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傷心令嬢の鬼ごっこ  作者: 夕鈴
第一章

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第34話 晩餐

レオナルドの生誕祭は無事に終わった。

イリアナの空っぽな舞も民達は盛り上がりレオナルドは満足していた。

イリアナはマナ侯爵家に招かれている。

失礼にならない程度の礼装を調えた。

必要以上に関わりたくないので迎えは断った。


侯爵家の屋敷は相変わらず大きい。

イリアナはマナ侯爵夫人に礼をした。

「本日はお招きいただきありがとうございます。」

「ラーナ様このたびは」


気の毒そうな顔をするなら放っておいてほしかったと夫人に思ったことを隠して笑顔をまとった。


「気にしないでください。私は王太子殿下に仕える騎士の一人にすぎません」

「貴女には返しきれない恩があるわ。いつでも頼ってね。母と思ってくれて構わないわ」


マナ侯爵夫人の言葉にイリアナは一瞬固まった。

私のお母様は生きてますけど・・。

私のことより息子を教育してください。

言えないけど。

それに貴方の息子を保護したのはお父様です。

私ではない。やっぱり言えないけど。

もう帰りたい・・。

挨拶の時点で帰りたくてたまらないイリアナだった。


「お心遣いありがとうございます」


イリアナとマナ侯爵夫人とジオラルドの三人の晩餐だった。

イリアナは必至で社交用の笑みを浮かべて耐えていた。


・・・マナ夫人の話が長いな。


イリアナは夫人の息子自慢の話に呆れていた。

マナ侯爵夫人の息子への初恋の援護は逆効果だった。


マナ様も夫人を止めて下さい。人の社交辞令に照れないでください。

帰りたい。

どれだけ社交慣れてないんですか…。


「ラーナ様、あなたはこれからどうするの?」

「私は母国の恩を返すために王太子殿下にお仕えします」

「貴女も年頃でしょ?良い人はいないの?」


この国の貴族は私の事情を知らないのかな。

私、外交で何度かお邪魔してたけど。

殿下が隣にいなけれな分からないかな・・。

他国のことだから仕方ない。


「お恥ずかしながら、こちらの生活に慣れるので手一杯で」

「旦那様から優秀だと聞いているわ。」

「マナ侯爵にはお世話になっております」


夫人は喜々としてマナ侯爵の話をはじめた。

イリアナはジオラルドの話よりはマシと思うことにした。

作り笑顔で相槌をうっていた。


「ラーナ様、うちのジオラルドもまだ婚約者がいないのよ」

「ご令嬢方に人気のマナ様ですから、選ぶのも大変ですね。」

「あら?私はてっきり」

「きっとふさわしいご令嬢をお選びになるんでしょう。ささやかですが、ご成婚の折には私からもお祝いを贈らせてくださいませ」


マナ侯爵夫人に不思議な目で見られてるけど、どうして…。

まさか人気がある自覚がないの?侯爵嫡男って肩書だけで令嬢達は寄ってくるのに・・。


「きっと夜会にでればダンスに誘われたいご令嬢に囲まれて大変でしょうね。罪な方ですわ」

「この子あんまり出たがらないのよ」

「ご令嬢方が悲しみますね。」


やっぱり社交は全然してこなかったんだ。

この夫人もあんまり慣れてない。

こんな直球で切り込みをいれてくるなんてしない。

貴族は遠回しに探りをいれるものである。


「この子を支えてくれる方なら身分はとわないんだけど」


駄目でしょ!?侯爵家嫡男なんだから名門貴族から娶らないと。

ため息を我慢してイリアナは笑顔で必死に受け流した。


「ラーナ様、もう遅いですしよければ泊まっていって」

「申しわけありません。明日は仕事ですのでお気持ちだけで」


泊まるとか勘弁してほしい。

醜聞になるから。しかも絶対に令嬢達の標的になる。

送ると言われたけど、辞退した。この夫人なら無礼も許してくれる。

マナ侯爵家なんなの!?

駄目すぎない!?



次の日は朝からイリアナはアドニスに斬りかかった。


このイライラはアドにぶつけるしかない。

隊長に申しわけなさそうに謝られたけど、謝るなら自分の家族はしっかりしつけてほしい。言えないけど。


イリアナには、ぼんくら貴族に構っている暇はなかった。

最近、忙しくて忘れてたけどイリアナの婚活が全然進んでいなかった。


やっぱりエミリオ様?

人柄は問題ない。あの時は諦めたけど好みの令嬢を演じればいいんだよね。騙される方が悪いのよ。

手っ取り早く既成事実を作る?さすがに一服盛るのはまずいか。


「ラーナ!!」


今日は共同訓練だった。最近よく絡まれる女性騎士3号が目の前にいた。

残りの二人は見かけないけどまぁいいか。

絡まれないならそれでいい。


「おはようございます」

「おはよう。ぼんやりしてどうしたの」

「お気になさらず」

「つれないわね」


共同訓練の恒例の手合わせは第二騎士団の勝利。

訓練に真面目に取り組んでいれば当然の結果である。

イリアナは男性は健気な令嬢に弱いことを思い出した。


「エミリオ様、一緒に訓練してくれませんか」

「ラーナ様、俺として!!」

「ラーナ、彼としてあげな」

「はい」


エミリオを誘おうとして騎士見習いに邪魔され失敗した。

なぜか最近、エミリオ様や一部の方に怯えた目で見られる時があるんだけど・・・。


「ヒューゴ、私時々怯えた目で見られるのはなんで?」

「お前に見られると、地獄の訓練を課されるんじゃないかと、体が反応する」

「あれだけで?」

「あれだけって・・・」

「私ってどう見えてます?」

「さあな。言葉にできないから勘弁して」

「健気な少女には見えませんか?」

「無理だろうな。」


みんなが希望したから訓練してるのに。

ひどい。

もう仕方がないから、第二騎士団は諦めるしかないかなぁ。

次の標的はどうしようかな。

イリアナの婚活はお先真っ暗だった。

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