閑話 アマルとイリア
アマル視点
俺はイリアと暮らしている。
声を掛けたのは、なんだか俺と同じだと思ったから。
イリアは俺に関心がなく、好きにしていいって言うから好きにしてる。
イリアは年上なのに色々抜けている。
好きに使ってと渡された銀貨は1年は暮らせるほどの金額だった。
市には適正価格の品物は一つもないのに、明らかに高値のまま購入するイリアの金銭感覚はおかしい。
イリアの優先順位は湯浴み>睡眠>食事。
イリアは湯浴みをしてない俺に気付くと不快そうな顔で、無理やり服を脱がして、体を洗い湯浴みさせる。
無理やりなのに、俺を洗う時も、髪を乾かす時もイリアの手は優しかった。
でも、イリアに全身洗われるのは恥ずかしいから、きちんと湯浴みはしないといけないと覚えた。
毎日湯浴みするなんて、裕福な家でしかありえないけど、住む家も調度品も俺達が使っているものより高価な物なので、イリアの懐を心配するのはやめた。
イリアは美人だから、市でも大人気だ。
イリアは気付いていない。周囲の様子は気にせず、生活に必要な物だけを買って帰る。
買い物しているイリアは家とは様子が違い、明るく変だ。
変なイリアより家でのイリアの方が俺は好き。
イリアは騎士団に所属しているので、時々夜遅かったり帰ってこない時がある。
ドアを叩く音がして扉に近付く。
「アマル、俺だ」
知らない奴の時は扉を開けていけないとイリアに言われているけど、聞き覚えのある声にドアを開ける。
「アマル、ラーナは緊急の遠征だ。いつ帰るかわからない」
「わかった」
「ラーナの食事、俺がもらってもいい?」
「え?」
「一人で待つの、寂しいだろ」
「いらない。一人で平気」
「ラーナが悲しむだろうな」
俺を心配しているイリアの騎士仲間のヒューゴ。
今日だけならいいかとヒューゴを中に入れて、用意してある料理を並べる。
「また来たの?」
「毎日は来れないが、子供一人は心配だ。うちに来てもいいけど嫌だろう?」
「あたりまえなこと聞かないで」
ヒューゴは二日に1回は夕食を食べに訪ねてきた。
夕食代を置いていくので、いいかと気にするのはやめた。
しばらくしてイリアが帰ってきた。
イリアが帰ってきたのは嬉しい。
でも俺を出しにヒューゴはイリアに色々お願いをしたのは気に入らない。
「俺はお世話になってないのに」
「アマルはしっかりしているものね」
俺の不満をイリアは興味なさそうに流す。
初めてイリアの手料理を食べた時、俺はイリアが料理をできたことがショックだった。
イリアがいつも美味しくない携帯食料で食事をすませようとするのは、料理ができないからって思ってたのに違った。
イリアは俺がいなくても平気だったんだとショックだったけど、「味がしないけど、アマルのあたたかい料理のほうが好きよ」って言ってくれるから、そばにいていいんだと安心したのは内緒。
イリアは俺と二人だといつも無表情だけど、時々笑う。
俺は他人のことなんて興味がないけど、イリアの笑顔だけは好きだと思う。
俺もイリアも壊れてる。
だからかイリアの側は居心地がいい。
イリアは時々夜にベッドから抜け出して、外でぼんやりしていることがある。
寝たフリをしてベッドに戻って来たイリアに抱きつくと体が冷たい。
抱きついても、引きはがされることはなく、イリアはそのまま眠ってしまう。
最近、イリアは俺で暖をとって寝ることが気に入ってるのを知ってるのは俺だけ。
「イリア、起きて!!」
休養日明けの出勤日はやっぱりイリアは起きてこなかった。
職場で食べられるように朝と昼用の食事を包みなおしてイリアを起こす。
寝起きの悪いイリアを起こして、慌てて支度をしているイリアの準備を手伝う。
「アマルがいないと生活が破綻するかも」
イリアの呟きに嬉しくなる。
俺はイリアの役に立てるように頑張る。
抜けているイリアが騎士なんて務まるのが不思議だけど、イリアは強いからなんとかなるのかな。
訓練を見てくれるようになったイリアに筋がいいと言われるけど、俺はイリアに勝てる気がしない。




