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廃課金ゲーマー、ゲーム世界に転生してガチャを引く  作者: 柊 凪


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006

「革鎧って臭いんだな。あと血ってこんなに落ちないのか……」


 ジンの愚痴にアイリスがパタパタと羽を震わせながら答えた。


「マスター、こればかりは仕方ありません。ゲームならモンスターを倒せば消えてドロップアイテムが落ちるんですがね、そう簡単には行かないようです。でもドロップはありましたね」

「あぁ、貰った通貨とは違うコインが落ちたな。アレが何なのかフィーネに聞いてみよう。常識なしだと思われるだろうけれど確認しないとな」


 ジンはアイリスと一緒に井戸を借りて返り血を洗っていた。服はもうダメになってしまったので村長のハーラルがまた用意してくれるようだ。


「くそぅ、シャンプーが欲しい。せめて石鹸」

「ありません。作り方は知っているので作りましょう」

「アイリス、お前案外有能だな、じゃぁ石鹸を作ってみよう。確か灰とかがあればできるんだよな」

「そうですね。できれば貝殻とかがあるとより良いです。硝酸アンモニウムの取得は難しいかもしれませんね」

「いや、知識があるだけで助かる。料理の知識とかもあるか?」

「もちろんです。世界各国の料理知識がありますよ。さっきハーラルさんところで食べた感じ食材はほとんど日本の物と変わらないのでなんとかなるでしょう」


 ジンはそれを聞いて嬉しく思った。


「ゲームだと調理士のレベルを上げてワンクリックで作れたからなぁ。俺は料理できないし、アイリスは役立つなぁ」

「ふっふっふっ、そうでしょうそうでしょう。もっと褒めてくれてもいいんですよ」


 アイリスはない胸を張ってパタパタとジンの眼の前で飛んでいた。ちょっとアイリスとの距離感が縮まった気がする。ほんの少しだけアイリスがジンに近寄ってきた気がするのだ。


「魔導士になってフライを得るのもいいな。そうすればアイリスと一緒に空の旅ができる」

「いいですね、マスターと一緒に飛んでみたいです。できれば夕日の時に綺麗な湖の上とかがいいですね」

「それ絶対シーサーペントに襲われる奴じゃん。それかミニワイバーン」

「ジンさ~ん」


 アイリスとくだらない掛け合いをしているとフィーネが手を振りながら声を掛けてきた。

 人気NPCだけあって見目が良い。赤髪赤目。肩までのちょっと癖のある髪の毛。ただし村人とは思えないほど艶がある。瞳はぱっちりとしているし唇はピンク色だ。人気イラストレーターが書いただけあって目鼻たちはしっかりしていて、バランスも完璧だ。


 背は百六十センチメートルをちょい越したくらいか。胸はDかEくらいはありそうなくらい主張している。この世界にブラはないのだろうか。ブラをしているようには見えない。具体的に言うと揺れている。あれは硬い革鎧には邪魔だろう。手足もすらりとしていて、それでいて鍛えているので筋肉がしっかりとついている。


 着ている服も村人と違い、村長の娘だからか服の質が一段違う。今はワンピースを着ているが素直に似合っている。

 最初に会った時は戦いの装束だったので新鮮だ。素直に可愛いと思う。

 そしておそらく……だが、ジンはフィーネと共に冒険者になるのだ。それを考えるだけで気合が入ると言う物だ。


「今日は本当に助かった。これ、お礼だよ。上位冒険者を雇う金としては安いと思うけれど村で出せる精一杯の金額だ。受け取ってくれ給え。あと幾つかプレゼントがある。それも受け取ってくれると嬉しい」


 村長のハーラルの家にフィーネに呼ばれ、ハーラルが腰を低くしてジンに接して来る。渡してきたのは金貨二枚と大銀貨五枚。これが多いのか少ないのかはわからないが、ゴブリン五十体とオーク五体の集落を潰したと思えばそのくらいかなとも思う。


(おそらく五人組パーティくらいを雇わないと無理だろうしな)


 ジンは五人分くらいの働きをした筈だ。ゾブイとフィーネの腕は悪くなかったが他の村の精鋭はお世辞にも精鋭と言えなかった。


「あの集落があるお陰で二、三年に一回は死人が出るんだ。あそこを壊滅してくれただけで村が平和になる。これはお金に変えられないレベルだ。改めて感謝する」


 そう言って渡してくれたのは背嚢、中身は換えの服や下着やタオル、投げナイフが五本、何かに使えそうなロープ。解体用のナイフだった。

 そして他にも新品に近い鉄の剣と鞘。剣帯。貸してくれたものよりも質が良さそうな革鎧。盾。ついでに槍か弓も選んで良いらしい。

 ジンは槍も使えるが鳥を撃ち落とせるので弓を選んだ。ゴブリン相手などにも弓は正義だ。ちなみに弓を選ぶと矢が二十本おまけでついてくる。


「わかりました。その感謝を受け取ります。と、言っても困っている村人を放置はできません。俺の村もゴブリンには困っていましたから他人事とは思えないのです。俺が助けになったのならそれで十分です」

