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「うぉぉぉぉっ、鎧だー! あと片手剣!」
「良かったですね。カインさん」
カインはガチャにハマった。最初にハマったのが良かったのか悪かったのか、最初の銀コイン十一連を三回やって本当に何もでなかった。外れ枠の解毒ポーションなどが出たくらいだ。
そして次の金コイン十一連。ポコポコとでてくるガチャ玉の中に金色のものがあった。しかも二つだ。
それでもカインも最初は喜ばなかった。何が入っているのかと訝しんでいたのだ。だが入っているものを見て驚き、そしてふつふつと喜びが湧き上がってきた。
「ちょうど買い替え時だったから良かったかもな」
「そうですね。もうボコボコでしたから」
カインのガチャから出たのは新しい鎧と片手剣だ。元々使っていた金属鎧はオーガとの戦いによってどんどんと傷がついていき、メンテナンスも追いついていなかった。
新しく出た鎧は当然新品だ。合わせてみたらしいがちゃんとサイズも合っている。更に良いことに今まで使っていたものよりも当然ながら質が良い。
これならオーガの特殊個体との戦いも優勢に進めることができるだろう。
「この鎧と剣、買ったら幾らするんだ?」
「さぁ? 査定してみたらどうだ」
「バカッ、出処を探られるに決まってるだろう。こんな質のいい鎧も剣も、どこの鍛冶屋にも売ってねぇぞ」
カインはこれは俺のだと言わんばかりに鎧に抱きついている。片手剣もサブウェポンとして使うつもりなのだろう。既に腰に差している。
「まぁ良かったじゃないか。金コインが十枚で済んだのは良かったな。トトリとフィーネ、アイリスにも回してやれる」
「じゃぁ次は私ね、楽しみだわ」
トトリはカインのガチャを見てガチャの仕組みがわかったようだ。楽しそうにまずは銀コインを回している。
最初の十一連。銀色の玉が出る。そこにはフィーネと同じ魔銀の短剣があった。
「あら、嬉しいわね」
トトリは魔法と弓を使うが、それだけだと近寄られた時に厳しい。其の為短剣をサブウェポンに持っていたのだが、それは鋼鉄製のものだ。当然魔銀製の方が格上で、トトリは素直に喜んでいた。
「こっちの弓はダメね。私が持っている方が質が良いわ」
次の十一連。木製の弓が出たがトトリはがっかりした。トトリの持っている弓は精霊樹の枝から作ったものらしく、元々格が高い。金コインでも同格のものが出るかどうかと言ったところだろう。
「弓はあんまり期待しないほうがいいぞ」
「えぇ、そうするわ。さて、本命の金コインね」
コインを十枚、纏めてガチャに入れる。そしてトトリは十一回ガチャを回した。
「あら、金色の玉は一つだけね」
「そう簡単に当たるもんじゃない」
「中身は何かしら」
開けてみると矢筒が出てきた。中には十本の矢が刺さっている。矢は特製のものだったが十本ではすぐに使い切ってしまう。
「足らないわね、なにかあるのかしら。試してみるわ」
不思議そうな表情をしながらトトリは自身の矢筒から矢を移し替えていく。途中、異変に気付いた。
「これ、収納機能付きじゃないかしら!?」
驚きながらどんどんと矢を吸い込ませていく。矢筒には常に二十本くらいの矢が刺さっているが、それ以上に矢が入っていくのがわかる。
「お、当たりだな。これで今後矢の補充に困らないんじゃないか?」
「こんなのも出るのね。驚きだわ」
アイテムボックスと同じように収納鞄と言う名前でアイテムボックス機能付きのカバンは売っている。ただし恐ろしい値段がするし、第一オークションなどに参加する権利がないと買う機会すらない。
それを贅沢に矢筒に使っているのだ。トトリが驚くのも訳はない。
「金のコインは当たり率が高いのかな。案外いいものがでるな」
「そうね、銀コインではこんなに当たらなかったわ」
ガチャを利用したことのあるフィーネも同じように頷いた。
次はフィーネの番だ。カインもトトリも得られたものに満足している。これ以上回させても被る可能性もある。どのみちトトリは元々良い性能の装備を持っていたので防具以外は外れなのだ。
「ひっさびさのガチャ~」
「嬉しそうだな」
「うんっ!」
フィーネに銀コイン二十枚、金コイン十枚渡すと嬉しそうにガチャに歩いていく。
フィーネは気楽だ。今の所装備には困っていない。元々あまり攻撃を受けないスタイルのフィーネは防具もまだまだ使える。
もちろん良い武器、防具を引ければ良いのだが、少なくともオーガ階層では問題なく戦えているのだ。
