犬と猫編 2nd-contact
2nd-contact
流れるままに
翌日、全快した私はいつものように学校へ登校した。
相も変わらず騒がしい教室のひとつの机に腰掛け、テキストを開く。
どれだけ騒がしくとも、落ち着くべき場所に落ち着けば自然と忘れられる。
そして今日は、あの男は来なかった。
3時間目終わり、少し気分転換がてらトイレに行った帰りに、彼に会った。
「……っ!」
「……?」
いつも絡んでくるはずなのに、今日は直ぐに去っていった。
そこで昨日のことを思い出した。
──『昼休みの時間なら、来ても構いません。あなたの自由にしてください』
そうだ、私は昨日言ったんだ。
すっかり忘れていた。
随分と楽になった、はずなのに。
気分はいつもより沈んでいるように思えた。
「よっちゃん!」
昼休みが来て、言いつけ通り彼は来た。
「そういう所は律儀なんですね」
「喋れなくなるのは嫌だからね」
ほんとに、この男は分からない。
「私なんかのどこがいいんですか」
「ど、どこがいいって……」
「いつものようにいえばいいじゃないですか。まさか好きなところもないのに告白しまくっているなんてことはありませんよね?」
「それは無い、んだけどね……こういうの初めてでよく分からないんだ」
意外だった。
こんな身なりで、そっちのほうはウブだったようで、聞いた途端モジモジしだした。
「こんな格好してても、結構純情なんだよ!」
「自分で言わないでください」
ピシャリと私が跳ね除けると、彼はまたモジモジしだす。
「はぁ……」
「あ!何そのため息は?!」
「めんどくさいんですねぇ」
「!!!!」
バカバカしい。
そう思ってそそくさと弁当を片付けていく私に、珍しく彼は抵抗してきた。
「それはよっちゃんでも許せないよ!」
「へぇ…それで?私に何をしようと?」
「え、いや……」
考えもなしに突っかかってきたらしい。
「無策ですか」
「大好き!」
「……は?」
何を言い出すのかと一瞬思ったが、いつも通りだと気づき平静になる。
「よっちゃん大好きだよ!好き!」
「それで反撃のつもり……。っ!!」
そして私は、それの意味するところが分かった。
「はぁ……。分かりました、降参です。だから大声で愛を叫ぶのはやめてください」
馬鹿かと思ったが、なかなかやるらしい。
「それじゃまたあした」
「いや、いつ来てもいいですよ」
「え、いいの?!」
「あなたが落ち込んでいるところを見るのは癪に障ります。まるで私が悪いかのように思えてくるので」
「じ、じゃあ、次の休み時間も来ていいの?」
「……二度はいいませんよ」
その時の晴れやかな顔を暫く忘れることは無かった。




