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「君がそうしたいと思うのなら、そうすればいいんだ」
彼は私が何かに迷っているときは、いつもそう言った。平坦な表情で、ただそう言うのだ。彼は私のしようとしていることに肯定はせず、また否定もしない。それは一見曖昧な言葉だ。
「それは私の口の出せることでもない。なにせ、君が、君自身の頭で考えだしたのだろう。ほら、やはり私は何も言うべきでない」
でも、私はきちんと分かっていた。彼の言わんとせんことを得心していた。
その言葉が、何よりも、他のどんな言葉よりも強い肯定の意味を表していると、私はたしかに知っている。
だから、私は自分のすることに全力を注ぐことができる。私は迷いを断つことができる。そう、そうであるのだ。
私があのとき、彼にした問いに、彼がいつもどおりの定型的な返事をしてくれたのは、私にとって好都合であった。
これを決断することで、私は人類にとっての悪魔となりはてるかもしれなかったから。その重圧から少しでも逃れることが出来るのなら、それはあまりにも自分勝手なことであるけれども、私は満足できるのだ。私は安心できるのだ。
少なくとも、それは絶望でしかないように見えるかもしれない。しかし、黒一色の絶望ではない。そこには一縷ではあるけれども、そこは希望を内包している。
私が犯してしまった過ち――たとえ、それが私自身正しいと思っていても、そうなってしまったもの。その罪を私は贖おう。
そう。そして、この選択が人類に『終焉』を与えるのでなく、『新生』を齎すように。私は●●●●●●●に望みを託す。
彼らが大地を荒らし、破壊するものとなるか、大地を新たとし、新生させるものとなるか。それは私にも分からない。
だが、これだけは言える。
終焉の裏には必ず新生があり、その逆も然り、だ。
後世の人類諸君には、大きな時限爆弾を遺すようですまないと思う。
しかし、これだけは忘れないでほしい。そうすれば必ずや、突破することができる。
いくら希望が暗闇に閉ざされようが、それは確かにそこにあるのだ、と。
Chapter2「地下の砦」 END