それでもフィーネがガチャを楽しみにするのは、単純にガチャを引くのが楽しいのだろう。
ガチャとは運もあるが、射幸心を煽るにはうってつけのものだからだ。
(わかるな~。俺もガチャ引きて~)
ジンはフィーネの後ろ姿を見てそう思ったが、パタパタと自分の番を待つアイリスを見て我慢することにした。
今回本命はアイリスのガチャだ。妖精魔法が使えるようになればアイリスも戦力になれる。
今は姿を消してジンの近くで戦いを見守るだけだが、アイリスはジンの役に立ちたいと言う思いが強い。
ガチャコンガチャコン。
慣れた様子でフィーネはガチャを回す。
「お、当たりだ」
フィーネは銀コインでもう一本の魔銀の短剣を引き当てた。
オーガの肉さえ斬り裂くとは言え短剣は短剣だ。どうしても手数が多くなってしまう。それはつまり消耗も激しいということだ。
フィーネは手の中の金コインを見つめて、それから戻ってきた。
「アイリスちゃん、あげる」
「え、いいんですか!?」
ジンにとってもその行動は予想外だった。フィーネも金コインを回すのは初めてだ。魔銀の短剣よりも良い装備がでるかもしれない。防具だって今のものよりも頑丈なのが出るかもしれない。
ただそれよりも・・・・・・、フィーネはアイリスの為を思ってコインを残したのだ。
「ここ、置いておくね」
アイリスは小さい。それはつまり十枚のコインをガチャに入れるだけで大変だと言う事だ。
アイリスは嬉しそうにパタパタと羽を震わせながらガチャにコインを入れていく。
まずは銀コイン。
「あ、銀の玉が出ました!」
アイリスは嬉しそうに言いながら銀の玉を開ける。すると妖精サイズのレイピアが現れた。
「やったー! 武器です! これで戦えます!」
妖精サイズのレイピアでどう戦うんだ、とジンは思ってしまうが喜んでいるアイリスに水を差すのも悪い。ジンは沈黙を選んだ。
「うんしょ、うんしょ」
アイリスは自身に割り当てられた金コイン十枚とフィーネから貰った十枚を持っている。残念ながらこれ以上のコインはない。
「来い!」
まずは一回目。ガチャから金色の玉が一個排出され、それ以外は外れだった。
アイリスは楽しそうにガチャ玉を開け、そしてちょっぴり残念そうな表情をした。
「何だったんだ?」
「これです」
それは妖精サイズの服だった。金ガチャから出たのだ。当然特殊効果のついている服だろう。だがアイリスの望むのは妖精魔法の魔導書だ。
当たりと言えば当たりだが求めていたものではない。
「今度こそ!」
二度目は金の玉が二つでる。
「「「おお~」」」
これは期待できる。フィーネだけでなく、ジンもそう思った。
(やっぱりガチャは楽しいな)
ジンにとってアイリスは癒しだ。
妖精魔法が使えなくても、冒険の帰りで部屋で話しているだけでも楽しい。フィーネとも仲が良い。カインとトトリとの面合わせも済ませたのでこれから仲良くなるだろう。アイリスは愛らしい見た目をしているし、性格も可愛らしい。二人と不仲になる未来が見えない。
「えいっ」
一個目。アイリスが開けた金ガチャからはサーベルが出てきた。武器被りだ。銀ガチャのレイピアよりは性能が良いのだろう。ただアイリスが戦力になるかと問われると難しい。
実際アイリスやフィーネも残念な表情をしている。カインとトトリはアイリスが妖精魔法の魔導書を探していることを知らないので見ているだけだ。
「今度こそ!」
金ガチャを開けた瞬間、ほわりと金色の靄が出てきた。そしてその靄はアイリスを包み込む。
「これです!」
「どれだ? と、言うか大丈夫か!? アイリス」
ガチャから出てきたものが悪いものの筈はない。ないのだが謎の現象が起きたのだ。何が起きたか知りたいと思う気持ちと、アイリスに何かあったらと言う気持ちでジンは問いかける。
「アイシクル・ニードル」
アイリスが唱えると人族が使うくらいの氷の針が現れる。そしてそれは思っていた以上のスピードで飛んでいった。
「おおっ、魔法を覚えたのか」
「はいっ、さっきの金色の靄は妖精魔法の魔導書のようでした。多分私が妖精だからああいった形になったんだと思います」
アイリスは満面の笑みで答えた。
「良かったね、アイリスちゃん」
「はいっ、これからは私もバシバシ魔法で戦いますよ!」
そう言ったフィーネの目元には涙が浮かんでいた。
30話まで来ました。そろそろ終盤です。楽しかった、続きが気になるという方はフォローと是非下の☆を5つにしてください。宜しくお願いします((。・ω・)。_ _))ペコリ




