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ターシャの考え、モアナのこたえ

2019年7月23日に『いざ、ドレスを作りに!』『衝撃』、『舞台裏で……』を少々編集しました。報告させていただきます。

「おはようございます、ターシャ様。昨日はかなりお疲れのご様子でしたが、いかがですか?」

「ありがとう、モアナ。大丈夫よ」

 本当は昨夜は考え事をしていたせいであまり眠れなかった。ザイクとの会話が頭から離れなかったのだ。 モアナはそんな主の様子をすぐ読み取った。 実のところ、モアナも夜、ターシャの母方の血筋を本格的に調べようと決心していた。ターシャの『候補』としての格が上がるかもしれなかった。その旨を一通手紙に書いて、宮廷にいるミヒャエルに送るよう急ぎの使いを頼んだ。多忙を極める方だ。返事は遅くとも二日後には来るだろう。

「……顔色が悪いように見受けられますが。午前は邸で過ごされて、他の『候補』たちについて、わたしがお話しするのは、いかがでしょう」

 ターシャはモアナを見つめた。彼女は本当によく気づき、こちらの要望を叶えようとしてくれる。……だから、なのか。出立するときから胸に温めておいたある考えがとても失礼なことに思うようになった。

「……モアナ。聞いてほしいことがあるの」

「はい、何でしょう?」

 緊張したターシャの面持ちにモアナが背筋を正した。

「わたしが今回の『候補』になるのをミヒャエル様に打診されたとき、思ったことがあるの。わたし、きっとこ殿下の『中継ぎ婚約者』には選ばれないだろう、って」

「はい」

「……じゃあ、なぜこの話を受けたのかというと……わたし、お父様の屋敷に居場所がなかったの」

 ぽつりぽつりと自白していく。

「なら、帝都に来て、何らかの居場所を得たい、と思って。それで、帝都に来たの。……だから昨日、モアナが騎士団駐屯所に行くのを提案したのは……いい機会だと思ったわ。……わたし、小さい頃から難しい本も読んできたわ」

 話が前後してしまう。

「はい」

 それでも、モアナは微笑を浮かべ、先を優しく促してくれた。

「だから、わたし、騎士団の『医学科』に入団できるかもしれない……って、思ったの。……知識は医学書で読んできたし、実技を教われば、〝居場所〟を得られるかなと」

 そう。これが出立前から考えていたターシャなりの〝策〟だった。考えてみると、浅はかな望みだ。他の『候補』たちは必死で殿下と婚約しようとしているのに。

 モアナも、ターシャ(わたし)を殿下にふさわしい女性にしようとしているのに。

 ミヒャエル様にいくら“気楽に”考えてよいと言われたとはいえ、自分勝手だった。モアナの気持ち、ザイクに頼んだドレス――どれもターシャのためだというのに。

「ターシャ様」

 モアナの顔が真顔になる。

「ターシャ様の今のお考えを、お聞かせください」

「……わたしは」

 声が掠れた。

「……わたしは、とりあえず、努力、してみるわ。……殿下の良き友人になれるように」

 ミヒャエルの言っていた『思い人』にはなれないけれど、友人になら。

「力の限りを尽くしてみるわ」

 そう言って、恐る恐るモアナの様子を伺うと、彼女は満面の笑みを浮かべていた。

「はい。わたしはどんな時もターシャ様の味方です。いざとなれば、ターシャ様の“最初の願い”も叶えますわ。それでは――」

 他の『候補』の方々のことを予習しましょう。

 その温かな声に胸が熱くなる。

「はい、……よろしくお願いします」

 ターシャは心が緩くほどけていくのを感じた。

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