012
ブクマ100突破記念に土日は二話投稿します。7時と19時です。ありがとうございます((。・ω・)。_ _))ペコリ
◇ ◇
「今日はDランクのオークの討伐だ。一体ならやれるが二体なら危ないだろう。わかってるな、フィーネ」
「わかっているわよ。私の今の実力じゃ二体は捌ききれない」
「わかってるならいい。俺の言う通りに動け。それだけでなんとかなる。今日中に二体のオークと戦えるようになるぞ」
ジンとアイリスとフィーネの三人はいつもの東の森へ向かっていた。ただしいつもは真東に向かうのに北東に向かう。そこにオークの集落があると言うのはギルドの資料室にあった。
ジンは慎重で、ギルドの資料室にあった本を全て読破してしまった。
フィーネは遅いのでまだ読破できていない。ジンから渡された優先順位の高い物だけを読んでいる。
それでも頭から湯気が出そうになった。冒険者とはもっと気楽な職業ではなかったのか。少なくともギルドでフィーネに色目を使ってくる男冒険者は冒険者らしい冒険者だった。ジンが異常なのだ。
(ダメよ。ジンについていくって決めたんだから)
フィーネは自分に叱咤しながらジンの言う事を聞く。
それを見てジンもうんうんと頷いていた。フィーネは良い子だ。言う事は聞くし吸収率も良い。もちろん筋は良い。Aランク冒険者だって目指せるだろう。
実際ゲームの中ではAかBランクの斥候だった筈だ。的確に道を案内してくれ、更に戦闘でも補助してくれる優秀なNPCだった。
ただ、今は彼女はNPCではない。十五年間村娘のフィーネとして生きている人間だ。
それを忘れてはならないとジンは自分に言い聞かせた。
途中、商店の硝子窓にジンの姿が写った。
スラリとした細マッチョ。百八十センチメートルで、その中でも足は長めだろう。腰の位置が高い。
そして顔立ち。端整で、目鼻立ちがはっきりしている。一言で言うとイケメンだ。彫りは深いし、目鼻口のバランスが良い。ギルドや宿で女性から秋波が送られているのも気の所為ではないだろう。
迅が、僕の考えた最高に格好いいアバターなのだから当然だ。
(ただなぁ、この世界イケメン美女美少女が多すぎるんだよなぁ)
ゲームの世界の影響だろうか。ブサイクというのが殆ど居ない。そう割り当てられた……強欲な商人とかが顔に出ているだけで顔立ちは整っているのだ。
ガルードでさえ威圧感はありスキンヘッドなだけで元イケメン臭が漂っている。
「よしっ、切り替えていくかっ」
「えっ? どうしたの? いいけど」
急にジンが声を上げたのでフィーネがびっくりしてしまったようだ。しまったなと思いながらもそういうことは気にしない性格なのですぐに忘れる。
この性格のせいでどれだけ女性からノンデリだと言われたか。前世の事を少しだけ思い出す。しかしそれもすぐに忘れた。前世の事などどうでもいい。
今はこの世界に生きるジンなのだから。
◇ ◇
「はぁっ。くっ」
「いいぞ、そこで身をかがめろ。棍棒が迫っているぞ」
東の森の奥。ジンとフィーネはそこに居た。そしてオーク四体を相手にしていた。だが二体はすでにジンが屠ってしまったばかりだ。
残ったオークの数は二体。どれも大きさは普通だ。特殊個体ではない。
それをフィーネは同時に相手していた。
(一瞬一瞬が気を抜けない。同時に相手にするとこれほど難易度があがるのね)
「呼吸を読め。オークは独特の動作をしてから棍棒の振り先を決める。それを見極めるんだ」
ビュンビュンとオークの棍棒がフィーネを狙ってくる。それは一時的に紙一重まで迫っていた。
故にフィーネにはそれどころではなかった。ジンが身を屈めろ。右に飛べなどの指示がなければ、即座にオークの棍棒の餌食になっていただろう。
だがそれもない。ジンの言う事を聞いて動いていれば棍棒はフィーネに掠りもしなかった。
ただし逆も言える。フィーネはオークに二、三撃入れられた程度で、大して攻撃に移れていなかった。
体力はオークのが上。防御力もオークのが上。この状態でどうすれば良いのか。
