ武門出身侯爵家としては思う所はあります。でも騎士としては敬意を持ってます」
イリアナはジオラルドの落ち込んでる様子に迷った。
小隊長には私も敵わない。あの人は比べていい次元の人じゃない。一種の天才。
力不足に落ち込むのは悪いことではない。反省して、また前を向くのは大切なことである。
イリアナはアマルのお弁当を見つめて、少しだけ優しくすることにした。
「私、貴方が仲間を裁けるとは思いませんでした。ちゃんと正しい判断をしたマナ様には敬意をしめします」
「俺、悩んだんだよ。説得すればやめるかと思ったけど、一度見逃せば示しがつかなくなるから。」
揺らいでいるジオラルドを見てイリアナはため息を飲み込んだ。
悩むところがある意味凄い。私は証拠があるなら迷わず裁く。イリアナには説得せず処罰の一択だった。
「マナ様が罪の意識を感じる必要はありません、罪を犯した騎士に資格はありません。剥奪した騎士に貴方が責められるならそんなバカは私が斬ってあげますよ」
「厳しいのか優しいのかわからないな」
「私、優しい人間だはありません」
「惚れ直した。俺と結婚しよう」
「しません。職場でやめてください」
「今は仕事中じゃない。それに仕事以外で会ってくれないだろ。」
「否定はしません。」
「ごめん」
「私に結婚を迫ることですか?悪いと思うならやめてください」
「違う。俺のせいでお前、色々言われるだろ。俺をかどわかしたとか」
イリアナは見当違いなことで、謝るジオラルドに頭を抱えたくなった。気にしてほしいのはそこではなかった。
でも、イリアナが誹謗中傷を受けるたびに、ジオラルドが情けない顔をするのは迷惑だった。上官には形だけでも、逞しい顔をしていてほしかった。
何より、毎回フォローするのが面倒だった。ジオラルドに無礼な態度をとる者がいるならイリアナは咎めないといけない立場だった。出来る限り仕事は増やしたくなかった。
「マナ様以外にも隊長やレオ様をかどわかしたって言われてるので気にしないでください。本当に気にしてないんです。私、元ラーナ侯爵令嬢件第二王子婚約者なので誹謗中傷は日常茶飯事。騙し合いも日課でした。正直、こちらの方々の相手は面倒ですが余裕です。片手間でできます」
「それならマナ侯爵夫人も片手間で務まるな」
「ありえません。絶対に頷かないので他を当たってください。」
「俺も諦めないから、根競べだ」
イリアナはお弁当は食べ終えた。ジオラルドの様子に調子が狂いそうだった。
ジオラルドが落ち込んでると思って放っておかなかったことを後悔した。
この人も最近、なんでこんなに性格が違うの!?
セイン兄様の影響?落ち込んでるはずが突然強気で迫ってくるジオラルドに戸惑っていた。
イリアナはジオラルドの相手をするのはやめて訓練場に向かった。
午後の訓練も相変わらず不平不満は多く騎士達を脅して訓練させていた。
前途多難だった。
第二騎士団は脅さなくても訓練していた。
訓練させるために脅したのはイリアナには初めての経験だった。そんな初体験は望んでなかった。
イリアナは仕事も婚活もうまくいかない現実に途方にくれていた。
朝の機嫌の良さが嘘のように、疲れた顔をして帰宅したイリアナをアマルが心配して世話をやいていた。