「そうか、そういう人なのか君は。ならばもう一つ頼みたい事がある」


 ハーラルは真剣な表情をしてジンに語りかけた。


「なんでしょう」

「フィーネの事だ。知っての通りだと思うがフィーネは冒険者になろうとしている。大切な娘で村の為に冒険者になろうと言うのを止めたいが、他に止めづらい事情がある。私は断腸の思いでフィーネを送り出そうと思う。悪いがジンくん、フィーネの面倒を見てくれないか」

「喜んで」


 ジンは予想をしていたので即答した。こういうのは一瞬でも考えてはいけない。自信満々に言うのがコツだ。

 ジンが即答した瞬間、ハーラルがホッとしたのを感じた。表情にも態度にも出ている。まるで肩の荷が一つ降りたかのようだ。

 裏事情は知らないが、なにか問題があるのだろう。だからあれほど可愛がられているフィーネが冒険者になることが許されるのだ。


(ゲームのことなら何でも知っていると思っていたけれど、ゲームの世界の裏設定なんて知らない。つまりゲームの世界だと思ってゲーム知識を元に行動していれば足元を掬われることもあるってことだ。用心しないとな)


 ジンは休憩を取る為にジンにあてがわれた部屋のベッドに寝転がる。体力はある。だがこの数日で精神的に疲れたのだ。有り得ない事は有り得ない。だがあり得てしまった。

 ここは癒しだと思い、アイリスとたわいない話をした。


「そういえばアイリスはどのくらい知識があるんだ?」

「AIナビですよ。前の世界のAIで検索できることは全てインストール済です。材料さえあれば蒸気機関でもロケットのエンジンの作り方さえ知っています。ただ薬品は多分植物の成分が違うのでダメですね。その代わりこの世界のポーションの作り方は全部覚えていますよ。マスターも覚えているでしょう?」

「あぁ」


 当然だ。ゲーム内のジョブは全部制覇してジョブレベルを最高にしたのだ。

 薬師も当然ジョブとして取っていて、各種ポーションを作っていた。

 アビスゲート・オンラインはポーションに凝っていて、例えば毒消し薬だけでも何十種類とある。当然使う薬草も違ければ作り方も違う。

 毒蛇や毒蛙のようにその魔物毒にあった調合をしなければその毒は解除されないのだ。


 更に病気もあった。通常の風邪からなんと性病まで。ゲーム内でそういうことはできないが娼館があり、そこに通ってある一定以上お金を落とすと情報を貰えることになっている。故にプレイヤーが性病に掛かるのだ。

 なんでこんな設定に凝っているのかと全プレイヤーが思っていたに違いない。


 だが現実になれば違う。情報が欲しければ情報屋に聞くかマフィアに聞くか娼婦に聞くかしかない。しかもどこに聞くかで得られる情報が違うのだ。

 つまり娼館は絶対に通わなければならない。マストだ。


(娼婦か。前世でも行ったことがあるが、この世界の娼館はどんな所なんだろうな。気にはなる……、男だから仕方ないよな)


 そう思いながらベッドに寝転がっているとコンコンとノックがした。ドアを開けるとワンピース姿のフィーネがいる。


「ねぇ、ジン」

「ん? なんだ?」

「私絶対に強い冒険者になるから、一緒にやってくれない? ジンと一緒なら上級冒険者にだって成れると思うんだ」

「あぁ、いいぞ。フィーネなら歓迎する。優秀な斥候に育つと思うぞ」


 フィーネはちょっと照れて顔に手を当てた。


「えへへっ、そう言ってくれると嬉しいな。じゃぁ期待しちゃうね。あ、ご飯できたから一緒に食べよう。お父さんの説得もジンがいなければできなかったと思う。頑張って腕を振るったんだからいっぱい食べてよね」


 フィーネは顔を少し赤くして振り向いて去って行った。


「フィーネ、現実だとあんなに可愛いんだな」

「マスターの好みはフィーネさんですか。ですがソフィアさんが出てきたらどうするんですか? 最も推していたではないですか」

「うっ、そりゃソフィアは最推しだが聖女だぞ。教会から出られないだろう」


 NPCの一人に聖女ソフィアがいる。ソフィアはあるイベントで共に教会でラスボスに唆された教会上層部と戦うのだがビジュアルが最も好みだったのだ。


「そうか、ソフィアにも会えるかも知れないのか」

「王都の教会にいるでしょうね。会うのは難しいでしょうが」

「そうだな、だがいつか会いに行くか」


 ジンは最推しのNPCと会える事を期待して、食堂に向かった。その足取りはいつもより軽かった。





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