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傷心令嬢の鬼ごっこ  作者: 夕鈴
第一章

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第29話 質の違い

魔力持ちの家族は王宮預かりになった。イリアナはもう関わることはできない。これ以上できることもないから気にしないことにした。

騎士団業務をこなし、時々レオナルドに治癒魔法目当てに連れ回され、気づいたら16歳になっていた。

レオナルドとの約束の期限まであと一年。

イリアナは婚活を再開することを決めた。


イリアナはレオナルドに呼ばれている。

レオナルドの執務室にはレオナルドとセインと両騎士団長。

この顔ぶれにイリアナは嫌な予感がした。

最近、とくにやらかした記憶はないんだけど。



「セインがうちの騎士を弱いというんだ。イリアナ、君の意見も聞きたい。」


レオナルドの言葉にイリアナはセインを睨んだ。

セイン兄様、なんてことを言ったんですか!?

セインは聞かれたから答えたと視線を返してきた。

イリアナは社交用の顔を作った。


「申しわけないですが私にはわかりません。」


「君の元護衛騎士たちは第一騎士団の騎士たちを全員倒したらしい」


楽しそうなレオナルドの言葉にイリアナは固まった。


なにしてるのよ!?目立つなって言ったよね。あれ?私が目立ちたくないって言ったけど3人が

目立つのは問題ないってこと?

やっぱり3人のことにも気づいていたか…。


「すみません。しっかり言い聞かせます」

「いらない。あの3人はラーナ領での実力は?セインは他領のことは詳しくないみたいだ」


セイン兄様が知らないはずない。

イリアナは正直に答えることにした。


「アドニスは上の下、イワンとリックは中の上。三人で組ませて連携戦なら上の中ですね」


「最上級クラスは?」


「レオ様のご存じ上げる方は亡き父と魔導士のセイン兄様です。私は上の下です」


「ラーナ領にはあの三人のクラスが普通なのか」

「珍しくはありません」

「イリアナ、兵の質をあげたい。できるか?」

「レオ様の命なら努力はしますが、耐えられない者が出てくると思います。うちの訓練、こことは比べ物にならないくらい厳しいですよ。ここの甘い訓練に慣れた騎士よりも新人騎士見習いを預けていただければジオラルド様程度には育てましょう。」

「ジオ程度?」

「申し訳ありませんが、うちの領はジオラルド様程度はざらにいますわ」

「ラーナ、お前、ジオラルドに手合わせで負けていなかったか?」


第一騎士団長の言葉にイリアナは頭を下げた。


「申し訳ありません。ジオラルド様に勝つと周りの目線が厳しいので手を抜いてました。セイン様、私が本気で戦ったらジオラルド様に負けますか?」

「ありえません。本気を出すまでもなく勝利するでしょう」

「格が違うか」

「他国のことはわかりません」


さすがにこの国の兵は弱すぎるとはイリアナは言えなかった。


「今回採用した騎士見習いを預けよう」

「見習い達に自分たちの訓練が厳しいものだと知られたくありません。両騎士団より離れた訓練場を貸していただいても」

「そのあたりは騎士団長と相談して好きにしていいよ」

「レオ様、努力はしますが、矯正不可能な人間は切り捨ててもいいですか?」

「いいよ。イリアナが見捨てるなら使い物にならないからね。これ」


レオナルドが書類を差し出した。


「今年の採用者だ。楽しみにしてるよ」


書類を見ると、イリアナの予想通りだった。


「レオ様、採用者に貴族もいますが、無礼を働いて私の首が飛ぶことはありませんか?」



「イリアナは私のお気に入りだと言えばいい。その程度の家よりよっぽど君の方が有益だから」

「ありがとうございます」


レオナルドに礼をして退出し両騎士団長と共に第二騎士団長室に移動した。


「ラーナ、まずは3か月預けるができるか?」


期限の短さに流石にイリアナ一人だと厳しい。


「はい。精一杯励みますが。いくつかお願いがあります」

「話してみなさい」

「離れた訓練場の用意と第一騎士団のアドニスを貸してもらえませんか?」

「どうだ?」

「新人教育は両騎士団の務めだから構わないよ。アドニス一人で平気か?」

「3か月しかないので、リックかイワンのどちらかもつけていただけると助かります。二人もお借りしていいんでしょうか?」

「構わない。ラーナも新人教育期間中はうちの任務から外そう。報告書の提出を。小隊長に時々様子を見にいかせる。もし手が足りないなら相談にきなさい。」


うちの小隊長なら邪魔はしないからいいや。むしろそっと手伝ってくれそう。

あの人ハイスペックだから。


「ありがとうございます。わかりました」

「ラーナ、うちの小隊長も時々見学させていいかい?」

「余計な口出しをしたら武力行使しても構わないなら。邪魔や妨害工作をしないと約束は無理ですよね…。できればうちの小隊長と一緒にお願いします。時間がないので第一騎士団の方々の相手をする時間が惜しいです」

「第二騎士団の小隊長は信頼してるんだね」

「はい。隊長にも小隊長にもお世話になってばかりで感謝の言葉もありません」


第一騎士団隊長の曖昧な笑顔の理由はイリアナにはわからなかった。

イリアナは嬉しい誤算があった。リックとイワンを両方借りられた。

一人増えればできることが増えるからありがたい。

第一騎士団長の株が少し上がった。それでもイリアナの中での評価はマイナスだった。




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