022
「今日こそ聞かせて貰いますからね!」
「わかったわかった。まずは今日の夕食を食べてからにしよう。フィーネもお腹が空いているはずだよ。何せ今日はダンジョン五層まで攻略したんだから」
「そうね、ご飯を食べてからにするわ」
今日はダンジョン五層まで潜った。四層にあったショートカットを使い、五層のボスは倒されていたので転移陣に登録だけして帰った。
転移陣は登録されている人間が居れば他の人間も飛べるらしいので、十五層まではジンたちもカインたちに相乗りすることで行ける。
だがそれは断った。
フィーネにダンジョンの経験を積ませたかったのと、ジンの知るダンジョンと実際のダンジョンがどのくらい違うのかを確かめたかったからだ。
実際ダンジョンの広さや通路の幅、天井の高さ。バックアタックの有無など確かめたい事は大体確かめられた。
「さて、いい加減教えて貰うからね!」
「わかってるって。と、言ってもそう難しい事じゃない。俺は神の声が聞こえるんだ」
「は・・・・・・?」
部屋に入ってすぐフィーネは問い詰めてきた。さらっとジンが答えるとフィーネは固まってしまった。
この言い訳はあながち嘘と言う訳ではない。実際に天の声らしき好感度アップの声が聞こえるし、神殿ではガチャ部屋にも入れた。
神からなにか使命を与えられたということはないが、では何もしないかと言うとそれは違う。
(このままではこの世界は崩壊する)
この世界は狙われている。少なくともジンの知っているアビスゲート・オンラインならばラスボスが狙うのはこの国どころか世界そのものだ。
次元の狭間から現れた別次元のボスはこの世界を司る八つの精霊の力の源であるクリスタルを壊し、この世界を手に入れようとしている。
「この前神殿に祈りに行ったら白い部屋に出ただろう? あそこが神の間だ。そして俺は神の声を聞き、ダンジョンの情報を得た」
「う~ん、確かにアレは不思議な現象だったね。神殿だったし神様が絡んでるとしてもおかしくはないと思うよ」
フィーネはそう言いながらも百%は信用していないようだ。
いや、確かに神はダンジョンの情報など教えてくれてはいない。これはゲーム知識だ。ただ最低でも五階層までの情報は全く一致していた。今後もそうだとしたらこの世界の探索者の未到達階層まで到達することすら夢ではない。
だからと言ってそう簡単に攻略はできない。
ジン、カイン、フィーネ、トトリの四人の連携はまだまだだし、装備も貧弱だ。
聖剣デュランダルも三十階層を超えると厳しくなってくる。防具はもっと厳しい。四人とも十五層程度の防具しか装備していない。それでは二十層以上潜ることはできない。
そして目的地は三十階層だ。三十階層には隠し階層がある。
そこに風のクリスタルがあり、この世界の風を司る精霊たちの力の源になっている。
「このダンジョン都市に来たのもそれが目的だ。神の敵が狙っているクリスタル。それが危険だから俺が派遣されてきた」
「つまりジンは使徒ってこと?」
「そうとも言えないかな。派遣はされてきたけど俺は自由なんだ。言う事を聞いても聞かなくてもいい。でも圧倒的に聞いた方がいい。この世界に関わることだからね」
「世界・・・・・・ねぇ。スケールが大きすぎてちょっと信じられないなぁ」
フィーネの言う事もわかる。
ただ最初に敵が狙ってくるならここ迷宮都市のクリスタルだ。もちろん他のクリスタルも同時に狙われている可能性は高い。全てが壊れてしまうと、光は刺さず、風は吹かず、水は濁り・・・・・・と様々な災厄に見舞われる。
「まぁフィーネは特に使命を帯びてる訳じゃないんだ。俺と一緒に来ると危険だぞ」
そう言った瞬間、ギラリとフィーネの瞳が瞬いた。
「そんなこと言っても私はジンから離れないよ。お兄ちゃんもこの都市にいるし、迷宮都市から離れるつもりもないしね」
「仕方ないな。これが最後の忠告だぞ?」
「ふんっ、構わないわ。村を出た瞬間から私は冒険者よ」
冒険者とは危険を冒す者の事を言う。
そこに危険がないならばそれはただの仕事だ。五階層までを巡っても、陸の鯨亭は無理でも安宿なら泊まることができる。
カインとトトリも無理をしなければ暮らしていけるだろう。だがそれでは満足できないから彼らは探索者を辞めないのだ。
「カイン、トトリ。もっと強くなって貰うぞ」
「あの二人なら大丈夫ですよ」
ジンの独り言にアイリスがそっと返した。
◇ ◇
「風刃」
「せやっ」
六階層。トトリの縦の風刃がジンとフィーネの間を抜けていき、ゴブリンを見事に縦に割る。同時にカインが大剣を振り回し、二体のゴブリンを両断する。
カインの左手にジンが割って入り、後ろにいたゴブリンマジシャンの喉元にデュランダルを突き立てる。
「疾っ」
取り巻きが居なくなって困っているゴブリンリーダーにフィーネが止めを刺す。
「連携も取れるようになってきたな」
「えぇ、悪くないわね」
「いや、全然ダメだ」
カインとトトリはそう言ったがジンがはっきりと言った。
「二人とも二人しか見ていない。俺とフィーネがフォローしていなければ一撃喰らっていたぞ。カイン」
「一撃くらいなら問題ねーよ。ゴブリン相手ならよ」
「相手がオークならどうする?」
カインは怯んだ。
「そりゃ避けるさ。オークの一撃は流石に耐えられないからな。防具が無事でも中身が無事じゃない」
「そうだろう。十五層はオーガも出るんだろう? オーガを相手していると思って連携を組まなければもっと先には進めないぞ」
「くっ」
カインは押し黙った。フィーネは静かにドロップを拾っている。六階層からドロップが出るのだが殆どゴミだ。拾っているのは銅色に輝くコインのみだ。
「あとトトリ。お前は最初最前列に立って横方向に風刃を放て。そしてすぐにスイッチするんだ。それだけで倒せる数が変わる」
「ちょっと、それだと私が危ないじゃない」
「危険を冒せないなら探索者を名乗るな。オーガ相手でも一撃は耐えれるようになれ。そうすれば十五層でもやっていける」
トトリは悔しそうにうつむいた。
「わかったわよ」
その話し合いが終わった後、戦い方が変わった。フィーネが探索し、敵が見つかれば最初にトトリが魔法を放つ。撃ち漏らした相手をカインとジンが左右に別れて戦う。
合間を抜けて来るやつはフィーネが始末する。故にトトリが安心して魔法を放てる。今までは一発だったのが一回の戦闘で二回放てるようになった。
「よし、そこだっ。右に行け。カイン」
「トトリ、このタイミングで撃て。一秒も間違えるな」
「フィーネ、半歩遅い。それではトトリが孤立する」
ジンの指揮によって四人の連携は抜群に良くなった。
そのまま休憩を挟みながら十二時間戦い続け、四人は十階層のボスを撃破した。




