020
「こいつらとパーティを組んでほしいんだ。それにしてもよく食うな」
「なんらって?」
ジンとフィーネは三つの国から来ている香辛料に釘付けになっていた。味の幅が違う。ただのスープなのに酸味、辛味、コク、様々な味が混ざり合っていて、まるでカレーのようだった。
それを三杯おかわりしてから、ようやくジンは話を聞く気になった。
「他人の奢りで食う飯ほど美味いものはないな。それでそこの二人とパーティを? なんでまた」
「まぁそりゃそうなんだが。こいつら・・・・・・、カインとトトリは天才なんだよ。自分たちのスピードで攻略すると誰も着いていけない。だがAランクのお供がついたら逆にギルドの貢献点は稼げない。荷物持ちだと思われるからな。それが故にこいつらはまだCランクだ。嬢ちゃんたちは今日迷宮都市に来たばかりだろう? 冒険者ランクがAランクだとしても探索者は一つ下から始まるからBランクだ。Bランク探索者と組んで進めばギルドの貢献点になる。なぁ、頼むよ」
冒険者ランクから探索者に鞍替えすると一つランクが下がると言うのは初めて聞いた。だがわかりやすい。
ただ強いだけの冒険者がマッピングなどを必要とする探索者のスキルを持っている筈がない。同ランクから始めたら死人が出るのは確定だ。
ただ最初のFランクから始める訳にもいかない。Cランク以上の冒険者はそのランクにプライドを持っている。故に一つ下なのだ。それならばなんとかプライドと現実をリンクさせることができる。
「わかった。俺はジン。こっちはフィーネだ。二人でよければ一緒にパーティを組もう」
「本当か!? 助かる」
「ちょっと、俺はまだ納得していないぞ」
「私もよ」
カインとトトリの二人が反発する。それも想定内だ。なぜならゲーム内の二人の性格はよくわかっている。これで即座にパーティを組もうと言われたら、二人は違うNPCなのではと思う所だった。
「じゃぁ俺と模擬戦をしよう。二人同時で良いぞ。絶対勝つからな。負けたらこの剣をやろう」
「マジでか。その剣を売っただけで大金貨が飛んで行くぜ。二言はないな」
「ない」
フィーネが慌てた。
「ちょっと、ジン。そんなこと言っちゃっていいの?」
「大丈夫だ。問題ない」
ジンはそう切り捨て、スープを最後まで飲んで立ち上がった。
◇ ◇
「男に二言はないぜぇ」
「ないさ」
カインが挑発するがジンはだらりとデュランダルを構えていた。
それが挑発になっていたようだ。カインの方が怒っている。
トトリは静かに怒るタイプだ。痛い目を見させてやろうと本来使うよりも強い魔法を練っていた。
「爆裂!」
「ばっ、おまえっ」
ズバッ。
剣に魔力を纏い、爆裂の魔法を斬る。二つに分かたれた魔法はジンの後方で爆発し、なんとか野次馬たちが防いでいた。
驚いていた筈のカインが目の前に迫る。すでに大剣は抜いている。袈裟に斬ってくるカインの大剣の進路をそっといなす。大剣はジンをスルーして止めることもできず、地面に突き立った。
「まっ」
「待たない」
ジンはスッと間合いに入り、掌底をカインの腹に当てた。
ドンッ。
発剄。その一撃がカインの腹で暴れまわり、三メートルはカインの身体が吹き飛ぶ。その砂煙に紛れてジンはトトリに近づいた。
トトリも気付いていたようだ。短剣を構え、シールドの魔法を張っている。
ジンは前蹴りでシールドを破壊すると、短剣をデュランダルで弾き飛ばした。同時に首をかしげて火矢の魔法を避ける。
流石天才と称されるだけの事はある。ただそれだけだ。
幾度も彼らと模擬戦をゲームの中で繰り広げていたジンに勝てる道理はない。トトリの首筋にはデュランダルがそっと添えられていた。
「しょ、勝負あり」
審判をしていたギルドの職員がそう言った瞬間、野次馬がワッと沸いた。それだけ見応えのある勝負だったのだろう。
審判はその後、カインとトトリに攻撃が致死であった事を咎められていた。
アレではジンが死んでいてもおかしくはないと。ジンが上手く躱したからなんとかなったのだと。
◇ ◇
「改めてカインだ。両手剣を使ってのアタッカーをやっている」
「トトリよ。見ての通り魔導士よ。治癒魔法を除いて全ての魔法に精通しているわ。得意なのは植物魔法よ」
二人はすっきりした顔で挨拶を交わす。場所はギルドの酒場。座っていると二人から奢りだとエールが差し出される。
この二人には基本的に自分より強い者しか認めないと言う厄介な性質があるのだ。
その代わりそこを認められれば、有能なアタッカーと後衛になる。
幾度ゲームの中で死闘が繰り広げられたのかわからない。彼らを味方にするには勝つしかないのだ。
「カインは剣を振りかぶる時に癖があるな。すぐわかるぞ。トトリは魔力の高まりでどの属性を使うかわかる。今回火魔法を使う事も予想できたし火矢の魔法も見抜けた。魔力を落ち着かせると良いな」
ジンがアドバイスをするとポカンと二人がしていた。そんな変な事を言っただろうか。いや、これから同じパーティを組むのだ。弱点を指摘するくらいは普通だろう。
「そんな癖誰にも指摘されたことないぞ」
「魔力の高まりで属性がわかるなんて聞いたことないわ」
違った。アドバイスが変なのではなく、それを見抜ける者がいなかったのだ。
確かにカインの袈裟懸けは速い。ただそれだけだ。起こりがわかれば軌道もわかる。
トトリの魔法もそうだ。どの属性の魔法が来るかわかればその構築スピードの早さからある程度想像がつく。
ただそれを見分けられる者がいなかった。それに尽きる。
「まぁ信じても信じなくてもいい。気にしてみるといい」
「いや、ジンの言う事なんだ。信じるさ」
「私も信じるわ」
「ジンが嘘を言う訳がないもんね」
二人が信じると断言したと同時にフィーネが相槌を入れてくる。
「フィーネの実力も見ておきたいものね」
「いいよ~。って言ってもジンほどの実力はないよ。Bランク冒険者としてやっとって感じかな」
「そうだな。カインやトトリの方が強いな。だがすぐ同じくらい強くなれる。それだけの素質がある」
「え~、そうかなぁ。えへへっ」
トトリがフィーネに振るが、ジンが答えるとフィーネは顔を赤くして黙ってしまった。
それだけでフィーネがジンにどういう思いを持っているかわかると言うものだ。カインとトトリの視線が痛い。特にトトリ。
「カインとトトリは二人ペアみたいなものなのか。付き合ってるとか」
「ないない。こんな高慢ちきエルフとなんか付き合えるかよ」
「なによ、こっちだって脳筋と付き合う気なんてないわよ」
二人ははっきり否定した。照れも何もなく。
これは本当に何もないな。ジンはそう判断した。
20話まで来ました。面白い、続きが気になると思った方、☆5つ評価、フォローお願いします((。・ω・)。_ _))ペコリ




