犬と猫編 3rd-contact
3rd-contact
とらえ方
「お姉ちゃんあたしのリボン知らない?」
「さぁ、ポケットの中にでも入ってるんじゃないですか?」
私には妹がいる。
片岸夏鈴。
歳は1つ下、自由で少しツンとした性格だ。
鏡とにらめっこをしながら、髪を整えリボンを探しと大忙しな様子である。
「ほんとにポケットの中にあった……。お姉ちゃんもしかしてエスパー?」
「たまたまですよ」
と軽くあしらいながら、実は昨日彼女が「はあぁ、暑苦しいわ……」と言いながらリボンを外す様子を見ていたことを思い出していた。
「──よーっちゃん!」
1限終わり、やはり彼はやってきた。
今日はもう一人、誰か連れているようだ。
「その子は誰ですか?」
「美術部の後輩。よっちゃんに話があるんだって」
私に?
初対面なのに、何があったのだろう。
それにしても……。
彼、中々の美形である。
「は、初めまして、片岸先輩。実は、今僕の……か、彼女がいじめにあってるみたいで、その相談に来たんです」
おどおどした様子で話を持ちかけてきた。
「私はやってませんよ?」
心当たりがないので、即否定すると、彼は首を振って否定した。
「いえ、関係あるのは夏鈴さんの方で……」
「夏鈴?妹があなたの彼女にいじめを?」
「はい……そうなりますね」
彼は困った顔で、でも真剣に私を見つめている。
「でもなぜ私に?直接言えばいいでしょう」
「休み時間の間は、すぐにどこかへ行ってしまうんです。それに彼女を1人にはしたくないし、かと言って連れ回すのも……」
なるほど。
夏鈴がまさかそんな事をするとは。
昔から負けず嫌いなところがあった。
ということは……。
「彼女はおそらく、あなたの事が好きなんでしょう。だが横には既に自分ではない別の女がいる。これだけならよくある話ですが…」
「他にも何かある、と…?」
「そう考えるのが妥当でしょう」
だが、なぜ彼女を傷付ける必要があるのか。
嫉妬、ということもあるのだろうが、妹のことだ、何かそれ以上のことを仕組んでいるはずだ。
ということは……。
「警告……」
「え……どういう事ですか?」
「妹があなたの彼女をいじめる理由、憶測ですがそれは脅すためです。彼女を脅し、これ以上そばに居るのなら痛い目を見ることになる。そうすれば、あなたが彼女を守るために距離を置く、そう考えているのでしょう」
妹は自分勝手で策士だ。
今回はそういう意図があるのだろう。
手の込んだ真似を……。
先行きを考え、私は天を仰いだ。
「なら、ずっとそばにいれば、確実にいじめられることはないんですよね?」
「あくまで憶測です。決断を早まらないでください。それに、あなたには考える頭が足りていません」
「それは、どういう?」
答えは簡単だ。
「私の憶測が当たっていたとして、あなたがいない、それに十分な時間がある。それはいつですか?」
「……!まさか……」
さすがに彼を気がついたようだ。
「今、だね」
厄介事を持ってきた男がここで口を開いた。
「すみません、今すぐ戻ります!相談に乗ってくださってありがとうございます!」
彼は礼を言いながら、走って教室を出ていった。
「青春だね……」
「何呑気な事言ってるんですか?厄介事を持ち込んでおいて」
「まぁまぁ、答えは導けたんだから」
「結局他人事ですか……」
私はため息をつく。
答えを出したのは私だと言うのに……。
「言っておきますが、今回あなたは何もしていませんからね?厄介事を連れてきただけですからね?口を開いたのなんて最後だけじゃないですか」
「え、えぇっと……じゃあ僕もそろそろ帰ろうかなぁ……あはは…」
この男、あまりにも自分勝手すぎる。
誤魔化そうというのなら、こちらにも手がある。
「会話禁止にされたいんですか?」
「ごめんなさい謝るからそれだけはご勘弁を!」
真っ青な顔で必死に謝る彼を見て、不覚にも私は笑ってしまった。
「全く……。次はありませんよ?」
「あ……はい……」
彼は私の顔を見つめて動かない。
「……?帰るんじゃなかったんですか?」
「あぁ、もうちょっと居ようかなって、思って……」
全く。
この男は自由である。