「右に回れ。オークを重ならせろ」
その言葉に従った瞬間、オーク二体の身体が縦に重なった。近い方のオークが振り向く。右手はまだ奥だ。
「今だ、手前のオークの喉笛にダガーを突き立てろ」
言われなくても身体が動いた。
瞬間、オークの喉笛にはダガーが突き立っていた。そしてオークの胸を蹴って返り血を避けながら間合いを取った。
後は簡単だった。オーク一体なら何度も相手したことがある。
フィーネは「ふぅ」と一息吐くと相方が倒されて呆然としているオークに掛かっていった。
「一体の時にオークの癖を把握しろ。早く倒そうとするな。オークは常に同じ癖がある。それを見極めろ!」
「えぇぃ、やってやるわよ!」
そうして本来なら一分で済んだ戦闘を五分ほどかけて行い、フィーネはもう一体のオークを倒したのだった。
「よし、要領はわかったか?」
「いいえ、全然よ。ジンの声がなければ三回は死んでいたわ。でも一体と戦った時に癖のようなものは見られたわ」
「そうだな。二体はきついだろう。だが一体ならやれる。そして得られた物がある。これは素晴らしいことだ」
得られた物はある。どう動けば良いのか。どうやって攻撃してくるのか。呼吸を読めと言う言葉。その意味がほんの少しわかった。
「今日は実戦をあと三回やる。その間に覚えろ」
「やるわ」
ジンの要求は高い。一体どこを見ているのだろう。わからないとフィーネは思った。
一方でジンは感心していた。フィーネの飲み込みが良すぎる。フィーネが最初の戦闘で無傷で終わらせるとは思わなかった。声がけはあったが、反射神経が素晴らしい。言われた事をこなせるだけの能力もある。
いつでも飛び出してオークの棍棒を、もしくは腕を斬り落とす準備をしていた。だがそれも必要はなかった。
これならいける。ジンはそう思った。そしてそれは実際にそうだった。
二回目の戦闘。オークは五体だった。三体をあっと言う間にジンが倒した。
オークの死体があると邪魔なので場所を移して戦った。
足場が悪いにもかかわらず、フィーネは足を取られる事なく戦った。ジンに言われた事は全て覚えていた。
オークの癖。動き方、攻撃の手順。そしてオークが二体重なるように誘導し、一突きで喉笛を突いた。それからはあっさりしたものだった。二体目のオークの結末は決まっていた。
(化けた)
ほんの二戦だ。ほんの二回オーク二体との戦いを行っただけでフィーネは一段上の戦士になっていた。
そしてそれはフィーネも驚いていた。ジンの導く力は素晴らしい。それは恋と言うよりも信奉に近いものだった。
ジンの言う事を聞いていれば間違えない。フィーネは胸にそれを刻みつけた。
「ちょっと早いけど三体と戦ってもらおうか」
「待って、二体でギリギリだったのよ。いきなり三体だって無理よ」
「まぁ聞いてくれ。二体には二体の、三体には三体の戦い方がある。それを伝授する。それがわかれば後は簡単だ」
ジンが簡単だと言って簡単だった試しはない。ただフィーネは聞く気になった。他ならぬジンの言う事だからだ。
「三体になると攻撃が苛烈になると思うだろう? だがそれは囲まれた時だけだ。二体に対する時も五対五くらいの割合で意識を割いていただろう? そうじゃなくて八対二くらいの意識を割くんだ。一体は倒す相手、一体は躱す相手だ。そうすればもっと簡単に二体を相手することができる。三体も同じだ。六対二対二くらいに意識を割いて一体を倒す事に専念するんだ。そうすれば後は残り二体になる。その要領でやってみればいい。俺はそれでやっている」
ジンの言う事をフィーネはゆっくりと咀嚼していた。言っている意味はわかる。だができるかと言うとどうだ。できるか? いや、やるしかない。
「わかったわ。でもまず二体で試させて。その後で三体に挑戦してみるわ」
「いいだろう」
「フィーネさん、ファイトですよ」
アイリスが姿を現して言う。相変わらず可愛らしい。ジンとフィーネはほっこりとした気分になった。




